唾液には、溶けかけた歯を自然に修復する「再石灰化(さいせっかいか)」という働きがあります。虫歯は突然できるのではなく、「脱灰(歯が溶ける)」と「再石灰化(歯が修復される)」のバランスが崩れ、脱灰が優位になることで進行します。本記事では、唾液の再石灰化の仕組みと、その力を最大限に引き出す生活習慣について、いわき市の歯科医師がわかりやすく解説します。
唾液の再石灰化とは?毎日起きている「修復」の仕組み
「再石灰化(さいせっかいか)」とは、唾液の働きによってごく初期の虫歯を自然に修復するプロセスのことです。テレビCMなどで耳にしたことがある方も多いかもしれません。
あなたのお口の中では今この瞬間も、歯が溶かされる「脱灰(だっかい)」と、歯が修復される「再石灰化」の静かな綱引きが行われています。
この記事では、唾液が持つ再石灰化の力と、その力を日々の生活で最大限に引き出す方法について詳しく解説します。

歯が溶ける「脱灰」と歯を治す「再石灰化」
この綱引きのバランスを理解することが、虫歯予防の第一歩です。
① 攻撃フェーズ:「脱灰」
私たちが食事やおやつを口にすると、お口の中の虫歯菌が、食べ物に含まれる糖分をエサにして「酸」を作り出します。この酸によって、お口の中が酸性に傾き、歯の表面のエナメル質から大切なカルシウムやリンといったミネラル成分が溶け出していきます。これが「脱灰」です。
② 防御・修復フェーズ:「再石灰化」
食事が終わると、私たちの最強の味方である「唾液」が活躍を始めます。唾液は、酸性に傾いたお口の中を中和し、さらに唾液自体に含まれる豊富なカルシウムイオンやリン酸イオンを、溶け出した歯の表面に補給してくれます。これにより、ごく初期の虫歯(穴が開く手前の状態)は自然に修復されます。これが「再石灰化」です。
この「脱灰」と「再石灰化」のバランスが崩れ脱灰の時間が長くなってしまうと、修復が追いつかずに歯に穴が開き治療が必要な「虫歯」へと進行してしまうのです。
あなたの唾液パワーを最大限に引き出す3つの生活習慣
では、どうすれば、この綱引きで「再石灰化」を優位に保てるのでしょうか。答えは、日々の生活習慣の中にあります。
①「だらだら食い・だらだら飲み」をやめる
これが最も重要なポイントです。食後にお口の中が酸性から中性に戻り、再石灰化が始まるまでには唾液の力で約30〜60分かかります。
アメをなめ続けたり、糖分を含む飲み物を少しずつ飲み続けたりすると、お口の中が延々と酸性のままになり、再石灰化の時間がまったく確保できません。「食事の時間はしっかり決める」「間食は時間を区切って摂る」というメリハリが、唾液が働く時間を守る鍵です。


②「よく噛む」ことを意識する
唾液は、噛めば噛むほどたくさん分泌されます。柔らかいものばかりでなく、野菜やきのこや海藻など、少し歯ごたえのある食材を食事に取り入れ「噛む」回数を増やすことを意識しましょう。これにより、唾液の分泌が促進されお口の自浄作用が高まります。

③ 寝る前の飲食は、絶対に避ける
睡眠中は唾液の分泌量が大幅に減少します。唾液による酸の中和も再石灰化もほとんど期待できず、お口が最も無防備になる時間帯です。
就寝前に糖分を摂ると、脱灰が一方的に進みやすくなります。夜の歯磨き後は何も口にしないことを徹底することが、虫歯リスクを大きく下げる習慣です。
唾液の分泌が慢性的に少ない方は、オーラルフレイル(お口の機能低下)のリスクも高まります。唾液の働きが気になる方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
フッ素×唾液で再石灰化をさらに高める方法
唾液の再石灰化をさらに強力にサポートするのがフッ素です。フッ素には、溶け出したミネラルが歯に戻る「再石灰化」を促進する働きと、歯質そのものを酸に溶けにくくする効果があります。
毎日のセルフケアでフッ素配合歯磨き粉を使うことに加え、歯科医院での定期的な高濃度フッ素塗布を組み合わせることで、お口の防御力はさらに高まります。
唾液の力を信じ、それを最大限に活かす生活習慣を身につけること。それが、歯を削る・抜くといった治療からご自身を守るための最善策です。
酒井歯科医院の予防歯科では、定期的なフッ素塗布やクリーニングを行っています。唾液の力とフッ素の効果を組み合わせた虫歯予防を、ぜひご活用ください。
よくあるご質問|唾液と再石灰化について
Q1. 初期虫歯は本当に自然に治るのですか?
ごく初期の段階(歯の表面が白く濁る程度)であれば、唾液の再石灰化作用によって修復される可能性があります。ただし、穴が開いてしまった虫歯は自然には治らないため、早期の診断が重要です。
Q2. 再石灰化にはどのくらい時間がかかりますか?
食後にお口の中が酸性から中性に戻るまでには、唾液の力で約30〜60分かかるとされています。この間に唾液がカルシウムやリンを補給し、歯の表面を修復します。
Q3. 唾液が少ないと虫歯になりやすいのですか?
はい。唾液には酸を中和し、歯を修復する働きがあります。唾液の分泌量が少ないと再石灰化が十分に行われず、虫歯リスクが高まります。
Q4. フッ素はなぜ再石灰化を助けるのですか?
フッ素は歯の表面に取り込まれ、酸に溶けにくい強い歯質を作ります。また、溶け出したミネラルが歯に戻る「再石灰化」を促進する働きもあります。
Q5. なぜ「だらだら食い」は虫歯になりやすいのですか?
食べ続けたり甘い飲み物を少しずつ飲み続けたりすると、お口の中が長時間酸性のままになります。その結果、再石灰化の時間が確保できず、脱灰が進みやすくなります。
酒井歯科医院の診療方針や診療内容については、酒井歯科医院トップページからご覧いただけます。
執筆・監修歯科医
あなたの唾液が
最高の虫歯予防薬です
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会




