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院長のコラム

スポーツドリンクの砂糖は角砂糖何個分?甘い飲み物と虫歯の関係

    「健康のためにスポーツドリンクを飲ませています」――そのひと言が、お子さんの歯を崩壊させていた。これは決して珍しい話ではありません。500mlのペットボトル1本に、角砂糖10〜20個分の砂糖が含まれていることをご存じでしょうか。本記事では、甘い飲み物が虫歯・酸蝕症を招くメカニズムと、歯を守るための正しい水分補給を、いわき市の歯科医師が詳しく解説します。

    なぜスポーツドリンクで虫歯が増えるのか

    私たち歯科医師は、年に数回、歯科医師会から任命を受けて地域の保健所で一歳半・三歳児の歯科検診を行うことがあります。そこで私は、生涯忘れることができないある3歳の男の子に出会いました。

    3歳児といえば、乳歯が生え揃ったばかりでほとんどのお子さんはまだ虫歯が比較的少ない時期です。検診も「気になるところはありませんか?」、「この調子で頑張りましょうね」といった会話で終わるのが通例でした。

    お子さんを膝に乗せたお母さんと歯科医師がカウンセリングをしているイラスト
    歯科検診で使用するミラーなどの器具パックと紙コップ|3歳児歯科検診のイメージ

    ですが、その男の子のお口の中を見た瞬間、私は言葉を失いました。20本あるはずの乳歯が、すべてボロボロに溶け崩れていたのです。

    傍らのお母さんに原因に心当たりがないか訊ねても「分からない」とおっしゃるばかり。そこで私は、おそるおそる飲み物について伺ってみました。
    「毎日、甘いお菓子を食べていたとしても、ここまでにはなりません。飲み物はいかがですか?」
    すると、お母さんは、にこやかにこう答えられたのです。
    「はい! 健康に配慮して、食事の時には毎日スポーツドリンクを飲ませています!」

    その一言で全ての合点がいきました。良かれと思って選んだその習慣が皮肉にもお子さんの歯を砂糖漬けにし、この令和の時代に「虫歯の洪水」を引き起こしてしまっていたのです。

    悪そうな表情の虫歯菌キャラクターのイラスト|口の中で増殖するミュータンス菌のイメージ

    この記事では、その男の子のような悲しいトラブルが二度と起きないように、知っていれば必ず防げる「見えない砂糖」の正体と、今日からできる具体的な対策についてお話しします。
    「知らなかった」では済まされない、歯を守るための大切な知識です。


    その一本に、角砂糖何個分? 驚きの事実

    普段何気なく飲んでいる飲み物に、どれだけの砂糖が含まれているかご存じでしょうか。
    「まさか、そんなに?」と驚かれる方がほとんどです。
    3gのスティックシュガーに換算すると、その実態が一目瞭然です。

    飲料(500mlあたり)砂糖の量スティックシュガー換算
    コカ・コーラ57g19本
    ポカリスエット31g10本
    カルピスウォーター66g22本
    午後の紅茶 ミルクティー38g13本

    ※ 製品により成分は異なりますので目安としてお考えください。

    これらはあくまで一例ですが、多くのペットボトル飲料がたった1本でWHOの推奨量を超えてしまうという事実は共通しています。しかも「1本飲みきった場合」の話。だらだら飲みをもっとすれば、その影響はさらに深刻になります。

    コーラ500mlには215kcal・角砂糖15個分の砂糖が含まれることを示したイラスト
    スポーツドリンク500mlには130kcal・角砂糖9個分の砂糖が含まれることを示したイラスト
    カルピスウォーター500mlには230kcal・角砂糖18個分の砂糖が含まれることを示したイラスト
    ミルクティー500mlには140kcal・角砂糖9個分の砂糖が含まれることを示したイラスト
    オレンジジュース500mlには220kcal・角砂糖12個分の砂糖が含まれることを示したイラスト
    スカッシュサイダー500mlには210kcal・角砂糖15個分の砂糖が含まれることを示したイラスト
    カフェオレ缶コーヒー190mlには174kcal・角砂糖12個分の砂糖が含まれることを示したイラスト
    乳酸菌飲料1本には50kcal・角砂糖2個分の砂糖が含まれることを示したイラスト

    WHO(世界保健機関)の推奨量は?

    WHOが推奨する1日あたりの砂糖の摂取量の目安は、摂取総カロリーの5%未満・・・量にして約25g(スティックシュガー約8本分)です。
    つまり、多くのペットボトル飲料はたった一本で1日の推奨量を軽々と超えてしまうのです。


    「カロリーゼロ」、「糖質オフ」の表示にもご注意を

    「カロリーゼロなら歯に安心」と思っていませんか? 実はこの表示、法律上の”抜け穴”があります。健康志向の高まりとともに増えたゼロ系・オフ系飲料ですが、「ゼロ=全く含まれていない」ではないことを知っている方は多くありません。健康増進法で定められた表示基準は、以下のようになっています。

    健康増進法で定められた、少し紛らわしい表示基準は、以下のようになっています。

    健康増進法による栄養成分表示の基準一覧

    表示基準(飲料100mlあたり)
    カロリーゼロ5kcal未満
    カロリーオフ(低い・控えめ)20kcal以下
    糖質ゼロ(無糖)糖質0.5g未満
    糖質オフ(低い・控えめ)糖質2.5g以下

    つまり、「カロリーゼロ」と表示されていても、500mlのペットボトルであれば最大で24kcalは含まれている可能性があり、「カロリーオフ」飲料であれば100kcal近くになることもあります。原材料や甘味料の種類によっては、スティックシュガー数本分に相当する糖分が含まれている場合もあります。
    なお、人工甘味料を使用している製品では虫歯のリスクは比較的低いと考えられますが、酸性度が高い飲料では歯そのものを溶かす「酸蝕症」のリスクが残る点にも注意が必要です。

    飲み物を選ぶ際は、表示の「文字」だけでなく、その裏側にある数字の意味まで確認する習慣をつけることが歯と健康を守る第一歩になります。


    甘い飲み物が固形お菓子より危険な理由

    「お菓子よりジュースの方がまだマシ」と思っていませんか? 歯科的にはです。クッキーやチョコレートのような固形物は、咀嚼によって唾液が分泌され、比較的早く洗い流されます。一方、液体の飲み物はお口の中に広範囲・長時間とどまり続け、砂糖が歯の隙間や溝の奥まで浸透してしまいます。

    「だらだら飲み」が生む、最悪の環境

    特に危険なのが、スポーツ中・勉強中・デスクワーク中にペットボトルを手元に置き、少しずつ時間をかけて飲み続ける「だらだら飲み」です。
    これをすると、お口の中が常に酸性状態に保たれ、歯の表面のミネラルが溶け出す「脱灰(だっかい)」が延々と続きます。本来、唾液には歯を修復する「再石灰化(さいせっかいか)」の働きがありますが、だらだら飲みではその回復時間が全く確保できません。これが虫歯リスクを極限まで高める最大の原因です。

    酸そのものが歯を溶かす「酸蝕症(さんしょくしょう)」

    さらに、コーラなどの炭酸飲料や多くの清涼飲料水に含まれる「酸」は、虫歯菌とは関係なく、歯そのものを直接溶かしてしまう「酸蝕症」の原因にもなります。

    歯の表面は一般的にpH5.5以下になると溶け始めますが、コーラのpHは約2.2〜2.7前後、スポーツドリンクでもpH3〜4台のものが多く、いずれも基準をはるかに下回る強酸性です。 つまり、これらの飲料を頻繁に・だらだらと飲むことは、「虫歯菌の酸」と「飲料自体の酸」のダブルパンチで歯を攻撃し続けることを意味します。虫歯だけでなく酸蝕症のリスクも同時に高まることを、ぜひ覚えておいてください。


    お子さんとご自身の歯を守るための正しい水分補給

    では、私たちは普段、何を飲めば良いのでしょうか。答えは非常にシンプルです。ただ、「わかってはいるけれど実践が難しい」という声もよく伺います。そこで、無理なく続けられる具体的な考え方をお伝えします。

    普段の水分補給の基本は「水」か「お茶」

    日常生活の水分補給には、糖分も酸も含まない「水」または「麦茶」などのカフェインレスのお茶が最も理想的です。麦茶はカフェインフリーでミネラルも含まれており、お子さんから高齢の方まで安心して飲めるおすすめの選択肢です。

    ミネラルウォーター500mlは0kcal・角砂糖0個分で虫歯リスクのない理想的な水分補給であることを示したイラスト
    緑茶500mlは0kcal・角砂糖0個分で虫歯リスクのない理想的な水分補給であることを示したイラスト

    甘い飲み物は「特別な日のおやつ」と考える

    ジュースや清涼飲料水を完全に生活から排除する必要はありません。誕生日などの「特別な日のおやつ」として時間を決めて楽しむ、というルール作りが大切です。そして、飲んだ後は、水やお茶でお口をゆすいだり、歯磨きをしたりする習慣をつけましょう。

    スポーツドリンクとの付き合い方

    大量に汗をかく激しい運動時など、スポーツドリンクが有効な場面も確かにあります。上手な付き合い方のポイントは3つです。

    ① 練習中は常にだらだら飲まず、休憩時間にまとめて飲む
    ② 練習後は水やお茶に切り替える
    ③ 飲んだ後は水でお口をゆすぐ

    この3つを意識するだけで、スポーツドリンクによる歯へのダメージを大幅に減らすことができます。


    よくあるご質問|甘い飲み物と虫歯について

    Q1. スポーツドリンクは虫歯になりますか?

    はい。糖分を多く含むため、頻繁に飲むと虫歯のリスクが高まります。特に「だらだら飲み」は危険です。

    Q2. 角砂糖何個分くらい入っているのですか?

    製品によって異なりますが、500mlのスポーツドリンクで約10本分、コーラなどの炭酸飲料では約19本分、カルピスウォーターでは約22本分のスティックシュガーに相当する砂糖が含まれているものもあります。いずれもWHOが推奨する1日の摂取量(約8本分)を大きく超えています。

    Q3. ゼロカロリー飲料なら虫歯になりませんか?

    砂糖を含まない場合は虫歯リスクは低くなりますが、酸性度が高い飲料では「酸蝕症」のリスクがあります。

    Q4. 子どもにスポーツドリンクは飲ませてもよいですか?

    激しい運動時など必要な場面もありますが、日常の水分補給は水やお茶が基本です。


    「知ること」が予防の第一歩です

    冒頭の男の子のお母さんは、決して特別な方ではありません。ただ、知らなかっただけなのです。
    今度、コンビニやスーパーで飲み物を選ぶ時には裏面の栄養成分表示をちょっとだけ見てみてください。「こんなものにまで!」と驚くほど私たちの身近な飲み物に砂糖は潜んでいます。
    何気ない毎日の習慣の中に潜むリスクを「知ること」――それが、ご自身とご家族の歯を生涯にわたって守るための最も大切な第一歩です。ご不明な点があれば、いつでも酒井歯科医院にご相談ください。

    酒井歯科医院では、むし歯・歯周病の治療だけでなく、 定期的なプロケアによる予防歯科を診療の中心に位置づけています。 当院が対応している治療の全体像は診療案内ページで、 医院の診療方針や院内環境については酒井歯科医院トップページからご覧いただけます。

    執筆・監修歯科医

    「知ること」から始まる
    本当の虫歯予防

    酒井直樹

    医療法人SDC 酒井歯科医院 理事長 / 院長