こんにちは。いわき市中央台で診療を行っております、医療法人SDC 酒井歯科医院です。
皆さんは、毎日の歯磨きをどのようなタイミングで行っていますか?
「朝と夜は必ず磨いている」、「食後は欠かさないようにしている」──そんな方も多いのではないでしょうか。
正しい歯磨き方法を実践しているつもりでも、虫歯や歯周病が進行してしまうことがあります。
歯磨きにはポイントがある!
実際、診療室で患者さんのお話を伺っていると、
- 「毎日きちんと歯磨きをしているのに、虫歯や歯周病が進んでしまった」
- 「そんなにサボっているつもりはないのに、歯茎が下がってきた気がする」
といった声をよく耳にします。

ここで一つ、大切なことがあります。
歯磨きで本当に重要なのは、“回数”や“時間”だけではありません。
- ✔ 歯ブラシが正しく当たっているか
- ✔ 力をかけ過ぎていないか
- ✔ 歯磨き粉や補助清掃用具を正しく使えているか
こうした要素が揃ってはじめて、歯磨きは「予防」として機能します。今回は、歯科医師の視点から歯周病を防ぐための効果的なブラッシング方法、そして当院が推奨している歯磨き粉(歯磨剤)の使い方について、できるだけ分かりやすく、かつ実践しやすい形で解説していきます。

1. 正しい歯磨き方法の基本|鉛筆持ちで行うスクラビング法
歯周病予防の基本となる磨き方の一つに、「スクラビング法」があります。名前だけ聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、実はとてもシンプルで、今日からすぐに実践できる方法です。
ポイントは、「持ち方」・「力加減」・「角度」この3つだけです。
歯ブラシは「鉛筆を持つように」
まず、歯ブラシの持ち方ですが、つい力が入りやすい “グーで握る持ち方” は避けましょう。
おすすめなのは鉛筆を持つように軽くつまむ持ち方 です。この持ち方にすることで、
- 力の入れすぎを防げる
- 字を書くのと同じで、細かい動きがしやすくなる
- 歯茎へのダメージが減る
といったメリットがあります。

力は「200〜250g」が目安
理想的なブラッシング圧は、約200〜250g と言われています。これは、歯ブラシの毛先がわずかに広がる程度のかなり優しい力です。
実際問題として「しっかり磨かないと汚れが落ちないのでは?」と思われるかもしれませんが、ゴシゴシと強く磨き過ぎると、
- 歯茎が下がる(歯肉退縮)
- 歯の根元が露出する
- 知覚過敏を引き起こす
といったトラブルの原因になることがあります。“強く磨く=よく磨けている”わけではないという点は、ぜひ覚えておいてください。

スクラビング法の具体的な磨き方
磨き方の基本は以下の通りです。
- 歯の表側:歯ブラシを歯に対して 90度 に当てる
- 歯の裏側:歯と歯茎の境目に 45度程度 の角度で当てる
- 動かし方:大きく動かさず、1〜3mmほどの幅で細かく振動させる
1か所につき、20〜30回程度を目安に磨きましょう。この電動歯ブラシそのモノの動きのような細かい“微振動”こそが、歯と歯茎の境目(歯周ポケット)に溜まった汚れを歯茎を傷つけずに落とすためのポイントです。

2. 歯磨き粉は「たっぷり」が正解?フッ素のチカラを最大限に引き出すコツ
ブラッシングの技術と同じくらい重要なのが、歯磨き粉(歯磨剤)の使い方です。その昔は、
- 「歯磨き粉は少なめでいい」
- 「泡立ちすぎると磨けない」
といった話を聞いたことがある方もいるかもしれません。私も歯学部の学生時代にはそんな風に習った記憶があります。当院ではフッ素配合の歯磨き粉を“たっぷり使う”こと をおすすめしています。
フッ素の役割とは?
歯磨き粉に含まれるフッ素には、
- 歯の表面を強くする
- 初期虫歯を修復する(再石灰化)
- 虫歯菌の働きを抑える
といった、非常に重要な働きがあります。この効果を最大限に引き出すためには、お口の中にフッ素がしっかり行き渡ることが大切です。
当院おすすめの歯磨き粉の使い方
① 量はケチらず「たっぷり」
大人の方の場合、歯ブラシのヘッド全体(端から端まで) に乗せる程度、重さにすると 約1〜2g が目安です。歯を磨くというより、「歯全体にフッ素を塗り広げる」というイメージで使ってみてください。
② うがいは「少量の水で1回だけ」
せっかく歯に付着したフッ素も、何度もブクブクうがいをしてしまうと、すぐに洗い流されてしまいます。理想的なのは、
- ペットボトルのキャップ2杯分(約10〜15ml)の水
- 5秒ほど、1回だけ軽くゆすぐ
これだけです。「磨いた後は、少しフッ素が口に残っている状態」が、虫歯予防にとってはベストなのです。正しい磨き方で汚れを落としフッ素の力で歯を守る。このダブルのケアが、将来まで歯を守るための近道です。
3. 歯ブラシだけでは6割しか落ちない!「プラスワン」の道具たち

どれだけ丁寧に歯ブラシで磨いても、実は 全体の60〜80%程度の汚れしか落とせていない と言われています。
では、残りの汚れはどこにあるのでしょうか。
答えは、「歯と歯の間」です。ここを補うために、ぜひ取り入れていただきたいのが次の3つのアイテムです。
歯間ブラシ
歯と歯の隙間が比較的広い方や、ブリッジ(被せ物)の下などには歯間ブラシが適しています。
- 無理に押し込まない
- 隙間のサイズに合ったものを選ぶ
特に、L字型タイプは奥歯にも使いやすくおすすめです。
デンタルフロス(糸ようじ)
歯と歯の隙間が狭い部分には、フロスが効果的です。
- のこぎりを引くようにゆっくり入れる
- 歯の側面に沿わせて上下に動かす
この動きで、歯ブラシでは届かない汚れをしっかり取り除きます。
舌ブラシ
舌の表面につく白い苔のようなもの(舌苔)には、細菌が多く含まれています。口臭の原因になることも少なくありません。専用の舌ブラシを使い、奥から手前へ、優しく撫でるように 清掃しましょう。
これらのアイテムを、1日1回、歯磨きの前に取り入れるだけでも、お口の中の環境は大きく変わってきます。

4. まとめ:毎日のセルフケアとプロのケアで健康な歯を
今回は、歯周病を防ぐためのブラッシング方法と、セルフケアのポイントについてお話ししました。改めて大切なポイントをまとめると、
- 歯ブラシは鉛筆持ちで、優しく細かく動かす
- フッ素入り歯磨剤をたっぷり使い、うがいは少なめに
- 歯間ブラシやフロスを併用して、磨き残しを減らす
これらを意識するだけでも、将来のお口の健康は大きく変わってきます。

とはいえ、ご自身では取りきれない歯石や、磨き癖のチェックなどは、やはりプロのケアが欠かせません。いわき市中央台の酒井歯科医院では、患者さん一人ひとりのお口の状態に合わせて、ご自宅でのケア方法についても丁寧にアドバイスしております。
「自分の磨き方は合っているのかな?」
「このやり方で本当に大丈夫?」
そんな疑問がありましたら、定期検診の際にでも、どうぞお気軽にご相談くださいね。
執筆・監修歯科医
地域で歯を守り続ける歯科医
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会






