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歯科のトピックス

「歯生え薬」はいつ実現する? 京大発TRG035の最新研究と治験をわかりやすく解説

    「歯生え薬」とは、失った歯や生まれつき無い歯を新しく生やすことを目指して開発が進む、世界初の抗体医薬「TRG035」のことです。京都大学発のスタートアップ「トレジェムバイオファーマ」が開発しており、2026年9月現在、健常な成人での安全性を確かめる第1相を終え、生まれつき永久歯が少ないお子さんを対象とした第2相へと進む段階にあります。実用化の目標は2030年ごろで、最初の対象は「先天性無歯症」という病気です。ただし現在はまだ治験(臨床試験)の段階で、一般の歯科医院で使えるお薬ではなく、当院でも提供していません。この記事では、その仕組みと最新の進み具合、そして歯を失った・生まれつき無い場合に“今できる”選択肢までを、いわき市中央台の歯科医師がわかりやすく解説します。

    「歯生え薬」とは? ― まず結論から

    「歯生え薬」とは、失った歯や生まれつき無い歯を新しく生やすことを目指して開発されている抗体医薬「TRG035(ティーアールジー・ゼロサンゴ)」の通称です。京都大学の研究から生まれたスタートアップ「トレジェムバイオファーマ株式会社」(京都市)が開発を進めています。

    世界でも初めての挑戦で、大きな注目を集めていますが、まだ研究・治験の途中である点はしっかり押さえておきたいところです。

    💡 ここがポイント
    歯生え薬(TRG035)は、①京都大学発のトレジェムバイオファーマが開発中の注射タイプのお薬で、②「USAG-1」というタンパク質の働きを抑えて“眠っている歯の芽”を目覚めさせる仕組み。③2030年ごろの実用化を目標に、現在は治験(臨床試験)が進んでいます。


    歯生え薬の仕組み ― USAG-1と「眠っている歯の芽」

    そもそも、なぜ歯は生え変わらないの?

    人の歯は、乳歯から永久歯へ一度だけ生え変わります。実はそのあとにも、生えてこなかった“歯の芽(歯胚:しはい)”が、あごの骨の中に眠って残っている場合があることが分かってきました。魚やワニのように何度も歯が生え変わる動物もいるなかで、人ではこの「次の歯の芽」の成長にブレーキがかかっている・・・そのブレーキ役こそが、今回のカギとなるタンパク質です。

    TRG035が働きかける相手「USAG-1」

    研究チームは、歯の形成を抑えるタンパク質「USAG-1(ユーサグワン)」に注目しました。USAG-1は、歯を育てる大切な信号(BMPやWntと呼ばれる仕組み)にフタをして、歯の芽が育たないようにしています。過去の研究では、このUSAG-1が働かないマウスで、通常より多くの歯(過剰歯)ができることも確認されています。

    TRG035は、このUSAG-1に結びついてその働きを中和する「抗体医薬」です。ブレーキであるUSAG-1を外すことで、眠っていた歯の芽がふたたび動き出し、新しい歯の形成が促されると期待されています。動物実験では、歯が欠けたモデルで、あごの骨とともに歯が回復することが確かめられています。

    USAG-1を抗体で中和し、眠っている歯の芽(歯胚)を再活性化して歯を再生する仕組みの図解

    開発はどこまで進んでいる? ― 治験の最新状況(2026年9月時点)

    お薬が世の中で使えるようになるには、安全性と効き目を段階的に確かめる「治験(臨床試験)」を経て、国の承認を受ける必要があります。歯生え薬の現在地を整理します。

    第1相 ― まず「安全性」を確認(2024〜2025年)

    2024年9月、京都大学医学部附属病院で最初の治験(医師主導治験)がスタートしました。対象は、奥歯(臼歯)が1本以上欠けている30〜65歳の健康な男性です。この段階の主な目的は、あくまでお薬の安全性を人で確かめること。約1年かけて実施され、体がお薬をどのくらい問題なく受け入れられるか(忍容性)を確認し、適切な投与量の見きわめが行われました。その成果をもとに、次の段階へと進んでいます。

    第2相 ― いよいよ「患者さん」を対象に(2026年〜)

    次の第2相では、実際に歯が生えるかどうか(有効性)と安全性を、患者さんを対象に確かめます。対象となるのは、生まれつき永久歯が6本以上生えてこない「重症型先天性部分無歯症」の2〜12歳のお子さん24人の予定です。2026年夏に向けて準備が進み、同年8月には治験の計画について規制当局(PMDA)の確認が完了しました。世界でも初めての、患者さんを対象とした“歯を生やす薬”の治験として大きな一歩を踏み出す段階にあります。

    実用化はいつ? ― これからのロードマップ

    開発チームが示している大まかな見通しは次のとおりです。あくまで計画であり、結果しだいで前後する可能性があります。

    歯生え薬TRG035の治験ロードマップ(第1相・第2相・第3相から2030年の実用化目標まで)を示した図
    段階時期の目安内容
    第1相2024〜2025年健康な成人で安全性を確認・投与量を決定
    第2a・2b相2026〜2028年患者さんで効き目と安全性を確認
    第3相2027〜2029年人数を増やして効き目と安全性を検証
    承認申請・審査2029年ごろ国へ承認を申請し、専門家が審査
    実用化(目標)2030年ごろ処方薬として医療現場へ

    ⚠️ ご注意ください(大切なお願い)
    歯生え薬(TRG035)は現在も治験(臨床試験)の段階で、一般の歯科医院で使えるお薬ではありません(当院でも提供していません)。また、最初の対象は「先天性無歯症」という生まれつきの病気であり、「今すぐ、誰でも歯が生える薬」ではありません。将来がとても楽しみな研究ですが、過度な期待はせず、確かな情報を一緒に見守っていきましょう。治験への参加を検討したい場合は、開発元や実施医療機関の公式情報をご確認ください。


    最初の対象「先天性無歯症」とは、どんな病気?

    先天性無歯症(せんてんせいむししょう)は、生まれつき歯の数が通常より少ない病気です。一部の歯が生えてこないケースは人口の約1%にみられ、そのうち永久歯が6本以上足りない「重症型」は約0.1%(1000人に1人ほど)とされています。

    生まれつき永久歯が6本以上少ない重症型先天性部分無歯症をやさしく説明するイラスト

    次のようなサインがある場合、先天性無歯症の可能性があります。

    • 15歳になっても乳歯が残っている
    • 乳歯が抜けたのに、永久歯が生えてこない
    • 歯の数が6本以上少ないと言われたことがある

    お子さんの場合、あごの骨の成長途中のためインプラントが使いにくく、成長に合わせて入れ歯を作り替えるなど、負担の大きい対応が長く続きます。噛む・話す・見た目といった生活の質に関わることも多く、根本的な治療法が長く望まれてきました。歯生え薬が、まずこの病気を対象に開発されているのは、こうした切実な背景があるからです。


    歯を失った・生まれつき無い場合の選択肢 ― “今”と“未来”

    「歯生え薬を待てばいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、歯が無い状態を長く放っておくと、周りの歯が動いて噛み合わせが崩れたり、あごの骨がやせたりと、お口全体に影響が広がってしまいます。未来の選択肢に期待しつつ、“今できること”で健康を守ることがとても大切です。

    歯を失った・生まれつき無い場合の今の選択肢(インプラント・入れ歯・矯正)と未来の選択肢(歯生え薬)を比較した図

    “今”できる選択肢

    インプラント

    あごの骨に人工の歯根を埋め込み、自分の歯に近い噛み心地を取り戻す方法。

    入れ歯(義歯)

    取り外し式で、幅広いケースに対応できる方法。保険で作れるものもあります。

    矯正治療

    歯のすき間や噛み合わせを整える方法。生えている歯を上手に活かせる場合があります。

    どの方法が向いているかは、歯の状態やライフスタイルによって変わります。お子さんの先天性無歯症など、成長にかかわるケースでは、早めのご相談が将来の選択肢を広げます。

    「歯が無い・生えてこない」でお悩みの方へ。医療法人SDC 酒井歯科医院(いわき市中央台)では、インプラント・入れ歯・矯正など、一人ひとりに合った“今できる”選択肢を一緒に考えます。「叱られそう」と身構える必要はありません。あなたの歯を長く守るために、まずはご相談ください。

    “未来”の選択肢としての歯生え薬

    歯生え薬は、これらに続く新しい選択肢になる可能性を秘めています。まずは先天性無歯症の患者さんが対象ですが、開発チームは将来的に、虫歯や外傷で歯を失った方への応用も視野に入れているとしています。実現すれば、歯の治療の考え方そのものが変わるかもしれません。


    歯の再生をめぐる、そのほかの最新研究

    「歯を再生する」というテーマでは、ほかにも興味深い研究が進んでいます。当院ブログでもご紹介していますので、合わせてどうぞ。

    歯を丸ごと生やす「歯生え薬」と、歯の一部(象牙質など)を修復・再生する研究とでは、目指すゴールが少し異なります。どれも将来が楽しみな一方、現時点では治験・研究の段階のものが多い点は共通しています。


    まとめ

    歯生え薬(TRG035)は、失った歯や生まれつき無い歯をもう一度生やそうという、世界初の挑戦です。2026年9月時点では、健常な成人での安全性確認(第1相)を終え、患者さんを対象とした第2相へ進む段階。実用化の目標は2030年ごろで、最初の対象は先天性無歯症です。

    とても夢のある研究ですが、いまはまだ治験の途中であり、当院を含む一般の歯科医院で使えるお薬ではありません。だからこそ、未来の選択肢を楽しみに見守りながら、“今できる”治療でお口の健康を守っていくことが大切です。気になることがあれば、いわき市中央台の酒井歯科医院にいつでもご相談ください。


    よくあるご質問(FAQ)

    Q. 歯生え薬は今すぐ使えますか? 酒井歯科医院で受けられますか?

    いいえ。歯生え薬(TRG035)はまだ治験(臨床試験)の段階で、一般の歯科医院では使用できず、当院でも提供していません。実用化の目標は2030年ごろとされています。

    Q. 歯生え薬はいつ実用化されますか?

    開発チームは2030年ごろの実用化を目標に掲げています。ただしこれは治験が計画どおり進んだ場合の見通しで、結果によって前後する可能性があります。

    Q. 大人でも、虫歯や加齢で失った歯に効きますか?

    最初の対象は、生まれつき歯が少ない「先天性無歯症」です。虫歯や外傷などで後から歯を失った方への応用は、将来の目標として研究段階にあり、現時点で使えるものではありません。

    Q. どんな仕組みで歯が生えるのですか?

    歯の形成を抑える「USAG-1」というタンパク質の働きを、抗体医薬で中和します。これによりブレーキが外れ、あごの骨に眠っている“歯の芽”が再び成長すると期待されています。

    Q. 生まれつき歯が少ない「先天性無歯症」とは何ですか?

    生まれつき歯の数が通常より少ない病気です。永久歯が6本以上足りない重症型は人口の約0.1%とされ、噛む・話す・見た目などに影響することがあります。気になるサインがあれば歯科にご相談ください。

    Q. 歯が無いまま放置するとどうなりますか?

    周りの歯が動いて噛み合わせが崩れたり、あごの骨がやせたりと、お口全体に影響が広がることがあります。未来のお薬を待つ間も、“今できる”治療でお口の健康を守ることが大切です。


    この記事について(E-E-A-T・出典明記)

    本記事は、開発元トレジェムバイオファーマ株式会社および実施医療機関(医学研究所北野病院・京都大学医学部附属病院)の公開情報、厚生労働省・AMEDの資料、報道などをもとに、いわき市中央台の医療法人SDC 酒井歯科医院(院長:酒井直樹/東北大学歯学部卒・1993年開院)が作成・監修しました。歯生え薬は研究・治験が進行中の話題です。最新の状況は各公式情報もあわせてご確認ください。

    参考・出典

    執筆・監修歯科医

    歯が「生えてくる」時代へ?

    酒井直樹

    医療法人SDC 酒井歯科医院 理事長 / 院長

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