サホライドは、歯を削らずに、むし歯の進行を止めるお薬(フッ化ジアンミン銀)です。むし歯の部分に塗るだけで、麻酔もドリルも使わずに処置ができ、健康保険も使えます。治療が難しい小さなお子さんのむし歯に広く使われていますが、塗った部分が黒くなる、塗り直しが必要などの注意点もあります。この記事では、サホライドの効果と仕組み、研究での裏づけ、注意点、当院での使い方を、いわき市中央台の酒井歯科医院がやさしくお伝えします。
こんにちは。いわき市中央台の酒井歯科医院です。
小さなお子さんにむし歯が見つかったとき、「治療で泣いてしまったらどうしよう」「歯医者さんを嫌いになってほしくない」と、不安になる親御さんは少なくありません。「サホライドって何?」「黒くなると聞いたけれど大丈夫?」というご質問も、よくいただきます。

サホライドとは?歯を「削らずに止める」お薬
サホライドの正式な名前は「フッ化ジアンミン銀」です。1970年代に大阪大学の研究者らによって開発された、長い歴史のあるお薬で、今も健康保険が使える治療です。
削って詰めるこれまでの治療とは違い、むし歯の部分にこのお薬を、筆などで塗るだけで処置が終わります。麻酔やドリル(歯を削る機械)を使わないので、処置にともなう痛みは基本的にありません。そのため、次のような場合に広く使われています。
- 治療用のいすに、まだじっと座っていられない小さなお子さん
- 治療をとても怖がってしまうお子さん
- 医療的な配慮が必要なお子さん
- 削るほどではない、初期から中くらいまでのむし歯
大人や高齢の方の歯の根元のむし歯などに使われることもありますが、当院では主に、お子さんの乳歯のむし歯に使っています。


サホライドの効果と仕組み

サホライドの主な成分は、「銀イオン」と「フッ素イオン」です。この2つが組み合わさることで、むし歯の進行を抑えます。
① 銀イオンが、むし歯菌を抑える
銀には強い抗菌作用があります。塗ると、銀イオンがむし歯菌の働きを妨げ、菌が増えるのを抑えます。
② フッ素イオンが、歯を強くする
フッ素は、歯の表面を強くし、溶けかけた歯を元に戻す「再石灰化」を助けます。
お薬が歯の成分と反応すると、銀の化合物やフッ化カルシウムができます。これらが、むし歯で開いた象牙質の細かい管(象牙細管)をふさいで歯を固くし、冷たいものがしみる症状をやわらげる効果も期待できます。
研究での裏づけ

「塗るだけで、本当にむし歯が止まるの?」と思われるかもしれません。サホライドと同じ成分のお薬(海外ではSDF:Silver Diamine Fluorideと呼ばれます)の効果は、海外の複数の研究をまとめた分析でも確かめられています。
乳歯や、乳歯と永久歯がまじる時期の子どもを対象にした分析では、進行中のむし歯のうち、平均して約8割(約81%)の進行が止まったと報告されています。とくに38%のお薬を半年ごとに塗った場合に、効果が高かったとされています(最大で約89%)。
安全性についても、塗った部分が黒くなることや、一時的な歯ぐきの変色を除けば、大きな副作用の報告はほとんどないとされています。
知っておきたい注意点
「削らない・痛くない」という良さがある一方で、前もって知っておいていただきたい注意点もあります。
① むし歯の部分が黒くなる
塗った部分のむし歯は、黒く変わります。お薬の銀が歯の成分と反応して、黒い銀の化合物ができるためです。黒くなるのは、むし歯の進行が止まりつつあるサインでもありますが、見た目が気になる方もいらっしゃいます。黒くなった部分そのものは、基本的に元には戻りません。そのため、前歯など目立つところに塗るかどうかは、事前にご相談して決めています。

② 1回塗れば終わり、ではない
効果を保つには、定期的な塗り直しと経過の確認が必要です。当院では、おおむね半年ごとに塗り直しています。
③ 学校や園の検診で「むし歯」と言われることがある
集団の歯科検診では、黒くなった部分が「治療が必要なむし歯」と判定されやすくなります。止まっているのか、進んでいるのかは、歯科医院で確かめる必要があります。
④ むし歯の原因そのものは、なくならない
お薬で進行を止めても、食べ方や歯みがきの習慣が変わらなければ、周りから新しいむし歯ができることがあります。
⑤ 神経に近い深いむし歯には使えない
むし歯が神経の近くまで進んでいる場合は、塗ることで神経に炎症を起こすおそれがあるため、使わないことがあります。サホライドが向いているのは、初期から中くらいまでのむし歯です。
⑥ お薬がとても苦い
お薬には強い苦みがあるため、飲みこまないように気をつけながら塗ります。

※このほか、お薬が皮膚や衣服につくと、黒っぽく変色して落ちにくくなります。まれに、一時的に歯ぐきが白っぽくなることがありますが、数日で自然に治ります。
当院でのサホライドの使い方
当院でも、サホライドを使っています。ただし、すべてのむし歯に一律に使うわけではありません。お子さんの年齢、治療への慣れ具合、むし歯の場所や深さなどをふまえて、削って詰める治療と、サホライドを塗る処置を使い分けています。
- 主に、お子さんの乳歯のむし歯に使います
- 永久歯には、黒くなる見た目の負担を考えて塗っていません
- 塗り直しは、おおむね半年ごとに行い、経過を確認します
- 健康保険が使えます。福島県内にお住まいのお子さんは、18歳になった年度の3月末まで、子ども医療費助成により、保険診療の窓口負担がかからないのが原則です
お子さんが歯医者さんに少しずつ慣れて、削る治療を受けられるようになるまでの「つなぎ」として使うことも多くあります。お子さんの診療については小児歯科のページもご覧ください。
塗ったあとに大切な、おうちでのケア
サホライドは、お子さんが治療に慣れるまでの心強い味方ですが、むし歯を防ぐには、おうちでのケアが欠かせません。
毎日の歯みがきと、仕上げみがき
お子さんだけの歯みがきでは、どうしても磨き残しが出ます。最後の仕上げみがきは、おうちの方がやさしく、ていねいに行ってあげてください。
おやつと甘い飲み物は、時間を決めて
だらだら食べや、アメ・チョコなどお口に長く残るおやつ、ジュースなどの甘い飲み物は、むし歯ができやすい状態をつくります。時間を決めて、ふだんの飲み物は水やお茶にしましょう。
歯科医院での定期的なチェック
塗った歯の経過を確かめながら、お口全体のクリーニングや、ほかの歯の予防も行いましょう。むし歯になっていない歯には、フッ素塗布やシーラントでの予防もおすすめです。

よくあるご質問|サホライド
Q1. サホライドを塗るとき、痛くありませんか?
麻酔やドリルを使わず、お薬を筆などで塗るだけなので、処置にともなう痛みは基本的にありません。冷たいものがしみる症状が、やわらぐこともあります。ただ、お薬はとても苦いので、飲みこまないように気をつけながら塗ります。
Q2. 黒くなった部分は、元に戻りますか?
黒くなった部分そのものは、基本的に元には戻りません。乳歯の場合は、永久歯に生えかわれば気にならなくなります。前歯など目立つところは、塗るかどうかを事前にご相談して決めています。
Q3. 一度塗れば、むし歯は治りますか?
サホライドは、むし歯の進行を止めるお薬です。むし歯でできた穴が元どおりになるわけではありません。効果を保つため、当院ではおおむね半年ごとに塗り直し、経過を確認しています。
Q4. 永久歯にも塗りますか?
サホライドは永久歯にも使えるお薬ですが、当院では、黒くなることによる見た目の負担を考えて、永久歯には塗っていません。主に、お子さんの乳歯のむし歯に使っています。なお、乳歯に塗っても、あとから生えてくる永久歯に悪い影響はありません。
Q5. 費用はかかりますか?
サホライドの処置には、健康保険が使えます。また、いわき市など福島県内にお住まいのお子さんは、18歳になった年度の3月末まで、子ども医療費助成によって、保険診療の窓口負担がかからないのが原則です。くわしい手続きは、お住まいの市町村でご確認ください。
Q6. 学校の歯科検診で「むし歯」と言われました。サホライドを塗った歯でも、治療が必要ですか?
黒くなった歯は、集団の歯科検診では「治療が必要なむし歯」と判定されやすくなります。進行が止まっているのか、進んでいるのかは、歯科医院で確かめる必要があります。検診の用紙をお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。
一度にすべての治療を終わらせる必要はありません。お子さんのペースに合わせて、一歩ずつ進めていきましょう。酒井歯科医院では、むし歯の治療だけでなく、むし歯を防ぐ予防歯科に力を入れています。当院の診療内容は診療案内でご覧いただけます。
参考・出典
- サホライド液歯科用38%の基本情報(日経メディカル処方薬事典)
- サホライド液歯科用38% 添付文書情報(KEGG 医療用医薬品)
- Hafiz Z, et al. Effectiveness of Silver Diamine Fluoride in Arresting Caries in Primary and Early Mixed Dentition: A Systematic Review. Children (Basel). 2022.(乳歯・混合歯列期におけるサホライドの有効性に関するシステマティックレビュー)
執筆・監修歯科医
お子様の歯の未来を守る
やさしい歯科医療を
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会







