はじめに:失った「一本の柱」が全てを崩壊させる前に
私たちの「噛み合わせ」は、例えるなら家を支える『建物の柱』です。上下28本の歯が互いに支え合い、力を分散させ合うことで私たちの健康な生活は成り立っています。
もし、その柱が、一本、また一本と失われてしまったら・・・?
その先に待っている未来を、こちらの動画でまずご覧ください。
動画が示している未来予測。歯が失われたままでいると、残された柱(歯)は傾き、向かいの天井(向かいの歯)は落ち込んできて、やがて建物(お口全体)はゆっくりとではあるけれど確実に崩壊へと向かっていきます。建物と違い、一度崩壊してしまったお口の健康は二度と完全に取り戻すことはできません。
だからこそ、私たちは、手遅れになる前に失われた柱を「再建」するための3つの選択肢(インプラント・ブリッジ・入れ歯)について真剣に考える必要があるのです。このページは、そのためのあなたにとっての「最善」を見つけ出すためのガイドブックです。
【比較早見表】3つの治療法の違いが一目でわかる
インプラント | ブリッジ | 入れ歯 | |
---|---|---|---|
見た目 | ★★★★★ (自然で美しい) | ★★★★☆ (比較的自然) | ★★☆☆☆ (金属のバネが見えることも) |
噛む力 | ★★★★★ (自分の歯のように噛める) | ★★★★☆ (比較的よく噛める) | ★★☆☆☆ (硬いものは苦手) |
周りの歯への影響 | ◎ (全く削らない) | △ (健康な歯を削る必要あり) | △ (バネをかける歯に負担) |
治療期間 | 長い | 短い | 比較的短い |
費用 | 高額(自費) | 保険適用あり | 最も安価(保険適用あり) |
手術 | 必要 | 不要 | 不要 |
それぞれの治療法をもっと詳しく
✅ ① インプラント ―「第二の永久歯」と呼ばれる最先端の治療
歯を失った部分の顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、それを土台に独立した歯を再建する方法です。


⭕メリット
- 周りの健康な歯を一切削らない。
- 自分の歯とほとんど変わらない感覚で力強く噛むことができる。
- 見た目が非常に自然で美しい。
❌デメリット
- 外科手術が必要になる。
- 治療期間が比較的長い。
- 健康保険が適用されない自費診療である。
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✅ ② ブリッジ ― 固定式で比較的違和感の少ない治療
失った歯の両隣の健康な歯を土台として削り、そこに橋(ブリッジ)をかけるように連結した被せ物を装着する方法です。


⭕メリット
- 固定式なので入れ歯のような違和感が少ない。
- 保険適用で作製できる場合が多い。
- 比較的、短期間で治療が完了する。
❌デメリット
- 支えとするために両隣の健康な歯を大きく削らなければならない。(最大のデメリットです)
- 支えとなる歯に大きな負担がかかり、将来的にその歯の寿命を縮めてしまう可能性がある。
- 歯ぐきとの間に食べ物が詰まりやすく清掃が難しい。(歯間ブラシは必須です)
✅ ③ 入れ歯(義歯)― 最も歴史があり身体に優しい治療
取り外し式の装置で、残っている歯に金属のバネ(クラスプ)などをかけて固定する方法です。


⭕メリット
- 健康な歯をほとんど削る必要がない。
- 外科手術が不要で身体への負担が最も少ない。
- 保険適用で作製でき最も費用を抑えられる。
❌デメリット
- 硬いものや粘着性のあるものが噛みにくいことがある。
- 慣れるまで、違和感や発音のしにくさを感じることがある。
- 部分入れ歯の場合、金属のバネが見えてしまうことがある。
- 毎日の取り外しての清掃が必要。
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最終的には、あなたとの対話で決定します
それぞれの治療法の特徴をご理解いただけましたでしょうか。
私たちは、この3つの選択肢のメリットとデメリットの全てを丁寧にご説明した上で、最終的にどの道を選ぶのかを患者さんご自身にご納得の上で決めていただくことを何よりも大切にしています。
あなたにとっての「最善」を一緒に見つけましょう。
執筆・監修歯科医
全ての選択肢を知り
最良の決断をするために
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会