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院長のコラム

角砂糖21個分!? スポーツドリンクに潜む「見えない砂糖」の罠

私たち歯科医師は、年に数回、歯科医師会から任命を受けて地域の保健所で一歳半や三歳児の歯科検診を行うことがあります。そこで私は、生涯忘れることができない一人の3歳の男の子に出会いました。

3歳児といえば、乳歯が生え揃ったばかりでほとんどのお子さんはまだ虫歯とは無縁です。検診も「気になるところはありませんか?」、「この調子で頑張りましょうね」といった会話で終わるのが通例でした。

お子さんの歯科検診
歯科検診のセットと紙コップ

しかし、その男の子のお口の中を見て私は・・・思わず絶句しました。20本あるはずの乳歯が、全てボロボロに溶け、崩壊していたのです。

傍らのお母さんに原因に心当たりがないか訊ねても「分からない」とおっしゃるばかり。そこで私は、おそるおそる飲み物について伺ってみました。
「毎日、甘いお菓子を食べていたとしても、ここまでにはなりません。飲み物はいかがですか?」
すると、お母さんは、にこやかにこう答えられたのです。
「はい! 健康に配慮して、食事の時には毎日スポーツドリンクを飲ませています!」

その一言で全ての合点がいきました。良かれと思って選んだその習慣が皮肉にもお子さんの歯を砂糖漬けにし、この令和の時代に「むし歯の洪水」を引き起こしてしまっていたのです。

虫歯菌のイメージ

この記事では、その男の子のような悲しいトラブルが二度と起きないように、知っていれば必ず防げる「見えない砂糖」の本当の怖さについて詳しくお話しさせていただきます。


普段何気なく飲んでいる飲み物に、一体どれくらいの砂糖が含まれているのでしょうか。
3gのスティックシュガー(または角砂糖)に換算して見てみましょう。

飲料(500mlあたり)砂糖の量スティックシュガー換算
コカ・コーラ57g約19本分
ポカリスエット31g約10本分
カルピスウォーター66g約22本分
午後の紅茶 ミルクティー38g約13本分

※ 製品により成分は異なりますので目安としてお考えください。

ドリンク⑤
ドリンク②
甘い飲み物
甘い飲料
オレンジジュース
炭酸飲料
甘い缶コーヒー
乳酸菌飲料

WHO(世界保健機関)の推奨量は?

WHOが推奨する1日あたりの砂糖の摂取量の目安は、摂取総カロリーの5%未満・・・量にして約25g(スティックシュガー約8本分)です。
つまり、多くのペットボトル飲料はたった一本で1日の推奨量を軽々と超えてしまうのです。


最近では、健康志向の高まりから「カロリーゼロ」や「糖質オフ」を謳った飲料も多く販売されています。ですが、これらの表示は必ずしも「カロリーや糖質が全く含まれていない」という意味ではないことをご存じでしょうか。

健康増進法で定められた、少し紛らわしい表示基準は、以下のようになっています。

栄養成分表示の基準

表示基準(飲料100mlあたり)
カロリーゼロ5kcal未満
カロリーオフ(低い・控えめ)20kcal以下
糖質ゼロ(無糖)糖質0.5g未満
糖質オフ(低い・控えめ)糖質2.5g以下

つまり、「カロリーゼロ」と表示されていても、500mlのペットボトルであれば最大で24kcalは含まれている可能性があり、「カロリーオフ」飲料であれば、100kcal近くになることもあります。これは、原材料や甘味料の種類によっては、スティックシュガー数本分に相当する場合もあります。

虫歯予防や健康管理のためには、こうした表示の裏側にある事実も知っておくことが大切です。


クッキーやチョコレートのような固形のお菓子と比べて、液体である飲み物は、お口の中に広範囲、かつ長時間とどまり続けるという非常に厄介な特徴があります。

「だらだら飲み」が生む、最悪の環境

特に危険なのが、スポーツ中や勉強中、デスクワーク中に、ペットボトル飲料を少しずつ時間をかけて飲み続ける「だらだら飲み」です。
これをしてしまうと、お口の中が常に酸性の状態に保たれ、歯の表面のミネラルが溶け出す「脱灰(だっかい)」が延々と続いてしまいます。唾液が歯を修復する「再石灰化(さいせっかいか)」の時間が全くないため虫歯のリスクが極限まで高まるのです。

酸そのものが歯を溶かす「酸蝕症(さんしょくしょう)」

さらに、コーラなどの炭酸飲料や多くの清涼飲料水に含まれる「酸」は、虫歯菌とは関係なく、歯そのものを直接溶かしてしまう「酸蝕症」の原因にもなります。


では、私たちは普段、何を飲めば良いのでしょうか。答えは非常にシンプルです。

普段の水分補給の基本は「水」か「お茶」

日常生活における水分補給の基本は、糖分を含まない「水」または「麦茶」などのカフェインレスのお茶が最も理想的です。

ドリンク③
ドリンク④

甘い飲み物は「特別な日のおやつ」と考える

ジュースや清涼飲料水を完全に生活から排除する必要はありません。誕生日などの「特別な日のおやつ」として時間を決めて楽しむ、というルール作りが大切です。そして、飲んだ後は、水やお茶でお口をゆすいだり、歯磨きをしたりする習慣をつけましょう。

スポーツドリンクとの付き合い方

大量に汗をかく激しい運動時など、スポーツドリンクが有効な場面も確かにあります。その場合も、「練習中、常にだらだら飲む」のではなく、「休憩時間に飲む」、「練習が終わったら、水やお茶に切り替える」といったメリハリをつけることが、歯を守る上で非常に重要になります。


冒頭の男の子のお母さんは、決して特別な方ではありません。ただ、知らなかっただけなのです。
今度、コンビニやスーパーで飲み物を買う際に少しだけ裏側の成分表示を気にして見てみてください。「こんなものにまで!」と驚くほど多くの食品に砂糖は含まれています。
何気ない日常の習慣に潜むリスクを「知ること」・・・・それが、ご自身とご家族の歯を生涯にわたって守るための最も大切な第一歩です。

執筆・監修歯科医

「知ること」から始まる
本当のむし歯予防

酒井直樹

医療法人SDC 酒井歯科医院 理事長 / 院長

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