口呼吸はよくないのです

私も風邪や花粉症で鼻が詰まった際は口呼吸を余儀なくされますが、習慣的に口で呼吸をすることは「歯・歯ぐき・歯並び」等によくないことをご存知でしたでしょうか?
朝のNHKの番組でも「虫歯予防デー」に準えて特集をしていましたが、できる限り鼻で呼吸すると良いようです。

なぜ、歯や口の健康に良くないのでしょう?

子どもの頃、ちょっとした切り傷・擦り傷を負った際に傷口に唾をつけた経験があると思います。
唾液に殺菌&消毒の作用がある事を経験的に知っているからであって、動物も怪我をした時は傷口を舐めて治す光景を目にしたことがあるはずです。

口呼吸は空気の通り道が「鼻」ではなく「口」になってしまいます。本来潤沢に溢れ出ていた唾液が口呼吸により乾いてしまう事に伴い口腔内乾燥状態になってしまえば殺菌・消毒の作用が発揮され難いことになってしまいます。

本来であれば我々『動物』は、口からつながる食道と、鼻からの気道はまったく別モノです。呼吸時には鼻呼吸が本来の正しい呼吸方法のはずなのに進化の過程で食道と気道がつながり口呼吸もできるようになってしまったと言われています。口呼吸は動物としては本来の自然な形ではないので、口呼吸が常態化してしまえばやがては病気等のマイナス発現にもつながりかねません。デメリットがたくさんあるのです。

口呼吸のデメリットとは?

子どもの頃、私も口元に締まりがなくポカンとさせてると母に「口を閉じなさい」と叱られた経験がありました。母は無意識にも口呼吸が健康に悪影響を及ぼすことを危惧し、漠然とではあっても外見的にも大きな悪影響を及ぼすことを知っていたのかもしれません。

◆ 風邪を引きやすくなる(ウィルス感染しやすくなる)

我々の鼻の穴の中には、細かい毛が生えていたり粘膜は常に湿ってますよね。昨今取り沙汰される『新型コロナウイルス』はじめ空気中を浮遊しているウィルスや各種の病原菌だのアレルギー物質をそれらが侵入を阻止してくれる、言うなれば天然のフィルターだったりするのです。
口呼吸の方の場合には、これらのウィルス等がダイレクトに気管に入ってくるために、風邪を引きやすくなったり、良からぬ感染症にかかりやすくなったりすると言われます。

◆ むし歯、歯周病、口臭の原因になる

上でも触れましたが、唾液ってのはありがたいモノで『リゾチーム』という酵素の一種が豊富に含まれていてこれが口の中の細菌の繁殖を抑え込んでくれています。口呼吸の方はどうしても口腔内が乾燥してしまいリゾチームの抑えこんでくれる働きが悪くなるので、むし歯歯周病・口臭などが引き起こされてしまうのです。

◆ 酸素の摂取量が少なくなる

口呼吸は鼻呼吸に比べて酸素の摂取量が少なくなってしまうそうです。となれば脳に十分な酸素が供給されませんので、集中力は低下を来たし、全身の代謝も落ちます。その代謝が落ちると痩せにくくなるため肥満化の傾向が促進されるとも言われております。ダイエット的にもマイナスって事ですね。

◆ 顔の筋肉が劣化する

口をポカンと開けてるのが常態化すると顔の筋肉が発達せずにたるむ事が考えられます。唇は口輪筋という筋肉ですから歯列をサポートする力が弱まり前歯が押し出され歯並びも悪くなる可能性が生じます。特に小さいお子さんにとっては将来の顔の表情に大きな悪影響があるため注意が必要になります。

昨今、その対策として『予防矯正』とかの概念が浸透して来て、口元の筋肉バランスを整えようとする治療法が開発されて来てたり致します。

◆ 睡眠時無呼吸症候群の引き金になる?

口をポカンと開けたまま就寝すると、舌は後方に落ち込んで気道を塞いでしまいます。これにより睡眠時無呼吸症候群を引き起こすおそれがあります。

できるだけ口腔内の乾燥を防ぎましょう!

口からの呼吸が多くなると、唾液が出にくくなり歯面が乾燥してむし歯になりやすくなります。歯並びや口の周りの筋肉のそもそもの弱さ、舌の不良習癖等が原因の場合もあるため、まずは何が原因になっているかを見極め対策を講じる必要がありますでしょう。

口が渇きやすい方、気がつくと口が開いてしまう方、睡眠時無呼吸症に伴い鼾が酷いような方は、無意識のうちに口呼吸になっているのかもしれませんね。出来うる限りセルフチェックをして、気がついたそのたび事に意識して口を閉じて鼻呼吸にするだけでだんだんと鼻呼吸が身に付くと言われます。まずは意識をするところから始めてみてはいかがでしょうか?

執筆・監修歯科医

医療法人SDC 酒井歯科医院の院長 酒井直樹

医療法人SDC 酒井歯科医院
  院長 酒井直樹

1980年 福島県立磐城高等学校卒業
1988年 東北大学歯学部卒業
1993年 酒井歯科医院開院
2020年 医療法人SDC 設立