HYPER SENSITIVITY

歯がしみる ~ 知覚過敏症 ~

いわゆる知覚過敏(正式には象牙質知覚過敏症)は経験がお有りな方も大勢いらっしゃろうかと思います。冷たいモノを口に含んだ時に歯がキィーン、ズキーンとしみたり痛んだりするあの痛み・・・悩ましい状況ですが、鏡で歯を御覧になっても『むし歯でも無さそうだし・・・ナニが原因なんだろう?』っていうアレのことです。

歯ブラシの毛先がわずかに触れたり、冷たいものや甘いもの、または風が当たった時などに歯に感じる一過性の痛みで、むし歯も歯の神経(歯髄)の炎症などの病変も無い場合に見られる症状のことを指します。

象牙質知覚過敏症

そのしみるメカニズムはシュミテクトでお馴染みの会社が分かり易い動画を作ってくれています。

このページでは原因と対策方法をまとめていきたいと思います。

目 次
原因は?
治療方法は?
予防対策 ー セルフケア編 ー
予防対策 ー プロ・ケア編 ー

安易に神経を取らないことが大事

しみるのは実に悩ましいことではあるのですが、うかつに神経は取らないことがポイントになります。神経を取ると一時的には楽にはなりますが、それに伴い歯は脆くなり寿命も確実に短くなります。
出来ることなら削ったりもしないことをオススメ致します。ダメージを一切残さずにしみる状況を軽減出来る方法を模索して参りましょう。
ただし・・・・生活に支障が生じるほどの激・冷水痛とかに見舞われた際にはその限りではありません。よ~く相談の上で最終的には判断して参りましょう。

象牙質知覚過敏症の女性

CAUSES of HYPERESTHESIA

知覚過敏症の原因

歯の最表層にあるエナメル質は感覚が無いので削っても痛みは感じません。内部である象牙質や歯の根部・・・すなわち本来見えないはずの部分はエナメル質で覆われたりせずに痛みを感じる敏感な象牙質で出来ています。
歯周病などで歯ぐきが下がるとこの敏感な象牙質が露出してしまい、表層の神経に通じる無数の穴に冷たいものや熱いもの等に触れることで、その刺激は内部の神経に伝達され歯は痛みを感じてしまいます。(泣)

知覚過敏症のメカニズム

この露出の原因としては大きく分けて下記のふたつがあげられようかと思います。

エナメル質の摩耗歯ぐきの後退
(歯ぐき下がり)

エナメル質の摩耗

エナメル質は歯の外表面を覆う体の中で一番硬い組織ですが、むし歯はモチロンですが、それ以外にも経年的にエナメル質が摩耗することで内側の象牙質が露出してしまい、これが知覚過敏症状の原因になることがあります。下記の様な理由が考えられます。

象牙質の露出

歯ぐきの後退(歯ぐき下がり)

健康な歯は、健康な歯ぐき(実際には顎の骨)に支えて貰わねばなりません。その歯ぐきの後退が進行するのに伴い象牙質が露出してしまえば知覚過敏に繋がってしまいます。
この歯ぐき下がりには、下記の様な理由が考えられます。

歯根露出
  • 歯ぐきを後退させるほどの過度な歯磨き
  • 歯周病・歯槽膿漏
  • 避けることが出来ない加齢現象

歯周病・・・負のスパイラル

困ったことにイラストのような負の連鎖が起こることを我々はしばしば経験いたします。
歯周病が生じる、歯ぐきが下がる、痛いので磨かない(触れない)、更に歯ぐき下がりが助長される、やがては歯が抜けちゃう・・・これは避けたいところではあります。

歯周病・・・負のスパイラル

何かしらの原因はあるはず

全く原因がない場合にはシミる状態にはならないと思います。そのように我々のカラダは上手く出来ているのです。ただし、イラストのように何処かに綻びが出て来れば・・・ダメなんです。どれに該当するかをしっかりと見極めないと対策の立てようがなくなります。

何かしらの原因がある知覚過敏症

知覚過敏症のその他の原因

  • 歯の咬耗(削れ)や細かいヒビ
  • 強圧ブラッシングで摩耗
  • 詰め物の周囲の欠け隙間
  • 新たな詰め物の刺激による神経興奮
  • 酸蝕症によるエナメル質の溶解
  • 歯ぎしり噛み締めによる歯根部のくさび状欠損

HOW TO TREAT HYPERESTHESIA

知覚過敏症の治療法

知覚過敏の治療法のファーストチョイスは、塗り薬等で知覚過敏が起こっている象牙質の表面に開口している象牙細管(言わば神経のセンサー部分)を塞いでしまう治療法です。

象牙細管の封鎖

液体のお薬を塗ったりもしますし、根面にくさび状の凹みが生じてるようなケースではコンポジットレジンと呼ばれるプラスチックの詰め物で埋めたりもします。

薬剤(歯磨剤を含む)の薬効に期待する

知覚過敏は歯の神経が刺激を受け『痛い』という信号を脳に送ることで『痛み』を感じます。
その信号を何処かのポイントで遮断させちゃえば・・・つまり神経を興奮させなければ知覚過敏を軽減させることが出来ます。これは歯の神経の周囲にカリウムイオン(K+)が多く存在すると神経細胞が興奮しにくくなるということを利用したもので、薬剤を塗布したり歯磨剤に硝酸カリウムという成分を含ませ継続して使うことで知覚過敏の抑制効果が生じて来るようです。

象牙質の露出部分や根面を被覆する

知覚過敏のある象牙質表面を薄い樹脂状のプラスチックで被覆することも可能です。
接着材を用いてしみる場所に薄い皮膜を貼り付ける(詰めることもある)のがポイントで、これには即効性があります。
象牙質表面がすり減っていたり酸で溶けていて凹みがある場合には、形態回復を兼ねながら象牙質表面を被覆する事になります。

くさび状欠損のお悩み

歯ぐき下がりを予防する

歯ぐきが下がって露出してしまった根面は、頑丈なエナメル質に覆われていないのでイラストのようにトラブルが生じやすくなります。年配の方で『昔は歯が丈夫だったんだけど、最近急にむし歯が増えて・・・』と仰る方がいらっしゃいますが、これのことです。

歯ぐき下がりでむし歯になりやすい根部が露出する

PREVENTIVE MEASURES -SELF CARE

予防-セルフケア編

残念ながら知覚過敏に対しての確実な予防法はありません。(泣)
健康な歯肉であっても、加齢やコントロールが出来ない歯ぎしりによって歯肉が退縮することは避けることが出来ないからです。歯根面の象牙質露出を防ぐには歯周病予防は欠かせませんでしょう。歯磨き時にも過度なブラッシング圧を加えることで歯肉の退縮を進めないようにせねばなりません。
プラークが付着した状態が長く保持されてしまえば、歯の表面が酸により溶け(脱灰)てしまって知覚過敏が起きやすくなります。お解りいただけようかと思いますが、上記より歯周病むし歯予防が知覚過敏予防に相通じることがお解りいただけますでしょう。
特効薬こそありませんが、下記の様な事にお気を付け下さい。

➊ 象牙質の露出部分や根面を被覆する

私自身がそうで、未だにややもすると強圧でブラッシングしたりしちゃってるのですが、過度なブラッシング圧は歯ぐきの後退や歯のエナメル質の摩耗リスクを高めます。それにより象牙質の露出につながってしまい知覚過敏症状を引き起こします。
理想的には、磨いた気がしないぐらいがちょうど良い・・・と言われます。

適切なるブラッシング圧は150g

➋ 歯ブラシを大きく動かさない

ペングリップで小刻みに動かす・・・解ってはいても大きなストロークになっちゃうんですよねぇ。SUNSTARさんの動画を参考になさって御自身のブラッシング方法をチェックしてみて下さい

➌ 歯の根元付近のプラークを丁寧に除去

歯肉退縮が起きている場合に丁寧なブラッシングは知覚過敏症予防にも欠かすことは出来ないのですが、同時にフロス・歯間ブラシなどで隣接面ケアもして参りましょう。

➍ 知覚過敏予防歯みがき剤の使用を推奨

知覚過過敏予防歯みがき剤に入っている薬用成分(硝酸カリウム・フッ化ナトリウム)が、露出した象牙細管の入口をふさぎ知覚過敏を予防し症状を和らげてくれます。

PREVENTIVE MEASURES -PRO CARE

予防-プロ・ケア編

我々歯科医院サイドで行える知覚過敏予防対策としては、次のようなモノがあります。

➊ フッ化物の塗布

フッ化物の塗布は、根面象牙質の再石灰化や象牙細管開口部の封鎖を促進してくれます。再石灰化を促すことで露出してしまった象牙細管の開口部を狭めた状態で保てれば冷水痛等の軽減を可能にします。
言葉では表現しにくいのでLIONさんの見易いイラスト動画で御確認下さい。
因みにフッ素の塗布は保険適用で大人の方でも怪しい箇所があったならば大丈夫です。

➋ 象牙質の表面にコーティング剤を塗布

液体状のお薬を、綺麗にした根表面に塗布していきます。

➌ レジン充填を行うことで刺激を遮断

物理的に熱の伝わりを遮断することを試みます。

➍ 原因となるかみ合わせを調整

歯肉退縮を促しかねない咬合性外傷と呼ばれる噛み合わせの不良箇所も根面露出を来たし知覚過敏に繋がりかねません。必要に応じて咬合調整が求められます。同じ意味合いとして歯ぎしりやTCH対策も必要になろうかと思います。


執筆・監修歯科医

知覚過敏症