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口腔外科

若年層に増える「舌がん」と歯並びの関係─口内炎との見分け方を歯科医師が解説

    舌がんは口腔がんの中で最も頻度が高く、近年は飲酒・喫煙習慣のない若年層での発症が増加しています。背景のひとつとして、現代人に多い「狭い歯並び」による舌への慢性的な物理的刺激が指摘されています。本記事では、舌がんと口内炎の違い・見分け方、歯並びとの関係、今日からできるセルフチェックのポイントを、いわき市の歯科医師が解説します。

    「口内炎かも?」と感じたときに、知っておきたい舌がんの基礎知識

    こんにちは。いわき市中央台で診療を行っております、医療法人SDC 酒井歯科医院です。
    最近、ニュースなどで「若い人の舌(ぜつ)がんが増えている」という話題を目にし、不安を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

    「お酒もタバコもやらないのに、なぜ?」
    「口内炎がよくできるけれど、もしかして…」

    アルコールや喫煙だけでなく、物理的刺激も舌がんの要因となることを示した図解

    今回は、近年の研究で分かってきた若年層の舌がんの特徴と、その背景にある意外な原因、そして日常で気をつけたいポイントについて、歯科医の立場から分かりやすくお話しします。

    若年層に増える舌がんと、狭い歯並びによる舌への慢性的刺激を示したイラスト

    飲酒・喫煙なしでも増加─若年層の舌がん、この20年で割合が約2倍に

    舌がんを含む口腔がんは、これまで長年にわたり飲酒・喫煙習慣のある中高年男性に多い疾患とされてきました。しかし近年、疫学データはその様相が変わりつつあることを示しています。口腔がんの患者数は約50年前と比べて大幅に増加しており、そのうち飲酒・喫煙習慣のない若年層の割合は、この20年ほどで約2倍(約15.8%)に増加したという報告があります。「自分には関係ない」と思っていた方も、一度この事実を知っておくことが大切です。

    口腔がん患者数が50年で増加し、若年層の割合が高まっていることを示す図解

    現代人特有の「狭い歯並び」が原因になることも

    健康的な生活を送る若い方に舌がんが増えている一因として、現代人に多い「あごの発達不足」と「歯並びの狭さ」が挙げられています。軟らかい食事が中心の食生活が続いたことで咀嚼回数が減り、あごが十分に発育しないまま成長するケースが増えています。その結果、歯列が内側に狭まり、歯の尖った部分が舌の側面に繰り返し当たる「慢性的な物理的刺激」が生じやすい状態になります。粘膜への慢性刺激は、細胞に変異をきたすリスク因子として、複数の研究で指摘されています。

    現代人に多い狭い歯並びと、舌が歯に接触しやすい状態を示した図解

    2020年に発表された大学研究チームの論文では、若年層の舌がん症例の多くの症例で「刺激の原因となった歯」が確認されたと報告されています。特に、奥から2番目の歯(いわゆる6番目の歯)の形状が関与しているケースが多いとされています。

    舌への刺激を減らすための矯正治療や歯の形態修正による予防方法を示した図解

    「口内炎」と「舌がん」を見分けるポイント

    舌に痛みや違和感があると「口内炎だろう」と放置しがちですが、初期の舌がんは口内炎と区別がつきにくいことがあります。以下に、目安となる3つのチェックポイントをまとめました。「気になる」と感じたら、2週間を待たずに歯科を受診することをお勧めします。
    口内炎そのものについては口内炎の治療ページもあわせてご覧ください。

    口内炎と舌がん初期の違いを、治癒期間・痛み・境界線で比較した図解

    治らない口内炎に注意─2週間が目安

    口内炎は通常2〜3週間ほどで治りますが、1〜2か月以上治らない場合は注意が必要です。

    「痛くないから大丈夫」は危険─痛みの少ない初期症状

    口内炎は小さくても強い痛みを伴うことが多い一方、舌がんの初期は痛みが少ないこともあります。

    境界が不明瞭・硬さがある─形やしこりのチェック

    境界がはっきりせず、ただれの中に硬さを感じる場合は、念のため受診をおすすめします。

    尖った歯が舌を慢性的に刺激し、細胞変異を経て舌がんに至る過程の図解

    また、舌がんは舌の先端や中央よりも、舌の側面(両脇)にできやすいという特徴があります。

    舌がんが発生しやすい舌の側面(高リスクエリア)を示したイラスト

    今日からできる「お口のセルフチェック」

    舌がんは早期発見であれば治療成績が大きく改善します。過度に心配する必要はありませんが、次の3つのポイントを日常的に意識するだけで、異変の早期発見につながります。

    2週間ルールを意識する

    口内炎や傷が2週間以上治らない場合は、自己判断せず歯科医院へ。

    舌への刺激を確認する

    歯が舌に当たって擦れる感覚がないか、欠けた歯や尖った被せ物がないか確認しましょう。

    鏡で舌の側面をチェックする習慣を

    歯みがきのついでに、舌の側面や裏側もチェックしてみてください。

    舌がんの主なリスク要因として生活習慣・歯並び・口内環境を示した図解

    よくあるご質問

    Q. 舌がんは何科に行けばいいですか?

    まずはかかりつけの歯科医院にご相談ください。必要と判断した場合は、口腔外科や大学病院に紹介いたします。

    Q. 舌がんの初期症状はどんなものですか?

    舌の側面にできた「なかなか治らない白い潰瘍(アフタ)」「触れると固さがある部分」「痛みが少ないのに治らない傷」などが初期サインとして挙げられます。2週間以上改善しない場合は受診をお勧めします。

    Q. 歯並びを矯正すると舌がんのリスクは下がりますか?

    歯列矯正で舌への慢性的な物理的刺激を減らすことは、リスク軽減につながる可能性があります。また、刺激の原因となっている歯の鋭利な部分を丸める処置(歯の形態修正)で対応できるケースもあります。


    最後に|気になる症状は早めにご相談ください

    「舌に歯が当たって気になる」「口内炎がなかなか治らない」といった症状がある場合は、放置せずにご相談ください。歯の形状が原因の場合、歯を少し丸める処置や、必要に応じて矯正治療で歯並びを整えることで、舌への刺激を軽減できることがあります。

    口内炎と舌がん初期の症状・リスク要因を左右で比較した総合的なイラスト

    また、専門的な検査や診断が必要と判断した場合には、適切な口腔外科をご紹介いたします。お口のトラブルは、早期発見・早期対応が何よりも大切です。「これくらいで受診していいのかな?」と迷わず、どうぞお気軽にご相談ください。


    ◆ 合わせてお読み下さい。

    酒井歯科医院では、むし歯・歯周病の治療だけでなく、 定期的なプロケアによる予防歯科を診療の中心に位置づけています。 当院が対応している治療の全体像は診療案内ページで、 医院の診療方針や院内環境については酒井歯科医院トップページからご覧いただけます。

    執筆・監修歯科医

    早期発見が命を守る
    お口のかかりつけ医として

    酒井直樹

    医療法人SDC 酒井歯科医院 理事長 / 院長