「前歯の被せ物、保険だと金属の裏打ちが見えて来ちゃう」・・・その常識、もう古いかもしれません
「前歯を治療したいけれど、保険の被せ物は裏側が金属で見栄えが悪いんですよね・・・?」
カウンセリングの際に、患者さんから今でも時々このようなご質問をいただきます。
ご安心ください。実は、その常識は、もう4年以上も前のものなのです。
2020年9月の保険制度改定により、これまで自費診療でしか選択できなかったような、金属を一切使わない真っ白な「CAD/CAM冠(キャドキャムかん)」が、前歯にも保険で適用できるようになりました。

この記事では、もはや保険治療の新しいスタンダードとなりつつある、この「前歯のCAD/CAM冠」について、そのメリット・デメリットから従来の被せ物との違いまで、詳しく解説していきます。
なぜ変わった?「銀歯」から「白い歯」への大きな流れ
なぜ、国は保険で「白い歯」の適用をここまで広げてきたのでしょうか。その背景には、これまでもこのブログ記事で詳しく解説しましたが、従来の「銀歯」や「金属の裏打ちのある被せ物」に使われてきた金銀パラジウム合金(金パラ)という金属の異常な価格高騰があります。
このままでは、保険診療の根幹が揺らぎかねない・・・そうした事態を受け、国は金属に代わる新しい技術である「CAD/CAM」を保険診療で積極的に推進する方針に転換したのです。
前歯のCAD/CAM冠、その実力は?― メリットとデメリット
CAD/CAM冠は、ハイブリッドセラミック(セラミックとプラスチックの混合材料)のブロックをコンピューターで設計し、機械で精密に削り出して作製される先進の歯科材料です。前歯に使う上で多くのメリットがあります。
メリット ✅
① 自然な白さと透明感
金属を使わないため、ご自身の歯に近い、自然で美しい見た目を実現できます。
② 金属アレルギーの心配がない
金属アレルギーをお持ちの方、あるいは将来のリスクを避けたい方でも、安心して使用できます。
③ 歯ぐきの変色(ブラックマージン)が起きない
従来の金属裏打ちの被せ物で起こりがちだった、歯と歯ぐきの境目が黒ずんで見える「ブラックマージン」の心配がありません。
④ 精密な適合性
デジタル技術で作製するため、歯との適合が非常に精密です。これにより、被せ物と歯の隙間から虫歯菌が侵入する「二次虫歯」のリスクを低減できます。
デメリットと注意点 ⚠️
① 色調の再現性
自費診療で使われるより高品質な「オールセラミッククラウン」に比べると、色調の細かなグラデーションや複雑な透明感の再現には限界があります。
② 強度と耐久性
ハイブリッドセラミックは、非常に強い力がかかる奥歯など、症例の条件によっては適用できない場合があります。
③ 保険適用の条件
前歯に関してではありませんが、奥歯のCAD/CAM冠を保険で適用するには「歯科用金属を原因とする金属アレルギーの診断書がある」などの厚生労働省が定めた特定の条件を満たす必要が以前はありました。
こういった諸条件は、従来がそうであったように、厚労省の考え方ひとつで将来的に変更される可能性も否定出来ません。その都度、歯科医院のスタッフへの確認が必要になります。

当院のCAD/CAM冠治療へのこだわり
当院では、この前歯へのCAD/CAM冠が保険適用になるずっと以前の平成25年(2013年)から、いち早く「CEREC(セレック)」システムを導入し、10年以上にわたってデジタル歯科治療の技術と経験を積み重ねてきました。

長年の経験に基づき、患者さん一人ひとりのお口の状態を正確に診断し、「あなたの場合は、保険のCAD/CAM冠が最適です」であったり「こちらのケースでは、耐久性を考えて自費のオールセラミック(ジルコニア等)の方が長保ちしますよ」といったように、全ての選択肢のメリット・デメリットを分かりやすくご説明することをお約束します。
「前歯だから、見た目が気になる・・・でも費用は抑えたい」
そんな方は、ぜひ一度、保険適用のCAD/CAM冠について私たち医院スタッフにご相談ください。あなたにとっての最善の選択を一緒に見つけましょう。
執筆・監修歯科医
美しさと機能性
どちらも大切に
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会