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歯科のトピックス

抜けた乳歯は“宝物”? 未来の医療を拓く「歯髄幹細胞」の可能性

はじめに:その抜けた乳歯、捨ててしまうのはもったいないかもしれません

お子さんの乳歯が初めて抜けた日。それは、成長の証である喜ばしい一日ですよね。抜けた乳歯を、記念にケースに入れて大切に保管されている方も多いのではないでしょうか。

もし、その小さな乳歯に、将来、お子さん自身やご家族の病気や怪我を治すための驚くべき力が秘められているとしたら・・・?

近年、再生医療の分野で大きな注目を集めているのが、乳歯の神経(歯髄)に含まれる「歯髄幹細胞(しずいかんさいぼう)」です。この記事では、かつては捨てられるだけだった乳歯が、未来の健康を守る“宝物”に変わるかもしれないという夢のようなお話を、科学的な視点から分かりやすく解説します。

歯髄幹細胞①

「幹細胞」とは?― 体のあらゆる部分になれる万能細胞

まず、「幹細胞」について簡単にご説明します。私たちの体は約37兆個もの細胞からできていますが、その全ての細胞の“もと”になるのが幹細胞です。

幹細胞には、大きく2つの能力があります。

自己複製能力

自分と全く同じ能力を持った細胞に分裂(コピー)できる能力。

分化能力

骨や、神経・筋肉・皮膚など、体の様々な組織の細胞に変化(分化)できる能力。

この能力を利用して、失われたり機能が低下したりした組織や臓器を元通りに再生させることを目指すのが「再生医療」です。

なぜ「乳歯」の幹細胞が特別なのか?

幹細胞は、骨髄や脂肪など体の様々な場所から採取できますが、乳歯の神経から見つかった「歯髄幹細胞」は、他の幹細胞にはない非常に優れた特徴を持っています。

歯髄幹細胞④

非常に高い増殖能力

骨髄の幹細胞などに比べて、増殖するスピードが速く活発であることが分かっています。

倫理的な問題が少ない

これまで捨てられていた乳歯を利用するため、倫理的なハードルが非常に低いのが特徴です。

採取が簡単で、体に負担がない

考えてみたら、自然に抜け落ちる乳歯から採取するため、お子さんの体に一切の負担をかけません。


歯髄幹細胞が拓く未来の歯科医療

この優れた歯髄幹細胞を使って、歯科医療の分野では、これまで不可能だった様々な治療を実現するための研究が、世界中で進められています。

① 歯周病で失われた顎の骨を再生する

重度の歯周病で歯を支える骨が溶けてしまった場合、これまでは歯を抜くしかありませんでした。しかし、歯髄幹細胞を移植することで、失われた骨を再生させご自身の歯を守れる可能性が期待されています。

歯周病は次第に歯を支える骨が溶ける病気

② インプラント治療の土台となる骨を作る

歯を失った後、顎の骨が痩せてしまいインプラント治療が困難なケースでも、歯髄幹細胞を使って土台となる骨を再生させることで安全なインプラント治療が可能になる、という研究が進んでいます。

③ 歯の神経(歯髄)そのものを再生する

深い虫歯で神経を抜かなければならなかった歯も、歯髄幹細胞を使うことで、神経や血管を再生させ歯の寿命を延ばせるようになるかもしれません。

むし歯の進行

これらの技術は、まだ一部が臨床研究の段階であり全ての歯科医院で受けられる標準的な治療ではありません。ですが、10年後、20年後には、当たり前の治療になっている可能性を秘めているのです。


未来への備え「歯のバンク(さい帯血バンクの歯科版)」

では、この貴重な歯髄幹細胞を未来のためにどうやって保管すれば良いのでしょうか。そのためのサービスが「歯のバンク」です。

歯髄幹細胞⑤

これは、出産時にさい帯血を保管するサービスがあるように、お子さんの抜けた乳歯を専門の機関に送り、そこから歯髄幹細胞だけを抽出・培養し液体窒素の中で半永久的に凍結保存してくれる・・・というものです。

そうすることで、将来、お子さん自身や場合によっては血縁関係のあるご家族が、再生医療を必要とする時が来た際に、保管しておいたご自身の細胞を拒絶反応の心配なく利用できるのです。


お子さんの「今」しか残せない未来への贈り物

歯髄幹細胞が採取できるのは、生え変わりで抜けた乳歯や矯正治療で抜いた親知らずなど限られた期間だけです。それは、お子さんの「今」この瞬間にしか残すことのできない、未来への最高の贈り物・・・そして「お守り」になるかもしれません。

歯髄幹細胞③

もちろん、費用もかかりますし必ず将来使うと決まったわけではありません。しかし、再生医療という未来の選択肢を、お子さんのために一つでも多く残しておきたい・・・そうお考えの方は、ぜひ一度、こうした「歯のバンク」について調べてみてはいかがでしょうか。

私たち歯科医院も、そうした未来の医療に関する情報提供を通じてお子さんたちの健やかな未来をサポートしていきたいと考えています。ただし、2024年時点では下記の点を御理解いただきます。

執筆・監修歯科医

お子さんの未来を守る
新しい選択肢

酒井直樹

医療法人SDC 酒井歯科医院 理事長 / 院長

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