院長のコラム

歯周病と歯槽膿漏、何が違うんでしょう?

最近では、歯の周りの病気という視点から「歯周病」と呼ばれることがほとんどになりましたが、ある一定年齢より上の方にとっては「歯槽膿漏」という表現も御記憶があろうかと思います。
画数が多いので「歯槽ノーロー」と表示されることも多いですけど、漢字で書いてみると「歯槽」は歯ぐきの部分を指し、そこから「膿が漏れる」と書くんですから穏やかではありませんでしょう。

基本的には同じ病気のことですが、歯周病には歯ぐきの表面的なトラブルである歯肉炎(軽度)と、歯を支える顎の骨まで冒される歯周炎(重度)の2種類があります。歯槽膿漏は後者の歯周炎の重度な状態を指します。
膿漏にまで至ってしまった場合には、歯ぐきが膿んじゃうんですからご想像の通りに歯を残すことは相当に厳しくなります。抜歯を避けることが難しくなるばかりでなく、隣の歯をも巻き込む恐れが生じて来ますので厄介だったり致します。

1970年代には、歯ブラシだったか歯磨き粉のCMで「リンゴをかじると歯ぐきから血が出ませんか?」というフレーズが使われていました。実際問題として、歯槽膿漏の重度な状態になるとリンゴだけでなく通常の食材でも歯ぐきから血が出ることがありますので、患者さんの中には「怖くて人前で食事ができない」と仰る方も少なからずいらっしゃいます。

当時は『膿漏』というおどろおどろしい表現が主流だったんでしょうけれど、歯周病という呼称に変わったのはここしばらくで糖尿病をダイアベティスと表現しようとしているのに理由が似ていたのかもしれませんね。

ブラッシング時に歯ぐきから出血する程度の歯周病であれば、丁寧なブラッシングによって健康な歯ぐきに回復することも可能ですが、ひとたび顎の骨まで溶けてしまう重度の膿漏状態になってしまっては回復は見込めません。
歯周病は「サイレント・キラー」とも呼ばれ、顎の骨が溶け始めても痛みを感じないため、本人が気が付かないことが多いのが困る点でもあります。

疲労が重なったり、寝不足が続いたりして体調が悪い時、ナンとなく歯ぐきが気になることがありましたら・・・それが歯周病のサインかもしれません。
放置すると歯が抜けてしまう恐れがあるため、定期的に歯科医院でレントゲンを撮影して、詳しい説明を受けて御自身の骨レベルを把握なさることを是非にオススメ致します。

酒井直樹

酒井直樹

医療法人SDC 酒井歯科医院 理事長/院長

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