歯科用金属アレルギーを御存知ですか?

こちらのページでは最近になって特に注目され始めた歯科用金属アレルギーに関してまとめてみました。

歯科用金属アレルギーの概要
歯科用金属アレルギーの症状
歯科用金属アレルギーの原因
歯科用金属アレルギーの検査・診断
歯科用金属アレルギーの治療
歯科用金属アレルギーの予防

歯科用金属アレルギーの概要

多くの方の口腔内には以前のむし歯治療で用いられたいわゆる銀歯の被せ物や詰め物などが入ってらっしゃろうかと思います。
それはそれで必ずしも否定されるモノではないのですが、保険適用の歯科用金属・・・むし歯治療で使われるいわゆる銀歯などを口の中に入れることで顔や全身にアレルギー症状を発症することがあり、それを金属アレルギーと称しています。


この金属アレルギーの原因物質は血液循環によって全身に回ってしまうことから、関連性が想像もしなかったようなあちこちの部位に症状が出るのが特徴だったり致します。

まずはご相談下さい

メタルフリー治療って御存知でしたでしょうか。ここ10年ほどで随分と推奨されるようになりました。このメタルフリー治療とは、歯科金属アレルギーを引き起こす原因となり得る金属(卑金属:健康保険適用)を使用せずに、金属素材をつかわない詰め物や被せ物を利用する治療方法です。
金属アレルギーの方、もしくは体質的にアレルギー予備軍の方にオススメの治療方法です。

保険でも白い歯にすることは可能です

すべての歯ではないのですが、小臼歯までの上下合わせて20本は単独歯であれば(ブリッジとかは不可)保険治療でも白い歯(ハイブリッドセラミックス:CAD/CAM冠)は可能です。
ただし被せ物ならOKなのですが、詰め物には認められません
大臼歯に関しては奥から2番目の第一大臼歯は条件付きで適用になりますが、最後方の第二大臼歯は2021年夏現在認められておりません。
それでも、病院(皮膚科や内科)で金属アレルギーの診断(パッチテスト)を受けて診断書(診療情報提供書)をお持ちいただいた場合のみ、最後方の第二大臼歯まで保険適用のCAD/CAM冠での修復が可能です。この場合にも一部分の詰め物は認められずに被せ物だけになることをご理解願います。

歯科用金属アレルギーの症状

例えば、口内炎・歯肉炎・舌炎など口腔内の症状はモチロンながら、それ以外にも口の周りや背中・手・足など全身の皮膚にどうしても治らないかゆみ、小水泡、紅班、湿疹等の不快な皮膚症状が現れることも珍しくありません。場合によっては『なかなか治らなかった指先の皮膚炎症状の原因が、実は歯科用金属アレルギーだった』ということが判明する事などあり、口腔内の金属をすべて除去させて貰ったら完治したことも今までに何度かありました。
厄介なことに、口の中に金属を接着した直後ではなく、治療したことを忘れた数年後に突然発症することもあるため因果関係に気が付きにくいようです。

歯科用金属そのものはアレルゲンではありませんが、汗や唾液などの体液に触れることによってイオン化した金属が体内に取り込まれ蓄積されます。時計の金属ベルトも、普段はナンでもないのに汗ばむ時期には接する手首周りが赤くなったり痒みが出たりするのは汗の塩分がイオン化を促すためと考えられています。
原因となる口腔内の歯科用金属がイオン化して体内に取り込まれアレルゲンとなっても実はすぐには発症しないのです。長い年月をかけ皮膚に高い濃度で排出されると症状が出て来るようです。もっとも短い期間と低い濃度でも発症する方もいらっしゃるので厄介です。

発症に至る際のイメージは、あたかもコップのようで有ります。口腔内の金属総量が一定限度を越えると急に溢れ出す・・・とでも言いましょうか、そんな感じです。
そのコップの大きさも人それぞれ様々で、小さなお猪口のような許容量の方(アレルギーが強く出やすい)もいらっしゃれば、28本全部の歯に金属が入っていても発症しないようなバケツサイズのコップの方もいらっしゃるようです。

金属アレルギーの代表的な症状

代表的な症状は、口内炎が頻繁に出来てしまったり、舌炎等の舌の痛みを始めとする口腔周囲や顔面部に炎症(口唇炎・口角炎)が生じる症状です。
また、口腔とは一見して関係の無さそうな全身の各部位の皮膚にアトピー性皮膚炎のような発疹が出来たり手のひらや足の裏に水膨れ(水疱)が生じたりすることもあります。更には頭痛・めまい・肩凝り・脱毛まで発言する恐れすらあると言われています。

金属アレルギーの症状としては次のような状況が挙げられます。

局所性金属アレルギー

アレルギー対象となる金属を長い時間身につけた時に、汗などと反応して金属イオンが体内に取り込まれることで痒みを引き起こします。金属周辺はモチロン、関係の無さそうな体全体に痒みが出たりします。
この場合には因果関係が一目瞭然ですので、その金属を身に付けないようにすれば改善が図れます。

歯科金属による口腔症状

口腔内粘膜が荒れたり、舌の表面に炎症が生じたり、扁平苔癬が出来たりします。味覚障害を起こすことまであるので、食品関連のお仕事をなさってる方などは特に歯科金属にはデリケートになるべきでしょう。

全身性の金属アレルギー

歯の被せ物・詰め物の金属が唾液でイオン化されることで体内に金属が取り込まれてしまうことがあります。その場合には、一見して全く関係の無さそうな遠く離れた部位にトラブルが生じたり、または全身的症状となって表れることが有り得ます。
この場合には、歯科の金属との関連性にピンと来ずに別の疾患(肌荒れ・水虫)と間違われてしまうことも多いようです。

歯科用金属アレルギーの原因

イオン化しやすい卑金属がマズい

口の中の銀歯などの金属が原因となりアレルギー反応が生じる金属アレルギー。実際には金属そのものが直接的にアレルギーを引き起こしているのではなく、金属から溶け出した金属イオンが体内に吸収・蓄積され一定限界を超えることで発症します。
その原因となる金属は、保険適用の銀歯などに使用されているバラジウム合金と言われてますが、どの金属にアレルギーをお持ちなのかは個人差があるため皮膚科における検査が必要となります。

健康保険で認められる12%金銀パラジウム合金は安全なの?

金銀パラジウム合金は、健康保険で認められている金属なので安全であろうと考えてらっしゃる方がほとんどでありましょう。残念ながら歯科医師の多くもそう思っており、私自身も金属アレルギーの意味合いは知ってはいても、実際に皮膚科から重篤な症状の患者さんをご紹介いただき口腔内の金属をすべて外したところ数ヶ月もしないうちに改善が図れたという経験をするまではそれほどの重篤なリスクがあるだろうとは考えもして居りませんでした。

保険で用いられている12%金銀パラジウム合金は、本当は安定性の良い金の含有量が多い金合金が歯の詰め物には良いという当時の学会の推奨を、金合金では総医療費的に認定困難という理由から否定し、他の金属を交ぜた合金にした経緯があったそうです。換言すると、金合金にすると医療費が破綻しかねないのでやむなく金銀パラジウム合金を健康保険適用の銀歯の素材にしようと決まったみたい・・・ってことのようです。(泣)
その安価だから交ぜられたパラジウムという金属が、ここ数年で急激に価格高騰して保険点数&窓口負担が驚くほどに高額になってしまってるというのも皮肉なモノであります。

金属アレルギーを引き起こしやすい歯科用金属

歯科用金属には様々な成分が用いられています。その昔、中学か高校で習いましたが、イオン化傾向の大きい金属卑金属小さい金属貴金属といいます。金・白金・パラジウム等の貴金属は通常は安定するはずなのですが、厄介なことに12%金銀パラジウム合金と称すると言うことは合金ですから他の成分も当然含まれるということになります。(泣)
金合金も然り・・・純金である24Kは柔らか過ぎて使い物になりませんので、必ず金合金(18~20K、つまりは80%前後が金)にしてますから2割は金じゃないってことになりますでしょう。

歯科用金属に含まれる様々な成分

金銀パラジウム合金

⇨ 保険適用で、銅・スズ・インジウム・イリジウム・ガリウム・ゲルマニウムといった金属も含まれます。


銀合金

歯の土台(コア)に使われる金属です。私も20年ほど前までは使っておりましたが今現在はファイバーコアとコンポジットレジンの組み合わせ以外は用いておりません。銀合金には、銀・亜鉛・インジウム・パラジウム・スズ・ルテニウム・アルミニウムが含まれます。


アマルガム

水銀・銀・スズ・銅などを錬和し硬化させて充填用詰め物として使われてきたアマルガムは、かつては水銀を50パーセント含んだ合金だったそうです。私は開業以来一度も使用したことがありませんが、今でも患者さんの口腔内で見かけることは頻繁にあります。口の中で水銀が溶け出し体内に蓄積され金属アレルギーの症状を引き起こすと言われています。


入れ歯に用いられるコバルトクロム

 部分入れ歯にも、いわゆるバネと呼ばれる引っかける針金部分や左右を繋ぐ連結部分(フレーム)に金属は用いられます。これなくして保険で出来る入れ歯は成り立たないのです。


インプラントにも用いられるチタン

チタンは卑金属ですが、大気中では表面に不動態と呼ばれる薄い酸化皮膜を作り、この膜に保護されて内部の金属イオンは溶け出さなくなり金属アレルギーが発生しにくいと言われます。インプラントはこのチタンですし、パラジウム価格の高騰を受けて2020年からは大臼歯用の保険適用の被せ物としても使われるようになりました。

残念な事に、かつて皮膚科で金属パッチテストを行った検査では、アレルギーの発現頻度が高かった金属は水銀・ニッケル・クロム・コバルト・スズ・パラジウム・銅と報告されていたそうです。(泣)
これらは歯科用金属として用いられる金属ばかりですので、皮膚科でアレルギー反応が多かった金属と合致してしまったのは厄介なことではありましょう。歯科領域で汎用されていたアマルガム合金には水銀が含まれており、それが口腔粘膜や舌に接触することで金属アレルギーの最たる原因になっていたようであります。

歯科用金属アレルギーの検査・診断

金属アレルギーの症状が確認出来た場合には、まず最初に原因となっている金属を特定しなければなりません。

金属アレルギーのパッチテスト

皮膚科の先生に教えていただいたのですが、48時間閉鎖型パッチテストを実施して検査・診断をするようです。
これは、試薬の付いたテープを背中に2日間貼ったままにし、2日後にそれを剥がし除去、その後に皮膚に現れた反応を2日目・3日目・7日目と都合3回チェックして国際基準に基づいて判定する方法だそうです。

このテストを受けることで金属アレルギーの診断がついて、皮膚科等で紹介状をいただければ保険でのCAD/CAM冠修復が可能になるのですが、これまた皮膚科の先生に教えていただいたのですが、この検査そのモノが実に大変だと仰っておられました。
安易に皮膚科受診をお勧め出来ないのですが、下記の数点を御確認下さい。

パッチテストを受ける際の注意すべき点

料金や具体的なスケジュール、待ち時間等は内科や皮膚科にご相談下さい。

<オススメしにくい理由>

  • パッチテスト期間中はアレルギー反応を抑える薬の服用を中止しないとならない
  • 汗をかくような激しい運動は禁止しなくてはならない
  • 入浴はテープを貼ってから3日間は禁止しなくてはならない
  • 一時的にアレルギー症状が悪化する可能性がある
  • 試薬を貼ることで新たな感作を生じる可能性がある
  • 皮膚症状が強い時にはテストそのものが行えない場合がある
  • 検査結果が明瞭でない場合は再検査を要する
  • 症状が無い段階・・・『金属アレルギーかも?』程度での検査は保険適用外の可能性がある

歯科用金属アレルギーの治療

口腔内から徹底的に原因金属を除去

歯科医院での対応は、アレルギー反応の原因と特定された成分が入ってる被せ物や詰め物の金属を徹底的に口腔内から排除することに尽きます。

その上で仮歯や詰め物にまずは置き換えて、口腔内や全身に出ていた症状が改善するか否かを観察して参ります。経験上もそうなのですが、完治までに数カ月を要するようです。金属の量がそもそも口腔内に多い方などは、被せてある金属で隠されている土台からすべてをやり直していく関係上、恐ろしく時間が掛かることを予め御了解願います。

全身からのデトックスの必要性

金属を除去しただけでは、これまでに身体の中に蓄積した金属は排出されずにまだ残ります。時間は掛かりますでしょうけれど、身体に蓄積された金属を身体の外に解毒・排出(デトックス)しないと、真の意味での完治は得られない可能性があります。次の点を心掛けて下さい。

<有害金属の排出方法>

  • 水分を十分に取る
  • ミネラルを積極的に摂取する
  • をかくようにする
  • 排便・排尿を心掛ける

歯科用金属アレルギーの予防

予防法としては次の2点が挙げられますでしょう。

3つの予防を心掛ける

当院でも盛んにお勧めしてる3つの予防・・・むし歯予防、歯周病予防、歯並び予防に努め、大きな被せ物や詰め物、欠損部のブリッジ入れにならないように心掛けていただくのが最良の予防策かと思われます。

銀歯ではなくセラミック治療を選択する

小さなむし歯であればコンポジットレジン(プラスチック)治療で対応が可能ですが、大きな修復となれば従来は金属しか選択出来ませんでした。
数年前からは保険でもCAD/CAM冠(ハイブリッドセラミックス)と言って大臼歯以外は無条件で白い歯を選択出来る時代にもなりました。ご相談下さい。

執筆・監修歯科医

医療法人SDC 酒井歯科医院の院長 酒井直樹

医療法人SDC 酒井歯科医院
  院長 酒井直樹

1980年 福島県立磐城高等学校卒業
1988年 東北大学歯学部卒業
1993年 酒井歯科医院開院
2020年 医療法人SDC 設立