口腔機能検査は、「噛む・飲み込む・話す」といったお口の働きを、専用の機器で客観的な数値として調べる検査です。酒井歯科医院では、舌苔・お口の乾燥・咬む力・舌と唇の動き・舌の力・口唇閉鎖力などを測定し、結果を「口腔機能検査結果」としてお渡ししています。この検査は、大人の口腔機能低下症(オーラルフレイル)だけでなく、お子さんの口腔機能発達不全症(お口ポカンなど)の確認にも用います。
このページでは、お渡しした検査結果表の各項目が「何を・なぜ調べているのか」を、実際の検査の様子とあわせてやさしく解説します。ご自身やお子さんの結果表と合わせてご覧ください。
この「口腔機能検査結果」について
大人では、「最近、硬いものが食べにくくなった」「食事の時にむせることが増えた」「薬が飲み込みにくい」・・・こうしたお口のささいな変化は、年齢のせいだけではなく、お口の元気が低下した状態=口腔機能低下症のサインかもしれません。放置すると栄養の偏りや全身の筋力低下につながり、要介護のリスクが高まることも分かっています。

お子さんでは、「お口ポカン」「よく噛まずに丸のみする」「発音が気になる」といった状態が、お口の機能が育ちきっていない口腔機能発達不全症のサインであることがあります。早い時期に気づいて習慣を整えることで、歯並びや発音、噛む力の健やかな発達を後押しできます。
大人・お子さんのどちらも、まずはお口の現状を「数値」で正確に知ることが第一歩です。当院では下記の1️⃣~6️⃣の項目を専用機器で測定し、結果表としてお渡ししています。
大人は50歳以上で咀嚼・嚥下・発音などの低下が認められる場合、お子さんは所定の条件を満たす場合に、それぞれ保険診療の対象となります。ご自身やお子さんが対象かどうかは、遠慮なく当院スタッフへご相談ください。


各検査項目の「見方」と「目的」、そして「対策」
表面の結果表に沿って、それぞれの検査が何を調べているのかを解説します。「基準値未満」にチェックが入っていても、心配しすぎる必要はありません。お口の筋肉は、日々のトレーニングで何歳からでも鍛えることができます。
1️⃣ 舌の汚れ(舌苔)の程度

目的:
舌の表面につく白い汚れ「舌苔(ぜったい)」の量を調べ、お口が清潔に保たれているかを確認します。舌苔には細菌が多く含まれ、口臭や、細菌が肺に入って起こる「誤嚥性肺炎」の原因にもなります。舌を9つの区画に分けて舌苔の付着を点数化し、その割合で評価します。
基準値:
舌苔の付着が舌全体の「半分以下」なら正常です。(付着50%以上・合計スコア9点以上で該当)
解りにくいので、「良好・ふつう・不良」でお知らせしています。
2️⃣ お口の乾燥程度

目的:
専用の口腔水分計(ムーカス)を舌の表面に軽く当て、お口の中の潤い(水分量)を測定します。だ液が減ってお口が乾くと、むし歯や歯周病になりやすくなるだけでなく、食べ物が飲み込みにくくなったり、話しづらくなったりします。
基準値:
数値が「27以上」であれば正常です(27.0未満で該当)。
対策方法:
口腔乾燥に だ液腺マッサージ
お口の乾燥が気になるときは、だ液腺を刺激してだ液の分泌をうながす「だ液腺マッサージ」が効果的です。だ液の出口となる3つのだ液腺・・・耳の前あたりの「耳下腺(じかせん)」、あごのラインの「顎下腺(がっかせん)」、あごの下の「舌下腺(ぜっかせん)」・・・を、指の腹でやさしく刺激します。下の図で位置を確認してみましょう。

食事の前や歯みがきのついでなど、1日の中で気づいたときに行うのがおすすめです。強く押す必要はなく、痛みのない範囲でやさしく行ってください。あわせて、水分をこまめに摂ること・よく噛んで食べることも、だ液を増やす助けになります。乾燥がなかなか改善しない場合は、飲んでいるお薬や全身の状態が影響していることもありますので、一度ご相談ください。
3️⃣ 咬む力の程度(咬合力・残存歯数)

目的:
食べ物をしっかり噛みしめる力(咬合力)を、センサーを噛んでいただいて測定します。あわせて、噛むための土台となる「残っている歯の数」も確認します。噛む力が弱いと食べられるものが限られ、栄養の偏りにつながります。
基準値:
残っている歯が「20本以上」、または咬合力が「375N以上」であれば正常です。
4️⃣ 舌と唇の動きの程度(パ・タ・カ)

目的:
「パ」「タ」「カ」をそれぞれ速く繰り返し発音していただき、1秒間に何回言えるかを専用機器(健口くん)で測定します。舌や唇をどれだけ滑らかに動かせるか(お口の器用さ)を評価する検査です。
- 「パ」…唇をしっかり閉じて動かす力(口唇の運動機能)
- 「タ」…舌の先を上あごにつける力(舌前方の運動機能)
- 「カ」…舌の奥を引き上げる力(舌後方の運動機能)
これらが低下すると、滑舌が悪くなったり、食べこぼしや飲み込みにくさにつながったりします。
基準値:
「パ・タ・カ」のいずれも「6回/秒以上」であれば正常です(いずれか1つでも6回/秒未満で該当)。
5️⃣ 舌の力の程度(舌圧)

目的:
お口の中で小さな風船(バルーン)を舌で押しつぶしていただき、舌の筋力を測定します。舌の力は、食べ物をのどへ送り込んだり、はっきり発音したりするために欠かせません。舌の力が弱いと、飲み込みがうまくいかず、むせや誤嚥の原因になります。この検査は大人だけでなくお子さんも対象で、お子さんの場合は舌の発達の目安として活用します。
最大舌圧の基準値:
「30kPa以上」であれば正常です(30kPa未満で該当)。お子さんの場合は、前回の数値を上回ることが目標です。
お子さんの基準値

50歳以上の方の基準値

舌圧測定器の使い方(患者さん向け動画)
当院で使用しているJMS舌圧測定器TPM-02は、バルーンを舌で押しつぶすだけの検査で痛みはありません。舌圧測定の意味合いを患者さんご自身の視点で解説した院長の自作動画です。
6️⃣ 口唇閉鎖力(お口ポカン対策)
目的:
唇をしっかり閉じる力(口唇閉鎖力)を、専用機器「りっぷるくん」で測定します。とくにお子さんに多い「お口ポカン(口唇閉鎖不全)」は、口呼吸・歯並び・発音・むし歯のリスクと深く関わるため、口輪筋の力を数値で確認します。大人でも、唇を閉じる力の低下は食べこぼしやだ液の垂れ込みにつながります。

基準値:
基準値は年齢によって異なります。詳しい数値はお渡しした結果表の記載をご確認ください(この項目は主に、お子さんの「口腔機能発達不全症」のチェックに用います)。
口唇閉鎖力の平均値
唇を閉じる力(口唇閉鎖力)は、成長とともに少しずつ発達します。そのため目標となる数値は年齢によって異なり、お子さんでは「その年齢の平均に届いているか」が一つの目安になります。下の表は、3〜12歳の口唇閉鎖力の平均値を男児・女児別にまとめたものです。

お子さんの数値がこの平均を大きく下回る場合や、口がいつも開いている「お口ポカン」の状態が続く場合は、口唇閉鎖力が十分に育っていない可能性があります。
当院では「りっぷるくん」で数値を確認し、一人ひとりの状態に合わせたトレーニングをご提案します。なお大人の場合は、加齢による唇の力の低下が、食べこぼしやだ液の垂れ込みのサインになることがあります。気になる方はお気軽にご相談ください。
※この数値は、日本歯科医学会「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」(令和2年3月)に示された年齢別・性別の平均値です。同学会も、子どもの発達には個人差が大きいため、ある一時点の数値だけで判断するのではなく、身長や体重のように成長の流れ(発達曲線)の中で継続的にみることが大切だとしています。
実際、7〜8歳より9〜11歳がやや低いなど途中で前後することもありますが、これは前歯の生えかわり期(8〜10歳ごろ)に口元が一時的に不安定になりやすいことや、年齢ごとの測定人数などのばらつきによると考えられます。一つの年齢の数値ではなく、全体が右肩上がりに伸びていく傾向と、お子さん自身の前回からの変化を目安にご覧ください。
検査のあとは「お口のトレーニング」
結果表で「基準値未満」の項目があっても、あきらめる必要はありません。結果表の右端に記載された「対応訓練(A〜H)」のアルファベットが、あなたが優先して行うとよいトレーニングです。「ガラガラうがい」「あいうべ体操」「パタカラ体操」「だ液腺マッサージ」など、ご自宅で毎日続けられる簡単な体操が中心です。詳しい方法は結果表の裏面や、下記の動画やページもご覧ください。
お口の機能トレーニングは、毎日続けて行うと様々な症状に効果的です。ご自宅で動画を見ながら、一緒にやってみましょう!
口腔乾燥に だ液腺マッサージ

目的:だ液分泌
▼動画でチェック
【動画監修・指導】
東京歯科大学 教授 上田 貴之 先生
ブクブクうがい

目的:唇・頬の筋力
▼動画でチェック
【動画監修・指導】
東京歯科大学 教授 上田 貴之 先生
舌を動かす 舌回し

目的:舌の動き 唇・頬の筋力 だ液分泌
▼動画でチェック
【動画監修・指導】
東京歯科大学 教授 上田 貴之 先生
舌の筋力UP ペコぱんだトレーニング

目的:舌の筋力
▼動画でチェック
【動画監修・指導】
東京歯科大学 教授 上田 貴之 先生
噛む力と舌の動きに ガムトレーニング
【基礎編】
朝・昼・晩の1日3回、食前などに、左右の奥歯でガムを片側20回ずつ交互に噛みます。
【応用編】
ガムを丸めて、舌の先で上あごに3秒間押し付けて伸ばします。
目的:嚙み砕く力 舌の筋力 だ液分泌
▼動画でチェック
【動画監修・指導】
東京歯科大学 教授 上田 貴之 先生
(※ 動画は、大変に分かり易いGC社のサイトからの引用です)
参考にしていただくページやブログ
よくあるご質問
Q. 検査結果表の見方がよく分かりません。
各項目の「基準値」と「検査結果」を見比べ、「該当(基準値未満)」欄にチェックが入っているところが、いま気をつけたいポイントです。その右の「対応訓練(A〜H)」が、優先して行うとよいトレーニングになります。分かりにくいところは、遠慮なく当院スタッフにお声がけください。
Q. 口腔機能検査は保険が使えますか?
はい、条件を満たす場合は保険診療の対象です。大人は50歳以上で咀嚼・嚥下・発音などに低下が認められるケース、お子さんは口腔機能発達不全症の所定の条件を満たすケースが対象となります。ご自身やお子さんが対象かどうかは、まず当院スタッフにお気軽にご相談ください。
Q. 「基準値未満」の項目がありました。すぐに治療が必要ですか?
必ずしもすぐに治療が必要というわけではありません。多くは、ご自宅でのトレーニングと定期的な再検査で改善・維持を目指します。合わない入れ歯やむし歯・歯周病がある場合は、その治療を優先することもあります。
Q. 自宅でできるトレーニングはありますか?
「パ・タ・カ・ラ」を繰り返すパタカラ体操、「あいうべ体操」、だ液腺マッサージなどが効果的です。一度にたくさんやるよりも、歯磨きのついでなどに「毎日少しずつ続けること」が何より大切です。正しい方法で続けるために、結果表や動画とあわせて当院のアドバイスもご活用ください。
酒井歯科医院では、幅広い歯のお悩みに対応しています。当院が対応している治療の全体像は 診療案内ページで、オーラルフレイル(口腔機能低下症)全般については オーラルフレイルのページから、咬合育成(口腔機能発達不全症)全般については 口腔機能発達不全症のページからご覧いただけます。
執筆・監修歯科医
その数値が
健康寿命を守るヒントに
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会




