最強の守護者・・・「唾液」
こんにちは、いわき市中央台の酒井歯科医院です。
皆さんは「唾液の免疫力」について意識されたことはありますか? 唾液というと“口の中の潤い”や“消化を助けるもの”というイメージが強いかもしれません。しかし近年の研究では、唾液は全身の免疫機能とも深く結びついた重要な器官であることが分かってきました。
今回は、唾液の役割、唾液IgAの働き、口腔ケアによる免疫力の向上、さらに腸内環境とのつながりまで、最新の予防医学の視点で分かりやすく解説します。
- 唾液が担う本来の役割と免疫機能
- 口と腸が密接につながる理由
- 毎日の口腔ケアで免疫力を高める方法
なお、本記事内のイラストは生成AIで作成しており、一部文字化けがございますがご容赦いただければ幸いです。
1. 唾液は全身を守る「第一の防衛ライン」
風邪やウイルスが身体に侵入する際、最初の接触点となるのが「口」です。その最前線で働くのが、唾液に含まれる唾液IgA(免疫グロブリンA)という抗体です。
唾液IgAはウイルスや細菌に結びつき、それらを無力化したり体内に侵入しにくくする働きを持ちます。まさに“口のパトロール隊”といえる存在であり、唾液の免疫力を語るうえで欠かせない主役です。
さらに、唾液に含まれるアミラーゼなどの酵素は、食物の消化だけでなく血糖値調整や代謝の初期段階にも関係することが分かってきました。
このように唾液は、お口だけでなく全身の健康と直結する免疫システムの一部として働いています。
2. 唾液の質は口腔ケアで決まる
唾液の免疫力は、日々の口腔ケアによって大きく左右されます。
お口の中が不潔な状態が続くと、歯周病菌などの悪玉菌が増殖し、唾液IgAが十分に働けなくなってしまいます。
すると悪玉菌が腸に届き腸内環境が乱れ、さらに腸のバランスが崩れることで唾液中のIgAも減ってしまうという“負のサイクル”が生まれます。
1. お口が不潔 → 唾液IgAが低下
2. 悪玉菌が腸へ → 腸内環境が乱れる
3. 腸の乱れ → 唾液の免疫力がさらに低下
つまり、口腔ケアによる免疫力の維持は、虫歯や歯周病の予防だけでなく、全身の健康維持にも欠かせない大切な要素です。

3. 最新研究:免疫力は腸からも高められる
最近注目されているのが「腸唾液相関」という考え方です。
腸内環境を整えると、腸で作られた物質が唾液腺に作用し唾液IgAの量を増やすという新しい研究結果が報告されています。
分かりやすくまとめると、
🔸 食物繊維を摂る
🔸 腸内細菌が短鎖脂肪酸をつくる
🔸 その成分が唾液腺に働きかける
🔸 唾液IgAが増え、唾液の免疫力が高まる
つまり、食物繊維や発酵食品を意識して摂る「腸活」は、腸の健康だけでなく、お口の免疫力を強化する重要な習慣ともいえるのです。

4. 唾液の免疫力を最大限に引き出す2つの戦略
唾液の働きを十分に発揮させるためには、「量」と「質」の両方を高める必要があります。
① 唾液量を増やす:よく噛むこと
食べ物をよく噛むことは、唾液腺を刺激し唾液の分泌を増やします。柔らかいものばかりを食べていると唾液量は減ってしまいがちです。
噛む習慣は、唾液の免疫力を守るもっとも手軽で効果的な方法です。
② 唾液の質を上げる:正しい口腔ケア
歯磨き後の唾液では、ウイルスに結びつきやすい「働きの良い唾液IgA」が増えることが研究で示されています。
これは、口腔内が清潔になることで悪玉菌が減り、免疫機能が本来の力を発揮しやすくなるためです。
正しい歯磨きやフロス習慣、定期検診が、唾液の質の向上に大きく貢献します。
まとめ:唾液と腸を整えることは全身の健康への投資
現代の予防歯科は、歯や歯ぐきを守るだけではなく、唾液の免疫力や腸内環境といった全身の健康に目を向ける時代へと進化しています。
🔸 正しい口腔ケアで唾液の免疫力を高める
🔸 腸活で腸内環境を整え、全身の免疫力を底上げする

唾液と腸の健康は、互いに連動しながら全身の免疫力を支えています。日々の小さな習慣が身体の大きな健康につながりますので、ぜひ今日から取り入れてみてください。
唾液の免疫力と腸内環境の健康を整えることは、全身の予防医学の土台となり、毎日の健康づくりに大きく役立ちます。


執筆・監修歯科医
お口から全身を守る歯科医
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会






