スタッフ募集|酒井歯科医院で一緒に働きませんか?

院長メッセージ

フッ素は体に悪い?その誤解を解いて、虫歯に負けない「強い歯」を作るお話

    「フッ素は体に悪い」「毒ではないの?」──そんな不安を感じたことはありませんか。実はその多くは、過去の誤解や情報の混同によるものです。本記事では、歯科医療の現場で使われているフッ素について、医学的根拠(エビデンス:※1)に基づいた安全性と、虫歯予防における本当の役割を分かりやすく解説します。

    「フッ素は体に悪い?」と不安になる前に知ってほしいこと

    こんにちは。いわき市中央台で診療を行っております酒井歯科医院です。
    診療の中で、小さなお子さまを持つ親御さんから「先生、フッ素って体に毒なんですか?」「ネットで危険だと見て、使うのが怖くて……」といったご質問をいただくことがあります。

    大切なお子さまやご自身の体に使うものだからこそ、少しでも「危険」という言葉を目にすれば不安になるのは当然のことです。そこで今回は、その不安を少しでも和らげていただけるよう、医学的に確認されている事実をもとに、フッ素の本当の姿についてお話しします。


    なぜ「フッ素は危険」と言われるようになったのでしょうか?

    まず、多くの方が気にされる「毒性」についてです。結論からお伝えすると、歯科医院や歯みがき粉で使用されているフッ素は、適切に使えば体に害を与えるものではありません。

    では、なぜ「危険」というイメージが広まってしまったのでしょうか。その大きな原因のひとつが、「フッ化ナトリウム(歯科で使われる安全な物質:※2)」と「フッ化水素酸(工業用の強い薬品:※3)」が、名前の似ている別物として混同されてしまったことです。

    なぜフッ素が「毒」と誤解されるのかを、フッ化水素酸とフッ化ナトリウムの違いから解説した図

    1980年代に、これらを取り違えて使用してしまうという大変痛ましい事故が報道され、「フッ素=怖いもの」という印象が強く残りました。これは、車に使うガソリンと、まったく用途の異なる危険な薬品を名前だけで同一視してしまうようなものです。問題は物質そのものではなく、取り違えという人為的なミスにありました。

    1982年の医療事故でフッ化水素酸とフッ化ナトリウムが取り違えられ、フッ素が危険と誤解された経緯を示す図
    安全なガソリンと危険な工業薬品を取り違える例えで、フッ素の誤解を分かりやすく説明した図

    現在、歯科で使用されているフッ素は、濃度や使用方法が厳密に管理されています。通常の使用で中毒を起こすことはなく、歯みがき粉をチューブごと何本も大量に飲み込むような特殊な状況でもない限り、健康被害が起こることはありません。どうぞ安心してください。


    歯を強くする、フッ素の3つの大切な働き

    安全性が確認されているからこそ、私たちはフッ素を虫歯予防に積極的に活用しています。その理由は、フッ素が歯を守るための3つの重要な働きを持っているからです。

    ① 歯の修復を助ける(再石灰化の促進)

    お口の中では、飲食のたびに歯の表面からミネラルが溶け出しています。これを「脱灰(※4)」と呼びます。
    唾液には歯を元に戻そうとする力がありますが、フッ素が存在すると、歯の修復(再石灰化:※5)がより早く、より確実に進みます。イメージとしては、ひび割れた壁を修理する際に、通常よりも強力な接着剤を使って補修するような感覚です。

    ② 歯そのものを強くする(耐酸性の向上)

    フッ素が歯に取り込まれると、歯の表面構造が「フルオロアパタイト※6)」という酸に強い状態に変化します。これは、歯に溶けにくいコーティングを施すような働きで、虫歯になりにくい丈夫な歯を作ってくれます。

    ③ 虫歯菌の働きを弱める(抗菌・抗酵素作用:※7

    フッ素には、虫歯の原因となる細菌の活動を弱めたり、酸を作り出す働きを抑えたりする作用もあります。つまりフッ素は、歯を守る「盾」であると同時に、虫歯菌に対抗するための心強いサポート役でもあるのです。

    フッ素による再石灰化の促進、歯質の強化、虫歯菌の抑制という3つの働きを示したイラスト

    科学的データが示す、フッ素の虫歯予防効果

    医療の世界では、「エビデンス()」が重視されます。
    フッ素の虫歯予防効果は、世界中の研究結果を統合して分析したメタアナリシス※8 複数の研究結果を統合して評価する信頼性の高い分析手法)という信頼性の高い研究手法で確認されています。その結果、フッ素入り歯みがき粉を継続して使用することで、虫歯の発生率が平均20〜30%低下することが分かっています。

    これは「明日は高い確率で雨が降ります」という天気予報と同じように、日常の判断材料として十分に信頼できるデータと言えるでしょう。

    フッ素を使わない場合と使った場合で、歯の防御力がどのように変わるかを比較した図

    今日から始められる、フッ素を活かした虫歯予防

    フッ素を取り入れた虫歯予防は、決して特別なことではありません。

    • フッ素入り歯みがき粉を毎日のケアに取り入れる
    • 歯科医院で定期的に高濃度フッ素塗布(※9)を受ける

    この2つを継続するだけでも、虫歯のリスクは大きく下げることができます。


    まとめ:正しい知識で、安心してフッ素を活用しましょう

    情報があふれる今の時代だからこそ、不安をあおる言葉だけで判断せず、科学的な事実に目を向けることが大切です。フッ素は、正しく使えば安全で、効果が証明された心強い虫歯予防のパートナーです。

    フッ素は毒ではなく、誤解の原因と科学的エビデンスを整理した4つの結論を示す図

    当院では、患者さん一人ひとりのお口の状態や年齢に合わせて、無理のない予防方法をご提案しています。「どの歯みがき粉がいい?」「子どもにはいつから使うの?」など、気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。正しい知識と日々のケアで、一生大切にできる健康な歯を一緒に守っていきましょう。

    ※本記事は、歯科医師が医学的根拠に基づいて執筆しています。

    本文中の用語について

    ※1 医学的根拠(エビデンス):個人の意見や経験ではなく、科学的な研究やデータによって裏付けられた「確かな根拠」のことです。
    ※2 フッ化ナトリウム:歯科医療で使用されるフッ素の一種で、適切な濃度と方法で使えば安全性が確認されています。
    ※3 フッ化水素酸:工業分野で使われる強い薬品で、歯科で使用されるフッ素とはまったく別の物質です。
    ※4 脱灰(だっかい):飲食のたびに歯の表面からミネラルが溶け出し、歯が弱くなっていく現象のことです。
    ※5 再石灰化(さいせっかいか):飲食などで一度溶け出した歯の成分が、唾液やフッ素の働きによって元に戻る現象です。
    ※6 フルオロアパタイト:フッ素が歯に取り込まれることでできる、酸に溶けにくい丈夫な歯の構造です。
    ※7 抗菌・抗酵素作用:虫歯の原因となる細菌の働きや、酸を作り出す反応を弱める作用のことです。
    ※8 メタアナリシス:世界中で行われた複数の研究結果をまとめて分析し、全体としての効果を評価する、信頼性の高い研究手法です。
    ※9 高濃度フッ素塗布:歯科医院で行う、虫歯予防を目的としたフッ素の専門的な塗布処置です。

    執筆・監修歯科医

    科学的根拠で歯を守る歯科医

    酒井直樹

    医療法人SDC 酒井歯科医院 理事長 / 院長