我々は年に1~2度ほどですが、歯科医師会から任命派遣されて一歳半や三歳児の歯科検診に保健所を訪れたり致します。その折に歯科医師として生涯忘れることが出来ないほど記憶に残るお子さん(三歳児)がいらっしゃいました。

三歳児・・・ほぼ乳歯も生え揃って、それでも生えたばかりなこともあって大概のお子さんはむし歯などには無関係、『お子さんの歯に関して、気になってるようなことはありませんか?』とか『これからですからこの調子で気を付けて参りましょう!』なんてお伝えする程度に終始するのが通例なんですが、そのお子さんは全部で20本ある乳歯がすべてボロボロの崩壊状態で驚きました。(泣)

かつて、高度成長期に『むし歯の洪水』という時期があったそうですが、そういった時代でも洪水状態はもう少し年齢が上の学童期と認識してましたので強い違和感を感じたりいたしました。

原因はスポーツドリンクの常飲

傍らのお母さんに『ん~ん、原因にナニか心当たりはありませんか?』と訊いてみましても『解らないんです・・・』との返答。
私の方から『毎日、甘いお菓子を口にしていたとしてもここまでむし歯にはならないと思います。飲み物とかはどうですか?』と伺ってみたところ、『ハイ! 健康に配慮して食事の時にはスポーツドリンクを毎日飲ませています!』とにこやかにお母さんからの返答。
それで合点が行きました・・・原因はそこにあったように思います。

本来は食事の後にお茶・・・が基本

親御さんは全く御存知なかったようでしたが、我々は基本的に食事の時には飲み物は必要とはしません。
よく噛めば自然と大量に唾液が溢れ出て来ますのでそもそも飲み物は必要無くて、むしろロクに噛まずに流し込んでしまう事など鑑みるとマイナスにしかならないかもしれません。
サザエさんのご家族が食卓を囲む風景を思い起こしてみていただけませんでしょうか?
おそらく描かれているあの時代にタラちゃんはスポーツドリンクはおろか水すら食事中には飲んでいなかったと思うのです。

知っていれば防げたトラブル

そう考えると、毎食のたびにスポーツドリンクを口にしていたそのお子さんは、ナンのためにそうなさっていたんでしょうか?
お子さん御本人が望んだはずもなく、お母さん始めご家族に知識さえあれば防げたのではないかと強く感じた次第です。

気の毒なのはお子さん

お子さんの成長を願わない親はいらっしゃらないでしょう。私も子供を持つ親ですからその気持ちは理解が出来ます。ですが、良かれと思ってしていたことが成長期の咀嚼機能を奪い歯並びもメチャクチャにしているとしたら・・・大切なお子さんにマイナスしか背負わせないことになってしまいます。(泣)

健やかなお子さんの成長のために

このページには、ペットボトル飲料に含まれる糖分量カロリーの多寡をまとめてみました。私が責任を持って計った数字ではないので目安程度にお考えいただけると助かりますが、あちこちのサイトにほぼ同様の数値が載っておりますので信用しても宜しいようには思います。御確認いただき『お子さんに与える飲料にも十分なる注意を!』と思っていただけると幸いです。

実際には、私自身や食事の前に飲酒もしますし、家族も絶対にペットボトル飲料を口にしないわけではありません。
例えば、発熱してお子さんがグッタリしていてナニも口に出来なくなるほどに衰弱してるような時にはモチロンその限りではありません。有効活用はなさっていただいて問題はありませんでしょう。
御注意いただきたいのは『常飲を避ける』ことに尽きます。
世界保健機関(WHO)の最新の指針によれば、食事以外で1日に摂取してもよい糖分は1日の総カロリーの5%程度が望ましく、すなわちは平均的な大人の場合として換算すると25g程度となっており、500mlの炭酸飲料や100%ジュースを飲んでしまうとたった1本で1日の必要摂取量を超えてしまう事にもなります。肥満や小児の糖尿病リスクの問題も絡んで参りましょう。御注意願えればと思います。

ペットボトル飲料には、また違った側面から考えて歯が溶けてしまう『酸蝕症リスク』ってのもあります。下記のページに纏めてみてますのでそちらも御参照いただけると宜しいように思います。

ペットボトル飲料の実際の糖分量

先日も大人の方でビックリするほどに歯が溶けてる方が初めて来院されました。伺えば日にスポーツドリンク(500ml)を3本もお飲みになるんだとか・・・単なる水なら解らなくもないのですが、CMのイメージに踊らされてしまったんでしょうか、そもそもは丈夫そうに見える歯が表層から2ミリほどエナメル質が溶けてしまって内部の象牙質が全歯 露出しておりました。
やはり知っていれば防げたトラブルです。

溶けてしまうのは酸蝕症トラブルですが、この方は同時に毎日90gほどの糖分をスポーツドリンクから摂取なさっていたことに気が付いてらっしゃいませんでした。(泣)
お伝えしたところ随分と驚かれておりましたが、身体に入れるモノ故にまずは疑ってみることをなさるべきではなかったかと思った次第です。
WHO推奨の3倍を超える糖分の摂り過ぎは、それを継続すれば肥満・糖尿病・高血圧と言った生活習慣病のリスクを高めますでしょう。

こちらではペットボトル飲料の実際の糖分量をイラストでまとめます。参考になさってみて下さい。
モチロンですが、これらの糖分過多を理解なさった上でお飲みになる場合には何らの問題もありませんです。

糖分量の多いペットボトル飲料

糖分量がほぼ無いペットボトル飲料

カロリー『0』や『オフ』表示にも御注意を

「健康増進法・第31条」ってのがありまして、それを見ると『ホントかよ!』って思ってしまう点もあるんです。私なんかはカロリー『0』って表示されてればエネルギー(熱量)はゼロなんだろうと錯覚しますが、実際は違っております。
ググるとすぐに出て来ますが、どうしてそうなのかは・・・解りませんです。具体例を挙げておきますね。

カロリーゼロ

食品100gあたり5kcal以下(一般に飲用の液体では100mlあたり5kcal以下)

カロリーオフ

食品100gあたり40kcal以下(一般に飲用の液体では100mlあたり20kcal以下)

糖質ゼロ

食品100gあたり0.5g以下(一般に飲用の液体では100mlあたり0.5g以下)

糖質オフ

食品100gあたり5g以下(一般に飲用の液体では100mlあたり2.5g以下)

「カロリーゼロ」・「カロリーオフ」・「糖質ゼロ」・「糖質オフ」と表示してあれば、一般的にはカロリーや糖質が全く含まれていないと思ってしまいますが、実際は「500mlのカロリーオフ飲料」であれば、100kcal弱だったりするようですし、場合によっては原材料のすべてが砂糖の場合には「大さじ2杯半」相当ってことになるようです。
上手くカロリー摂取のコントロールをする際には、これらも知らないことはやはり宜しくないように思います。

執筆・監修歯科医

医療法人SDC 酒井歯科医院の院長 酒井直樹

医療法人SDC 酒井歯科医院
  院長 酒井直樹

1980年 福島県立磐城高等学校卒業
1988年 東北大学歯学部卒業
1993年 酒井歯科医院開院
2020年 医療法人SDC 設立