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院長メッセージ

【歯科医が解説】お餅だけじゃない!冬に増える「のど詰め」窒息事故を防ぐポイント

    冬は、お餅だけでなくお肉やパンなどでも「のど詰め(窒息)」事故が増える季節です。特に高齢者では、噛む力や飲み込む力の低下、唾液の減少が重なり、リスクが高まります。
    窒息が起きた場合、救急車の到着を待つだけでは間に合わないこともあり、最初の数分間の対応が命を左右します。
    本記事では、窒息のサイン、背部叩打法や腹部突き上げ法といった応急処置の基本、そして歯科の視点から見た「噛みやすさ」「姿勢」「お口の環境」を整える予防のポイントを、いわき市の酒井歯科医院が分かりやすく解説します。

    冬に増える「のど詰め事故」― 知っておきたい原因と正しい対処法

    こんにちは。いわき市中央台の酒井歯科医院です。
    寒さが本格化し、もうすぐお正月を迎えますね。ご家族で食卓を囲む機会が増える楽しい季節でもありますが、実はこの時期は、1年の中で最も「食べ物をのどに詰まらせる事故」が多い季節でもあります。

    「うちはまだ大丈夫」
    「お餅には気をつけているから問題ない」

    そう思っていても、毎年ニュースで報じられる痛ましい事故を見ると、どこか胸がざわつく方も多いのではないでしょうか。今回は、万が一の時に大切なご家族の命を守るために知っておいていただきたいこと、そして今日からできる予防の工夫について、少し詳しくお話ししたいと思います。

    窒息を発見した際の対応手順を示すイラスト。呼びかけて咳を促し、119番通報、背部叩打法などによる異物除去、反応がなければ胸骨圧迫を行う流れを4段階で説明している。

    1月がピーク、冬に窒息事故が増える・・・

    統計によると、食べ物をのどに詰まらせて亡くなる方は、年間3,500人以上にのぼります。
    特に事故が集中するのが12月から2月で、1月の三が日がピークになることが分かっています。

    窒息事故の危険性を示すインフォグラフィック。気道が完全に塞がると約5分で心停止に至ること、12月から1月に事故が増え80代が最多であること、窒息の代表的なサインを図解している。

    原因は「お餅」だけではありません

    窒息事故というと、「お餅」を思い浮かべる方が多いかもしれません。確かに原因の上位ではありますが、実はそれだけではありません。

    • お肉
    • パン
    • お寿司
    • 芋類や団子

    など、普段何気なく口にしている食べ物でも、事故は起きています。


    年齢とともに高まるリスク

    特に高齢になると、次のような理由からリスクが高まります。

    • 入れ歯や歯の問題で、食べ物を細かく噛み砕けない
    • 唾液の分泌が減り、飲み込みにくくなる
    • 飲み込む筋力や、異物を吐き出す反射(咳をする力)が弱くなる

    また、男女差は大きくありませんが、早食い・大食いの傾向がある男性の事故件数がやや多いというデータもあります。

    高齢になると窒息しやすくなる理由を説明した図解。噛む力の低下、唾液分泌の減少、飲み込む力の低下、咳反射の低下が関係していることを示している。

    命を守る「最初の5分」

    もし、目の前で誰かがのどを詰まらせたら、「とりあえず救急車を呼べば安心」と思われるかもしれません。ですが、救急車の到着時間は年々延びており、2022年の全国平均は約10分とされています。
    一方で、のどが完全に塞がれて呼吸ができなくなると、わずか5分ほどで心臓が停止してしまう可能性があります。

    つまり、救急車を待っているだけでは間に合わないことがあるのです。その場に居合わせた方の最初の対応(応急処置)が、命をつなぐ大きな鍵になります。


    「あれ?」と思ったら・・・窒息のサインと応急処置

    ① サインを見逃さない

    代表的なのが、親指と人差し指でのどを掴むような仕草(チョークサイン)です。ただし、高齢の方の場合、

    • 急に黙り込む
    • 声が出ない
    • 顔色が悪くなる

    など、目立たない変化として現れることも少なくありません。食事中に様子がおかしいと感じたら、すぐに窒息を疑ってください。

    窒息のサインを示すイラスト。のどを押さえる仕草、急に声が出なくなる状態、顔色が悪くなる様子など、早期発見のポイントを図解している。

    ② まずは咳をさせる(※水はNG)

    意識があり反応がある場合は、「咳をして!」と強く促します。
    このとき、水を飲ませるのは非常に危険です。水が異物をさらに奥へ押し込んでしまう恐れがあるため、絶対に避けてください。

    ③ 背中を叩く(背部叩打法)

    咳が出せない、声が出せない場合は、すぐに119番通報をしながら以下の処置を行います。

    • 相手の後ろから支え、うつむかせる
    • 肩甲骨と肩甲骨の間を、手のひらの付け根で強く叩く

    「痛いかな?」と遠慮せず、異物が出るまで力強く叩き続けることが大切です。

    ④ お腹を突き上げる(腹部突き上げ法)

    背部叩打法でも改善しない場合に行います。
    (※妊婦さんや1歳未満の乳児には行いません)

    • 後ろから抱きかかえるようにし
    • おへその少し上(みぞおちの下)で握りこぶしを作り
    • 手前上方へ一気に突き上げます

    もし反応がなくなり、心停止が疑われる場合は、直ちに胸骨圧迫(心臓マッサージ)へ切り替えてください。

    窒息時に異物を取り除く方法を示したイラスト。背中を叩く背部叩打法と、みぞおちを圧迫する腹部突き上げ法の2つの応急処置を図解している。

    【重要】異物が取れた後も、必ず病院へ

    応急処置によって無事に異物が取れ、呼吸が戻ったとしても、自己判断は禁物です。必ず医療機関を受診してください。たとえご本人が「もう大丈夫」と言っていても、体の中では以下のようなことが起きている可能性があります。

    • 無理やり吐き出したことで、のどの奥や食道の粘膜が傷ついている
    • 食べ物の一部や唾液が肺に入り込み、後になって「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」を起こすリスクがある
    • 背部叩打法や腹部突き上げ法の強い衝撃で、内臓や骨に負担がかかっている

    「念のため」の受診が、その後の重大なトラブルを防ぎます。できるだけ速やかに内科や救急外来などで診察を受けてください。

    Q. 家庭用の「掃除機」で吸い出してもいいですか?

    以前は「掃除機に専用ノズルをつけて吸う」といった方法が紹介されることもありましたが、現在は推奨されていません。家庭用の掃除機は口の中に入れることを想定して作られていないため、非常に不衛生です。また、吸引力の調整ができず、のどの奥の粘膜を傷つけたり、肺などの臓器にダメージを与えたりするリスクがあります。

    ここが一番のリスクです

    何より危険なのは、「掃除機を取りに行っている時間」に処置が中断してしまうことです。窒息事故は1分1秒を争います。道具を探すよりも、その場にいる人の手で「背中を叩く」ことを優先してください。

    窒息時の応急手当を分かりやすく示した図解。咳を促す対応、119番通報、背部叩打法、腹部突き上げ法(ハイムリック法)、反応がなくなった場合の胸骨圧迫、やってはいけないNG行為をイラストで説明。

    今日からできる!食事の予防ポイント

    応急処置は大切ですが、何より重要なのは「詰まらせない工夫」です。

    窒息のリスクが高い食べ物と対策を示した一覧表。餅、肉や魚、パン、寿司について、小さく切る、よく噛む、水分と一緒に食べるなどの注意点をまとめている。

    食べ物は「小さく」切る

    目安は、板チョコひとかけら程度。お餅はもちろん、筋のあるお肉や魚も小さく切りましょう。パンやお寿司も、普段より一口を小さくする意識が大切です。

    のどを潤してから食べる

    乾いたのどは、詰まりの原因になります。食事前にお茶や汁物でのどを湿らせ、食事中も水分を取りながら食べましょう。

    姿勢を正す

    これは意外と見落とされがちですが、とても重要です。

    • テレビを見上げながら
    • 椅子にもたれかかり、顎が上がった状態

    こうした姿勢では、飲み込みにくくなります。(天井を向いて唾を飲み込むと苦しいですよね)
    深く椅子に座り、顎を軽く引いた姿勢が基本です。

    窒息予防のための食事の工夫を示す横長イラスト。食材を小さく切る、水分を摂る、よく噛む、正しい姿勢で食べる、話さずに食事をすることを分かりやすく示している。
    お餅による窒息事故を防ぐための予防ポイントをまとめた図解。餅を小さく切る、食前に喉を潤す、ゆっくりよく噛む、食事中に見守るといった高齢者に重要な対策をイラストで解説。

    当院からのメッセージ

    窒息事故の現場では、周囲の方が何らかの応急処置を行った場合、後遺症なく助かる確率が約2倍になるという報告もあります。「怖い」、「自分にできるか不安」・・・そう感じるのは自然なことです。
    それでも、勇気を出して背中を叩く行動が、大切なご家族の命を守ることにつながります。

    また、お口の環境を整えることは、窒息予防の第一歩でもあります。

    こうした変化を感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。美味しい食事を、いつまでも安全に、安心して楽しんでいただけるよう私たち酒井歯科医院が全力でサポートいたします。

    ※ 本記事の内容は、消防庁「救急・救助の現況」、厚生労働省統計、 日本救急医学会・日本赤十字社の一次救命処置ガイドライン等を参考に、 歯科医師の臨床経験をもとに構成しています。

    執筆・監修歯科医

    お口の健康から
    命と暮らしを守る

    酒井直樹

    医療法人SDC 酒井歯科医院 理事長 / 院長