従来は歯を失った場合には、ブリッジといって失った歯の両隣の歯を削って無い部分の歯を作ったり、取り外しの義歯(入れ歯)しか方法がありませんでした。もちろん今でもこれらは保険診療の中心をなすものです。
ただ これらの方法はそれぞれに欠点が有り、ブリッジについては失った歯を作る為に両隣の歯を削ることにより削った歯の寿命が短くなってしまったり、また取り外し可能な入れ歯は硬い物を噛むと粘膜に痛みがあったり噛む度に入れ歯が動いてしまったりして、必ずしも快適な使用感が得られる訳ではないのです。

そこで登場したインプラント治療は、人工歯根治療(じんこうしこんちりょう)とも言われ、下の動画のように歯が抜けてしまった部分の顎の骨にインプラント(人工歯根)を入れてそれを支柱とし、その上に支台部(歯を直接支える部分)と人工の歯をしっかり固定する治療法です。

インプラントは生体との親和性が高いチタンという金属で作られています。チタンは長年の基礎的・臨床的研究からインプラントの材料として最も安全であり、また顎の骨としっかりと結合すれば、その上に丈夫で安定した歯を作ることができます。
入れ歯ではどうしても100%の満足を得ることが難しかった”食べる話す“こともインプラント治療によりご自分の歯と同じような感覚を取り戻せるのです。

インプラントが可能な人

インプラントは、重度の全身疾患がない限りほとんどの成人(18歳以上が好ましいようです)に適用できます。ただし必要条件としては、インプラントを埋入する骨のスペースがあること、チタンという金属に対しアレルギーがなく重度の歯周疾患がないことなどが挙げられます。高齢者の方でも条件に当てはまれば施術可能です。(80代前半の患者さんへの埋入経験有り)
患者さんのコンプライアンス(理解力・協力度)に合わせて、インプラント治療のリスクの存在は認識していただかないとなりませんし、同時にそれに対する限界等も知っていただかないとなりません。

インプラントの寿命はどのくらい?

インプラント自体は、材質的に言えば半永久的なものです。製品が向上し、医学の進歩も相俟って手術の成功率は95%に近い高い水準を維持しておりますが、何年もつかと正確には言えません。背景に歯周病の存在や歯ぎしり、喫煙等に代表される不良習癖的要素があると寿命を短くしてしまうことはよく知られています。

やはりブラッシングは必須で、手入れ具合によりその寿命は決定されます。ご自身でメインテナンス(プラークコントロール)は勿論のこと、半年に一度程度の定期的な検診を受けていただく事が必須です。
残念ですが、骨が異様に無い方の場合など難症例では技術的な問題によるトラブルも否定できません。そういった場合のインプラントの失敗は通常1年以内に起こることが多いようです。

医院で行う定期検診は必ずお越しいただき、その際にお口の状態のチェックを十分にして、その方に応じた正しいブラッシング方法を当院の歯科衛生士さんが丁寧に指導させていただきます。

執筆・監修歯科医

医療法人SDC 酒井歯科医院の院長 酒井直樹

医療法人SDC 酒井歯科医院
  院長 酒井直樹

1980年 福島県立磐城高等学校卒業
1988年 東北大学歯学部卒業
1993年 酒井歯科医院開院
2020年 医療法人SDC 設立