いわき市で地域の皆さまのお口の健康をサポートしております、酒井歯科医院です。
日々の診療で患者さんとお話ししていると、ご年齢を重ねるにつれて出てくるお口のお悩みについて伺う機会が多くあります。
- 昔に比べて、硬いものが食べにくくなった
- 食事中によくむせたり、食べこぼしたりする
- お茶や汁物で、せき込むことが増えた
- 以前より滑舌が悪くなった気がする
- 口の中が乾きやすい
もし、これらの項目に一つでも心当たりがあれば、それは単に「歳のせい」と片付けてはいけない、体からの大事なサインかもしれません。

そのサインの正体は「オーラルフレイル(お口の虚弱)」。そして、それを放置してしまうと、治療が必要な「口腔機能低下症」という病気に進行し、ひいては全身の健康まで脅かすことになりかねません。
口腔機能低下症の罹患率
実際問題として、罹患率は下記の様に言われていますが、ご安心ください。これらの症状は、早く気づき、正しく対策すれば、その機能を維持・改善することが可能です。

この記事では、歯科医師の立場から、オーラルフレイルや口腔機能低下症の危険性と、ご家庭でできる簡単な対策、そして私たちいわき市の酒井歯科医院でどのようなサポートができるのかを、分かりやすく解説していきます。
見過ごし厳禁! 「オーラルフレイル」が全身の虚弱(フレイル)につながるメカニズム
「オーラルフレイル」という言葉を初めて聞く方も多いかもしれません。これは、お口の機能がささいなレベルで衰え始めた状態を指し、本格的な機能障害の一歩手前の段階です。
このオーラルフレイルを放置すると、以下のような「負のスパイラル」に陥る危険性があります。
- お口の機能が低下する(噛む力・飲み込む力が弱る)
- しっかり噛めず、大きな塊のまま飲み込むようになる
- 食事量が減ったり、柔らかいものばかり選んだりして栄養が偏る
- 低栄養状態になり、全身の筋力や活力が低下する(全身のフレイル)
- 活動量が減り、さらにお腹が空かなくなり、食欲が低下する
- お口の機能がさらに低下する・・・
このように、お口の衰えは、 ドミノ倒しのように全身の衰えへと直結してしまうのです。これが、近年非常に問題視されている「口腔機能低下症」の実態です。
お口の機能低下が招く、生活の質(QOL)の低下とは?
「食べること」は、ただ生きるための栄養補給だけではありません。「食」に関わるあれこれは、すべて人生を豊かにするかけがえのない時間です。
- 「友人や家族と美味しいものを囲んで笑い合う」
- 「旅行先の名物料理に舌鼓を打つ」
- 「お孫さんと一緒におやつを食べる」
しかし、お口の機能が低下すると、
- 「硬いものが食べられないから、みんなと違うメニューを頼む・・・」
- 「むせるのが怖くて、外食の誘いを断ってしまった・・・」
- 「滑舌が悪く、会話が億劫になった・・・」
といったように、日々の楽しみが一つ、また一つと失われてしまいます。これは、生活の質(QOL)の著しい低下に他なりません。 生涯にわたって自分らしい豊かな生活を送るためにも、お口の健康を守ることは非常に重要なのです。

今日から始めよう! 歯科医師が推奨する「お口の簡単トレーニング」
「でも、具体的には何をすればいいの?」だと思います。ご安心ください。特別な器具も必要なく、今日からご自宅で始められる簡単なトレーニングがあります。当院でも積極的に情報提供している代表的なものをいくつかご紹介します。
① あいうべ体操
お口周りの筋肉や舌の力を鍛える、最も基本的で効果的な体操です。
- 「あー」と、口を大きく開きます。
- 「いー」と、口を横に大きく広げます。
- 「うー」と、唇を強く前に突き出します。
- 「べー」と、舌を根元から思い切り前に突き出します。
この「あ・い・う・べ」を1セットとして、1日に30セットを目安に、毎日続けてみましょう。唾液の分泌も促され、口の渇き改善にも繋がります。

② パタカラ体操
飲み込み(嚥下)や発音に関わる筋肉をピンポイントで鍛える体操です。
- 「パ」:唇を閉じる力を鍛え、食べこぼしを防ぎます。
- 「タ」:舌を上あごに付ける力を鍛え、食べ物を押しつぶす動きを助けます。
- 「カ」:喉の奥を閉じる力を鍛え、誤嚥(ごえん)を防ぎます。
- 「ラ」:舌を丸める動きを鍛え、食べ物を喉に送る動きをスムーズにします。
「パパパパ・・・」、「タタタタ・・・」とそれぞれ5回ずつ、可能な限りハッキリと発音してみましょう。

③ 唾液腺マッサージ
唾液の分泌を促し、お口の乾燥を防ぎます。食事の前に行うのも効果的です。
- 耳下腺(じかせん):耳の前あたりを、指全体で優しく円を描くようにマッサージします。
- 顎下腺(がっかせん):顎の骨の内側の柔らかい部分を、指で優しく押します。
- 舌下腺(ぜっかせん):顎の真下から、親指で舌を突き上げるように押します。

「なんとなくの不調」を数値で把握。当院の口腔機能低下症チェック
ご家庭でのトレーニングも大切ですが、「そもそも自分の今の状態はどうなんだろう?」と客観的に知りたくありませんか? なんとなく感じている不調を「見える化」することこそ改善への第一歩です。
いわき市にある当院、酒井歯科医院では、口腔機能低下症をチェックするための専門的な機器を完備しています。
舌圧測定器
風船のようなセンサーを口の中で軽く押すだけで、食べ物をまとめたり、飲み込んだりする「舌の力(舌圧)」を数値で測定できます。「力が弱まっていますね」と言われるより、「基準値が30kPaのところ、〇〇さんの数値は20kPaですね」と具体的な数値で見ることで、ご自身の状態を正確に把握し、改善へのモチベーションにも繋がります。

健口くん
舌口唇運動機能低下検査機器ってやつです。本体内蔵のマイクを患者さんの口元に近づけて開始スイッチを押すだけでオーラルディアドコキネシス(舌や口唇の運動機能を評価する検査)の測定が可能な機械です。

保険適用で受けられる専門的な検査があることをご存知ですか?
「そんな専門的な検査、費用が高いのでは・・・?」とご心配されるかもしれません。 ご安心ください。いくつかの条件を満たし、歯科医師が「口腔機能低下症」の疑いがあると診断した場合、これらの検査やその後の改善指導は健康保険が適用されます。
「ちょっと気になる」という段階でご相談いただくことが早期発見・早期対策に繋がり、結果的にご自身の健康と将来の医療費を守ることにもなるのです。

治療から予防へ。私たちが「情報提供」を大切にする理由
酒井歯科医院が最も大切にしていること。それは、虫歯や歯周病を「治療する」こと以上に、それらの病気や、今回ご説明したオーラルフレイルにならないための「予防」です。
検査で分かった客観的なデータを患者さんと共有し、
- なぜ、今この状態なのか
- 放置すると、将来どんなリスクがあるのか
- あなたに合った改善方法は何か
といった「情報提供」を徹底的に行います。ご自身の状態を正しく理解し、納得していただくこと。それが、私たちが考える最高の予防歯科であり、患者さんの健康寿命を延ばすための最も大切なアプローチだと確信しています。
院長がお答えします!口腔機能低下症に関するQ&A
Q1. 最近、食事でむせるのは年のせいだと諦めていました。歯医者さんで相談できることなのですか?
A1. はい、もちろんです。ぜひご相談ください。「年のせい」と諦めるのは一番もったいないことです。それは飲み込み(嚥下)機能が低下しているサインかもしれません。原因を探り、ご家庭でできる改善トレーニングなど、私たちができるアドバイスはたくさんあります。
Q2. 硬いものが食べられなくなりました。もう手遅れですか?
A2. 手遅れということは決してありません。合わない入れ歯が原因かもしれませんし、噛むための筋力そのものが落ちている可能性もあります。入れ歯の調整と合わせてお口の体操を行うことで、驚くほど改善するケースも多いのです。まずは現状を把握することから始めましょう。
Q3. 口の機能と、認知症や全身の病気は本当に関係があるのでしょうか?
A3. はい、大いに関係があります。よく噛むことは脳への血流を増やし認知症予防に繋がると言われています。また、しっかり栄養が摂れなければ体の抵抗力(免疫力)が落ちさまざまな病気にかかりやすくなります。お口の健康は、まさに「全身の健康の入り口」なのです。
Q4. 検査や訓練は大変ですか?
A4. 舌圧測定などの検査は、痛みもなく数分で終わります。訓練も先ほどご紹介したようにご自宅で無理なく続けられる簡単なものが中心です。大切なのは「まず自覚し、楽しんで始めること」。私たちがそのためのサポートをさせていただきます。
生涯、自分の口でおいしく食事を楽しむために。まずは相談から始めませんか?
今回のこの記事の要点をもう一度確認しましょう。
- 「むせる・食べこぼし」は、オーラルフレイルのサイン
- 放置すると全身の虚弱(フレイル)を招き、健康寿命を縮める危険性がある
- 早期対策(お口の体操など)で、機能の維持・改善は十分可能
- 当院では、保険適用でご自身の状態を「数値」で正確に知ることができる
この記事を読んで、「もしかして・・・」と少しでもご自身のことに感じた方は、ぜひ一度、私たちにご相談ください。「まだ大丈夫」と思っている今こそ予防を始める絶好の機会です。
お口の健康相談は、お電話(TEL: 0246-31-1000)または、24時間いつでも予約可能な当院ホームページのWeb予約からお気軽にご連絡ください。
あなたの「食べる喜び」と「輝く未来の健康」を、いわき市の歯医者として一緒に守っていきたいと考えています。
