子どもが転んで歯をぶつけたり抜けたりしたときは、①抜けた歯の根には触れず、②水で洗わず牛乳(または歯の保存液)に入れて乾かさないようにし、③できるだけ早く、目安として30分以内に歯科医院を受診してください。ただし、抜けたのが乳歯の場合は無理に元に戻してはいけません。この記事では、いわき市中央台の歯科医師が、いざというときの正しい応急処置を、乳歯・永久歯の違いも含めて解説します。
まず落ち着いて。最初の30分が「その後」を変えます
こんにちは。いわき市中央台の「医療法人SDC 酒井歯科医院」です。
元気なお子さんにつきものなのが、転倒やぶつかりによる歯のケガ。目の前で子どもが口から血を流していたら、親御さんは気が動転してしまいますよね。でも、ここで正しい応急処置を知っているかどうかで、その歯が助かるかどうかが大きく変わります。
特に、歯が根元からスポッと抜けてしまった(脱落した)場合は、時間との勝負です。抜けてから再び歯科医院で処置するまでの時間が短いほど、歯を元に戻せる(再植できる)可能性が高くなります。抜けてから30分以内が「ゴールデンタイム」、遅くとも1〜2時間以内が目安とされています。
まずは、次の3ステップだけ覚えてください。
🚑 抜けた・ぐらついた歯の応急3ステップ
① 止血:清潔なガーゼやハンカチを傷口に当て、数分間そっと圧迫します。
② 保存:抜けた歯は水で洗わず、牛乳(または歯の保存液)に入れて乾かさないように。根は触りません。
③ 受診:できるだけ早く(目安30分以内)歯科医院・口腔外科へ。事前に電話を。

【最重要】抜けた歯の正しい保存方法・・・カギは「牛乳」
抜けた歯を元に戻せるかどうかは、歯の根の表面にある「歯根膜(しこんまく)」という組織が生きているかで決まります。この細胞はとてもデリケートで、乾燥するとすぐに死んでしまいます。だからこそ、保存の仕方がすべてと言っても過言ではありません。
まず、やってはいけないNG
良かれと思ってやりがちですが、次の行動は歯根膜を傷めてしまいます。
水道水でゴシゴシ洗う
水道水は歯根膜の細胞を傷めます。こすると細胞がはがれてしまいます。
ティッシュやハンカチで包んで乾かす
乾燥は再植を難しくします。
歯の根の部分を手で触る・つまむ
これらは避けてください。
過去の事例になりますが、大切な歯根膜をすべて綺麗に除去しツルツルにしてから来院なさった方がいらっしゃいました。再植はしましたが、まったくくっつかず・・・知識さえあれば防げたトラブルでした。

正しい保存(乾かさないことが最優先)
歯を持つときは、白い部分(歯冠)を持ち、根には触れないようにします。汚れがひどいときだけ、牛乳や生理食塩水で数秒すすぐ程度にとどめ、こすらないでください。
💧 保存する液体の優先順位
1. 歯の保存液(ドラッグストア等で市販。学校の保健室にある場合も)=いちばん安心
2. 冷たい牛乳(成分無調整のもの。低脂肪乳・加工乳・常温保存タイプは避ける)=家庭で最も現実的
3. 生理食塩水、または本人の口の中(頬の内側)=一時的な手段。小さなお子さんは飲み込みに注意
⚠️ 水道水はNG。どうしても他に何もないときの最終手段です。

乳歯と永久歯で対応が違う!【ここが分かれ道】
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいポイントです。抜けたのが乳歯か永久歯かで、対応が正反対になります。
永久歯が抜けた場合
再植できる可能性があります。もし親御さんが落ち着いて対応でき、明らかに永久歯だと分かるなら、汚れを軽く流し根に触れないよう向きを合わせてそっと元の穴に戻し、ガーゼを軽く噛ませて固定してから受診するともっとも良い結果につながります。戻すのが難しかったりコワい場合は、無理をせず牛乳で保存して大至急受診してください。
乳歯が抜けた場合 無理に元に戻してはいけません
乳歯のすぐ下には、これから生えてくる永久歯の芽が控えています。抜けた乳歯を差し込むと、その大切な芽を傷つけてしまう恐れがあるのです。ただし、乳歯でも乾かさずに保存して持参し、必ず歯科医院を受診してください(永久歯への影響や、歯ぐきに歯のかけらが残っていないかを確認します)。
⚠️ 迷ったら「戻さない」でOK
乳歯か永久歯か分からない、うまく戻せる自信がない・・・そんなときは、無理に戻さず、牛乳に入れて急いで受診するのが一番安全です。判断は歯科医院にお任せください。おおよその目安として、6歳ごろまでの前歯は乳歯のことが多いですが、自己判断せず受診時にご相談を。

こんなときは? ケース別の対応
歯がグラグラする(抜けてはいない)
無理に動かさず、かたい物を噛ませないように。必ず受診し、レントゲンで根や骨の状態を確認します。
歯が欠けた・折れた
欠けたカケラを探して、牛乳や保存液で保存してください。そのカケラを接着して修復できる場合があります。神経が見えている・強く痛むときは早めの受診を。
歯が歯ぐきにめり込んだ(陥入)
自分で引っ張り出さず、そのまま受診してください。
唇や歯ぐきが切れて出血
清潔なガーゼで圧迫止血を。血が止まりにくかったり傷が深いときは医療機関へ。
見た目は大丈夫そうでも
ぶつけた歯は、後から色が変わったり(グレーっぽく変色)神経が弱ったりすることがあります。特にお子さんは、その場で問題なさそうでも一度受診して経過を診ることをおすすめします。
日ごろの備えが、いざを救います
歯のケガは突然です。次の備えがあると安心です。歯の保存液を救急箱に常備しておく(万一のとき最強の味方になります)、スポーツ時はマウスガードを使う、そして家庭・園・学校で「抜けた歯は牛乳で保存」を共有しておく・・・この3つだけでも、いざというときの結果が変わります。
当院では、歯の保存液のご相談、スポーツ用マウスガードの製作、ぶつけた歯の経過チェックなどを承っています。「これくらいで受診していいのかな?」と迷ったときも、まずはお電話(☎31-1000)ください。お子さんの歯を将来まで守るお手伝いをします。
まとめ
子どもが歯をぶつけた・抜けたときは、あわてずに
- ① 根を触らない
- ② 水で洗わず牛乳で保存
- ③ 30分以内に受診
- ④ 抜けた乳歯は元に戻さない
この4つを覚えておけば、いざというとき大切な歯を守れる可能性がぐっと高まります。
不安なときは、自己判断せず、いわき市中央台の酒井歯科医院までお気軽にご連絡ください。お子さんの歯のことを一緒に守っていきましょう。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 子どもの乳歯が抜けました。元に戻したほうがいいですか?
いいえ、無理に戻さないでください。乳歯のすぐ下には永久歯の芽があり、戻す際に傷つけてしまう恐れがあります。乾かさないように牛乳などで保存して持参し、歯科医院を受診してください。
Q. 抜けた歯を牛乳に入れるのはなぜ? 水ではだめですか?
歯の根の表面には「歯根膜」というデリケートな組織があり、これが生きていると再植の可能性が高まります。牛乳はこの細胞にやさしいpHと浸透圧を持ちます。一方、水道水は細胞を傷めるため避けてください。歯の保存液があればそれが最適です。
Q. 歯はぐらついていますが、抜けてはいません。受診は必要ですか?
はい、受診をおすすめします。見た目に問題がなくても、根や周りの骨が傷ついていることがあります。無理に動かさず、かたい物を避けて、早めにレントゲンで確認しましょう。
Q. ぶつけた後、見た目は大丈夫そうです。様子見でよいですか?
一度は受診してください。特に子どもの歯は、後から色が変わったり神経が弱ったりすることがあり、経過観察が大切です。早く診ておくほど変化に早く気づけます。
この記事について(E-E-A-T・出典明記)
本記事は、日本外傷歯学会(JADT)の歯の外傷に関するガイドライン、および国際歯科外傷学会(IADT)の推奨をもとに、いわき市中央台の医療法人SDC 酒井歯科医院が作成・監修しました。応急処置の内容は一般的な目安であり、実際の対応は受傷状況やお子さんの年齢・健康状態によって異なります。必ず歯科医院・医療機関にご相談ください。
参考・出典
- 日本外傷歯学会(JADT)「歯の外傷に関するガイドライン」
日本外傷歯学会 ガイドライン - International Association of Dental Traumatology(IADT/国際歯科外傷学会)Dental Trauma Guidelines
執筆・監修歯科医
30分が勝負
まず「牛乳」で保存
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会








