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口腔がん(こうくうがん)は、舌・歯ぐき・頬の内側・口の底など、お口の中にできるがんの総称です。日本では年間約8,000人が新たに診断され、増加傾向にあります。中でも最も多いのが舌がんです。初期は「なかなか治らない口内炎」「粘膜が赤くなる・白くなる」「しこりや硬さ」「痛みが少ないのに治らない傷」として現れ、口内炎と間違えて放置されがちです。症状が2週間以上続く場合は要注意。主な危険因子は、喫煙・過度な飲酒に加え、合わない入れ歯や尖った歯による慢性的な刺激、不衛生なお口の環境です。口腔がんは早期に発見できれば治療の負担が少なく、良好な経過が期待できます。その最前線が歯科医院での定期検診とセルフチェックです。この記事では、いわき市中央台の酒井歯科医院が、口腔がんの初期症状・見分け方・セルフチェックのポイントをわかりやすく解説します。

🔎 まず知っておきたい早見ポイント
次の症状が2週間以上続くときは、自己判断せず歯科を受診してください。
✅ なかなか治らない口内炎
✅ 粘膜が赤い・白いなど色の変化
✅ しこり・硬さ・盛り上がり
✅ 痛みが少ないのに治らない傷、原因不明の出血・しびれ

はじめに:「口腔がん」は、決して他人事ではありません

「お口の中に、がんができる」
そう聞くと、あまり馴染みがなく自分には関係ないと感じる方が多いかもしれません。しかし、口腔がん(こうくうがん)は誰にでも起こりうる病気であり、日本では1年間に約8,000人が新たに口腔がんと診断され、その数は増加傾向にあります。

口腔・咽頭がんの罹患者数と死亡者数の推移グラフ(1995年から2021年、罹患者数は増加傾向)

ですが、必要以上に怖がることはありません。なぜなら、口腔がんは、早期に発見できれば体への負担が少ない治療で対応でき、良好な経過が期待できるからです。そして、その早期発見の最前線にいるのが、私たち、かかりつけ歯科医です。

この記事では、ご自身の、そして大切なご家族の命を守るために、口腔がんに関する正しい知識と見過ごしてはならない初期症状のサインについて詳しく解説していきます。


口腔がんとは?― お口の中にできる、すべてのがんの総称

口腔がんとは、その名の通り、お口の中に発生するがんの総称です。発生する場所によって、主に以下のように分類されます。

口腔内の名称を示した図(舌・上顎歯肉・下顎歯肉・硬口蓋・軟口蓋・口蓋垂・頬などの部位)

① 舌がん(ぜつがん)

口腔がんの中で最も発生頻度が高いがんです。舌の側面や裏側にできることが多く、初期は口内炎と間違えやすいのが特徴です。近年は、飲酒・喫煙習慣のない若い世代の舌がんも報告されています。詳しくは〔若い世代にも増える「舌がん」と歯並びの関係〕をご覧ください。

② 歯肉がん(しにくがん)

歯ぐきに発生するがんです。入れ歯の不適合による傷や、歯周病と症状が似ているため発見が遅れることがあります。

③ 口腔底がん(こうくうていがん)

下の前歯の内側、舌の下の柔らかい部分に発生するがんです。

④ 頬粘膜がん(きょうねんまくがん)

頬の内側の粘膜に発生するがんです。白い膜のような見た目になることがあります。

⑤ 口唇がん(こうしんがん)

初期症状は、唇にしこりが生じ潰瘍ができる可能性が高まります。

⑥ 上顎洞がん(じょうがくどうがん)

歯科で上顎洞と呼ばれるのは耳鼻科領域でいうところの副鼻腔のことです。このがんの初期症状は、上顎の歯のつけ根の粘膜や頬が腫脹したり、長期に渡る鼻詰まりや鼻水・歯痛・頭痛・開口障害・眼球突出・複視(物が二重に見える)など多岐にわたります。
数年前には、私の知人もこの上顎洞がんで命を落としました。それだけに、早期発見の大切さを痛感しています。


これだけは知ってほしい。口腔がんの危険因子(リスクファクター)

口腔がんの発生には、いくつかの危険因子が関わっていることが分かっています。

口腔がんの主な危険因子の図(過度な飲酒・喫煙・歯周病・歯並びの悪さ・合わない入れ歯・不適合な金属の詰物・食生活・ヒトパピローマウイルス)

① 喫煙と過度な飲酒

これらは、口腔がんにおける最大のリスク因子です。タバコの煙に含まれる発がん性物質やアルコールが、お口の粘膜を慢性的に刺激し、がん細胞の発生を促します。特に、喫煙と飲酒の両方の習慣がある方は、リスクが相乗効果で飛躍的に高まることが知られています。

たばこを吸う男性の写真。喫煙は口腔がんの最大の危険因子

② 合わない入れ歯や、尖った歯による「慢性的な刺激」

サイズが合っていない入れ歯の縁が常に歯ぐきや舌の同じ場所に当たっていたり、治療せずに放置した縁が尖った虫歯が粘膜を傷つけ続けたり・・・このような「慢性的な物理的刺激」も がんの引き金になることがあります。たとえば舌ピアスによる舌への繰り返しの刺激も、同じ「慢性的な物理的刺激」という観点から注意が必要です。

③ 不衛生なお口の環境

歯磨きを怠るなど、お口の中が不衛生な状態が続くと、細菌が増殖し慢性的な炎症が起こります。この炎症が、がんの発生を助長する可能性も指摘されています。


見過ごさないで!自分でできる、お口のセルフチェック

月に一度でも構いません。鏡を持ってお口の中を隅々までチェックする習慣をつけましょう。以下のような症状が2週間以上続く場合は、自己判断せず必ず専門家である私たちにご相談ください。

手鏡で口の中をセルフチェックする女性の写真
  • なかなか治らない口内炎
  • お口の粘膜の色の変化(白くなっている、赤くなっている)
  • 粘膜の表面のざらつき、しこりや、盛り上がり
  • 原因不明の出血や、痛み、しびれ

セルフチェックは、あくまで早期発見の「きっかけ」です。少しでも「あれ?」と思うことがあればためらわずに受診してください。


歯科医院が「がん検診」の場になる理由

なぜ、歯科医院での定期検診が、口腔がんの早期発見にこれほど重要なのでしょうか。
それは、私たち歯科医師や歯科衛生士が、毎日の診療で専用のライトで照らしながら、皆様のお口の粘膜を文字通りミリ単位で観察しているからです。それは、皆様がご自身で鏡で見るよりも遥かに詳しく、そして専門的な視点です。

口腔がんは発見が遅れると舌・顎・頬を大きく切除することもあると示す図(口腔・咽頭がんの罹患者数が20年で約2.7倍に増加)

特に、舌の裏側や喉に近い奥の方など、ご自身では見つけにくい場所にできた初期のがんを発見できるのも、私たちプロフェッショナルならではの役割です。
歯科の定期検診は、虫歯や歯周病のチェックだけでなく命を守るための「口腔がん検診」でもあるのです。


口腔がん早期発見の為に

私が所属する日本歯科医師会で非常にわかりやすい動画(日歯8020TV)を紹介しています。ご覧になってみてください。

いわき市の酒井歯科医院・『きちんと知ろう!口腔がん』
【要注意】なかなか治らない“口内炎”、それ口腔がんのサインかも?|酒井歯科医院

よくあるご質問

Q. 口腔がんは何科を受診すればよいですか?

まずはかかりつけの歯科医院にご相談ください。歯科では毎日の診療でお口の粘膜を詳しく観察しています。専門的な検査や治療が必要と判断した場合は、歯科口腔外科・耳鼻咽喉科・大学病院などをご紹介します。

Q. 口内炎がなかなか治りません。どのくらいで受診すべきですか?

通常の口内炎は2週間ほどで治ります。2週間以上治らない、だんだん大きくなる、硬いしこりを伴う、痛みが少ないのに治らない――といった場合は、自己判断せず受診してください。「2週間」が一つの目安です。

Q. たばこもお酒もやらないのに、口腔がんになることはありますか?

あります。喫煙と過度な飲酒は最大の危険因子ですが、合わない入れ歯や尖った歯による慢性的な物理的刺激、不衛生なお口の環境もリスクになります。近年は飲酒・喫煙習慣のない若い世代の舌がんも報告されています(詳しくは若い世代にも増える「舌がん」と歯並びの関係)。

Q. 口腔がんはセルフチェックで見つけられますか?

セルフチェックは早期発見の大切な「きっかけ」になります。ただし確定診断には専門的な検査が必要で、舌の裏や奥など自分では見えにくい場所もあります。セルフチェックと歯科での定期検診を組み合わせるのが、最も確実な早期発見の方法です。


大切なご自身の、そしてご家族の命を守るために

口腔がんは、早期に発見し治療を開始すれば、決して怖い病気ではありません。しかし、発見が遅れると、食事や会話といった生きる上での根源的な機能に大きな影響を及ぼす可能性があります。

半年に一度の定期検診。それが、あなたと、あなたの大切な家族の未来を守るための、最も簡単で最も確実な方法です。ぜひ、その習慣を今日から始めてみませんか。

酒井歯科医院では、口腔癌の早期発見に向けた定期検診と、むし歯・歯周病の予防ケアを合わせてご提供しています。当院が対応している治療の全体像は診療案内ページで、医院の診療方針や院内環境については酒井歯科医院トップページからご覧いただけます。

参考・出典

執筆・監修歯科医

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