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矯正

前歯で麺が噛み切れない? もしかしたら「開咬(かいこう)」かもしれません

「食事の時、前歯でうまく麺が噛み切れない」、「話していると、少し空気が漏れる気がする」・・・ もし、このようなお悩みがあれば、それは「開咬(かいこう)」という歯並びが原因かもしれません。

この記事では、いわき市中央台の酒井歯科医院が、開咬の原因から日常生活への影響、そして具体的な治療法まで、専門家の視点で詳しく解説します。あなたやご家族のお悩みを解決する、最初の一歩になれば幸いです。

開咬①

まず、「開咬とは何か」というお話から始めましょう。 簡単に言いますと、奥歯でしっかり「イー」と噛み合わせたときに、上下の前歯の間に隙間ができてしまい、歯が噛み合わない状態のことを指します。通常、前歯は下の歯に少し覆いかぶさるように噛み合いますが、開咬の場合はそこに垂直的な隙間が生まれてしまうのです。

開咬②

この症状は、多くの場合、前歯に見られるため「前歯部開咬(ぜんしぶかいこう)」と呼ばれます。一般的に「開咬」と言うと、この前歯が噛み合わない状態を指すことがほとんどです。稀に奥歯が噛み合わない「側方開咬」というケースもありますが、今回は特にご相談の多い前歯の開咬に焦点を当てて解説します。


「どうしてこんな歯並びになってしまったのだろう?」と疑問に思われる方も少なくないでしょう。開咬の原因は一つではなく、いくつかの要因が絡み合って生じることが多いのが特徴です。

① お子さんに見られる「お口の癖」が招く開咬

開咬の最も大きな原因として挙げられるのが、子どもの頃の無意識の癖、「口腔習癖(こうくうしゅうへき)」です。私のこれまでの診療経験から見ても、この習癖がきっかけとなっているケースは非常に多く見受けられます。

指しゃぶり(吸指癖)

3歳を過ぎても指しゃぶりが続くと、指が上の前歯を前に押し出し、下の前歯を内側に倒してしまいます。この力が日常的に加わることで、上下の歯の間に隙間ができてしまいます。

指しゃぶり(側貌)

舌を突き出す癖(舌突出癖)

食べ物を飲み込む時や、話している時に、無意識に舌を前歯の間に押し出す癖です。舌は非常に力の強い筋肉ですので、この癖が続くと歯が舌に押されて動いてしまい、開咬の原因となります。
考えてみますと、マウスピース矯正がまさにそうですが、プラスチックのマウスピース(アライナー)で長期に押したぐらいで歯が動くことを考えると想像が付こうかと思います。

舌突出癖

唇を噛む・吸う癖(咬唇癖・吸唇癖)

下唇を噛む癖があると、上の前歯は外側に、下の前歯は内側に傾きやすくなり、これも開咬を引き起こす一因です。

爪を噛むクセ
下唇を噛むクセ
唇を噛むクセ
下唇だけを噛む癖

こうした癖は、歯が本来生えるべき場所への成長を妨げ、顎の骨の形にまで影響を及ぼすことがあります。もし、お子さんにこのような癖が見られる場合は、それが将来の歯並びに繋がる可能性を考え、一度、私たちのような専門家にご相談いただくことをお勧めします。

② 成長期に関わる「骨格的な要因」

顎の骨の成長パターンが原因で生じる「骨格性開咬」もあります。これは、遺伝的な要因が関わっていることも多く、ご家族に似たような顔立ちやかみ合わせの方がいる場合に考えられます。
特に、下顎の骨が標準よりも下方向や後方へ回転するように成長してしまうと、結果として前歯が噛み合わない骨格になってしまうのです。

子どもの頃の癖が改善されないまま成長期を迎えると、この骨格的な問題へと発展し、治療がより複雑になることもあります。癖の問題と骨格の問題は、全く別物というわけではなく相互に影響し合っているのです。

③ その他の原因

非常に稀なケースですが、成人してから開咬が進行する場合、顎の関節の骨が溶けてしまう「進行性下顎頭吸収(しんこうせいかがくとうきゅうしゅう)」という病気の可能性も考えられます。また、過去に受けた歯科治療が合っていなかったり、重度の歯周病で歯が動いてしまったりといったことも後天的な開咬の原因となり得ます。


開咬は、単に「前歯が噛み合わない」というだけでなく、お口の機能や見た目、ひいては全身の健康にも様々な影響を及ぼす可能性があります。

① お食事が楽しめない(咀嚼機能の低下)

前歯は、食べ物を「噛み切る」という大切な役割を担っています。開咬の方は、この機能がうまく働きません。例えば、お蕎麦やラーメンのような麺類、サンドイッチやおにぎりの海苔、ほうれん草のおひたしなどを前歯で噛み切れず、舌で押し切ったり、奥歯で無理に引きちぎったりすることになります。これでは、食事を心から楽しむことが難しくなってしまいますでしょう。

② 言葉が不明瞭になる(発音障害)

歯の隙間から空気が漏れるため、「サ行」や「タ行」が発音しにくくなることがあります。ご本人は気づいていなくても、相手からは「少し舌足らずな話し方だな」という印象を持たれてしまうこともあり、コミュニケーションに自信が持てなくなる方もいらっしゃいます。

③ 口元の見た目に影響する(審美性の問題)

無意識の状態だと唇が閉じにくく、いわゆる「お口ポカン」の状態になりがちです。口呼吸の原因にもなり、お口の中が乾燥しやすくなります。無理に唇を閉じようとすると顎の先に梅干しのようなシワができてしまい、不自然な表情に見えてしまうこともあります。

お口ポカン

④ 奥歯や顎への過剰な負担

前歯が機能しない分、すべての噛む力を奥歯だけで支えなければなりません。これは、本来であれば前歯・犬歯・奥歯とチームプレーで分散すべき負担を奥歯だけで背負っているようなものです。結果として、奥歯がすり減ったり、欠けたり、割れてしまったりするリスクが高まります。また、顎の関節(顎関節)にも過剰な負担がかかり、顎関節症を引き起こす原因ともなり得ます。

⑤ 治療が複雑になる可能性

開咬の治療は、単に歯を動かすだけでなく、原因となった癖や骨格の問題にもアプローチする必要があるため、他の不正咬合に比べて治療計画が複雑になることがあります。また、原因がそのままなので治療後に元の状態に戻ろうとする「後戻り」のリスクも考慮しなくてはなりません。


「もう治らないのでは…」と諦める必要は全くありません。開咬は、原因や年齢に応じた適切なアプローチを行うことで、改善が期待できます。

アプローチ 1:口腔習癖の改善(MFTなど)

指しゃぶりや舌の癖が主な原因である場合、まずはその癖を取り除くためのトレーニング(口腔筋機能療法:MFT)を行います。これは、舌や唇の正しい位置、正しい飲み込み方などを再学習するリハビリのようなものです。必要に応じて舌の動きを制限するシンプルな矯正装置を使うこともあります。特に成長期のお子さんの場合、これだけで劇的に改善することもあります。

アプローチ 2:歯を動かす矯正治療

歯並び自体の乱れが大きい場合は、本格的な矯正治療が必要です。当院でも行っている透明で目立ちにくいマウスピース型矯正装置など、患者さんの状態やご希望に応じた方法で歯を正しい位置に動かし、しっかりと噛み合う歯並びを再構築します。癖の改善と並行して行うことも重要です。

アプローチ 3:外科的矯正治療

骨格的な問題が非常に大きい大人の患者さんの場合は、矯正治療だけでは限界があることもあります。その際は、顎の骨の大きさや位置を整える外科手術を矯正治療と組み合わせて行います。これは大学病院などの専門機関と連携して進める治療法で、特定の診断基準を満たせば健康保険が適用される場合もあるようです。


開咬は、見た目の問題だけでなく、お口全体の健康、ひいては食事や会話といった日々の生活の質(QOL)にも深く関わる問題です。もし、この記事を読んで「もしかして自分も・・・」、「うちの子どもがそうかもしれない」と思われたら、どうか一人で悩まず、お気軽に私たち歯科医師にご相談ください。

特に、お子さんの場合は、早い段階で癖に気づき、対応することで、将来の本格的な矯正治療や外科手術を避けられる可能性が高まります。

酒井歯科医院では、お一人おひとりの患者さんと真摯に向き合い、その方に合った最良の治療計画を一緒に考えていくことを何よりも大切にしています。どんな些細なことでも構いません。あなたのお悩みをお聞かせいただければ幸いです。


執筆・監修歯科医

積み重ねた経験で
最適な治療を提案

酒井直樹

医療法人SDC 酒井歯科医院 理事長 / 院長

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