日々の診療において、多くの患者さんとお話しさせていただきます。
その中で歯の根っこが顎の骨(以下、顎骨)の中に植わっていることをご存知ない方が多い事に気付かされます。どう見ても歯ぐきに植わっているようにしか見えないので無理もないのですが、歯ぐきは厚さ数ミリに満たないような顎骨にへばり付いているだけの存在に過ぎないのです。すぐ下は顎骨(上顎骨と下顎骨)です。
その顎骨は歯周病の進行に伴いどんどん溶けてしまうということをご存知でしょうか?
そもそも「顎骨に植わっている」事実をご存知なければピンとこないと思いますが、ほとんど痛みがなく長い時間をかけて溶けてしまうと…お解りいただけると思いますが困った事態が生じます。
植木のように歯の根っこを取り巻く顎骨がなくなれば歯は立っていられなくなります。グラグラして、酷い人だと自然脱落にまで至ってしまいます。
歯周病の進行
歯周病が進行することにより顎の骨と歯ぐきが少なくなり、歯をしっかり支えることができなくなります。そうなると支えを失った歯は残念ながら抜けてしまいます。
水面下の状況を見てみましょう
表面的には歯ぐきの発赤・出血・腫脹が症状のように見えますが、それはあくまでも上辺のことであって実際は水面下でこんな事が起こっているのです。

歯周病が進行することにより顎骨は次第に痩せてしまい、必然的にしっかり歯を支えることができなくなります。骨が少なくなるに伴い、歯ぐきも下がり歯は不安定に…歯周病が進行し咬合痛等に苛まれ始めます。
原因に敏感になりましょう!
下記の原因にご注意ください。歯科医も好んで歯を抜きたいわけではないのですが、抜かずにいられないケースにほぼ連日遭遇しているのが実情です。
- みがき残しのプラーク
- 歯ぎしり、くいしばり、かみしめ
- 不適合な冠や義歯
- 不規則な食習慣
- 喫煙
- ストレス
- 全身疾患(糖尿病、骨粗鬆症、ホルモン異常)
- 薬の長期服用
回復しないので、予防しましょう!
予め防ぐとはよく言ったもので、いったん溶けてしまった顎の骨は元に戻せません。
テレビのコマーシャルでも「予防!予防!」と連呼されるのは元通りに回復しないからです。
執筆・監修歯科医

医療法人SDC 酒井歯科医院
院長 酒井直樹
1980年 福島県立磐城高等学校卒業
1988年 東北大学歯学部卒業
1993年 酒井歯科医院開院
2020年 医療法人SDC 設立