こんにちは。いわき市中央台の酒井歯科医院です。
「歯医者は痛くなってから行くところ」──そんな時代は、少しずつ変わりつつあります。
予防歯科の時代がやって来た!
いまは、むし歯や歯周病をつくらないために通う“予防歯科の時代”になって来ました。
実はこの流れは歯科界だけでなく、厚生労働省(国)の考え方にも表れています。7〜8年ほど前からだったか、診療報酬の制度が「歯周病を悪化させないこと」を重視した内容へと大きくシフトしてきているのです。
それほど、予防歯科の大切さが見直されているということです。

予防歯科が注目される理由
むし歯や歯周病は、「気づいたときにはけっこう進んでいる」病気です。 放っておくと治療が大がかりになり、通院回数も費用もどうしても増えてしまいます。
その一方で、予防歯科には次のようなメリットがあります。
- 痛みが出る前に対処できる
- 治療回数・治療費を大きく抑えられる
- お口の中だけでなく、全身の健康状態の向上にもつながる
「悪くなってから治す」のではなく、「悪くならないように守る」。これが、これからのスタンダードになっていくと我々歯科医達は考えています。予防処置だけなら痛みも伴いませんし、患者さんと術者双方にとってもメリットは計り知れないようにも思います。
厚労省も方向転換:歯周病の重症化予防へ
ここ数年、厚生労働省は明確に、「歯周病を悪化させないための継続管理」に力を入れています。
たとえば、
- 定期的な歯周病の検査
- メインテナンス(定期管理)への評価
- リスクの高い患者さんの長期的なフォロー
といった形で、制度や保険点数の組み立てが行われています。つまり、国としても「予防に投資するほど、健康寿命が延びる」と捉え始めているということです。

メタボリックドミノは“お口の中”から始まる
生活習慣病がドミノ倒しのように次々と起こってくる様子を、「メタボリックドミノ」と呼びます。

このドミノの一番上流にあるのが、実は
- 歯周病
- 咬みにくさ
- 口腔機能の低下
といったお口のトラブルだと言われています。お口の状態が悪くなると、
- しっかり咬めず、食生活・栄養バランスが乱れる
- 歯ぐきの炎症が続き、炎症物質が血管を通って全身へ広がる
- 口の機能低下が、筋力や体力の低下にもつながる
といった具合に、まさにドミノ倒しのように健康が崩れて行くと言われています。ですから、お口の健康を守ることは生活習慣病の予防にもつながると考えられているのです。
歯周病と全身疾患の深い関係(エビデンスに基づいて)
歯周病は「お口の病気」という枠を超え、全身の病気との関わりが数多く報告されています。代表的なものとして、次のような疾患があります。
- 糖尿病(歯周病と互いに悪影響を及ぼし合う関係)
- 心筋梗塞・脳梗塞
- 誤嚥性肺炎
- 早産・低体重児出産
- アルツハイマー型認知症 など
特に糖尿病とは強い関係があり、歯周病治療によってHbA1c(血糖コントロールの指標)が改善したという報告もあります。全身との関連性に関しては、当院のこちらのページでも解説しています。
歯周病全般についてのページもモチロンのことながらご用意していますので、よろしければそちらも合わせてご覧ください。
予防歯科の主役は「歯科衛生士」
予防歯科を支えているのは、国家資格を持つ歯科衛生士さんです。歯科衛生士さんは、
- 歯石除去(スケーリング・SRP)
- フッ素塗布
- お一人おひとりに合わせたブラッシング指導
- 生活習慣へのアドバイス
などを通じて、患者さんのお口の健康を長く守る専門家です。「ちょっとクリーニングしてもらうだけ」と思われる方もいらっしゃいますが、実際には全身の健康にも関わる医療行為を担ってくれています。


全国の“約4割”の歯科医院では、予防歯科を担う歯科衛生士の体制が十分とは言えません
厚生労働省の公開資料によると、歯科診療所の中には、歯科衛生士の常勤体制が確保できていない医院が全国で約4割に上るとされています。さらに関連資料では、「非常勤歯科衛生士のみで、常勤換算すると0人」という診療所が60.4%存在するという報告もあります。
こうした背景には、
- 地域による人材不足
- 若い歯科衛生士が都市部に集中する傾向
- 結婚・出産後の復職が難しい労働環境
など、さまざまな社会的要因が影響していると考えられます。
言い換えると、「予防歯科をしっかり提供したくても、人材面から十分な体制を整えることが難しい医院も少なくない」という現実があります。

そんな中、当院には常勤歯科衛生士が7名在籍しています
そのような状況のなか、当院には常勤の歯科衛生士が7名在籍してくれています。これは、全国的に見ても決して当たり前ではありません。当院では、
- 働きやすい職場づくり
- 学び続けられる研修・勉強会
- チーム医療を大切にする風土
を大切にしており、その結果として多くの歯科衛生士が長く勤務してくれています。この体制があるからこそ、質の高い予防処置やメインテナンスを安定してご提供できると感じています。
当院の予防プログラム:3〜4ヶ月ごとのメインテナンス
健康なお口を守るためには、保険診療のルールに準じた3〜4ヶ月に一度のメインテナンスが理想的だと言われています。その理由としては、
- 歯周病菌が再び増えやすくなる目安が約3ヶ月前後であること
- バイオフィルム(細菌のかたまり)は日々の歯みがきだけでは完全に落としきれないこと
- 生活習慣やみがき方のクセは、定期的なチェックでこまめに修正した方が良いこと
などが挙げられます。当院では、担当の歯科衛生士が患者さんのお口の状態や生活背景をふまえて、「無理なく続けられるベストな間隔」を一緒にご相談しながら決めていきます。

まとめ:お口を守ることは、健康寿命を守ること
予防歯科が注目されるいま、「お口の健康は全身の健康につながる」という考え方は、医療の世界では常識になりつつあります。あらためて、ポイントをまとめます。
- 歯周病は、糖尿病や心疾患など全身の病気と深く関係している
- 厚労省も「歯周病の重症化予防」を重視した制度へと方向転換している
- 予防歯科の主役は、国家資格を持つ歯科衛生士
- 全国には歯科衛生士が不在の歯科医院も少なくない
- 当院には常勤の歯科衛生士が7名在籍し、チームで予防に取り組んでいる
- 3〜4ヶ月ごとのメインテナンスが、健康なお口と健康寿命を守る近道
これからも当院は、患者さんの「生涯、自分の歯でおいしく食べられる人生」をお手伝いできるよう、スタッフ一同で取り組んでまいります。「最近、歯医者に行っていないな…」という方も、ぜひ一度、かかりつけの歯科医院へ検診・クリーニングにお出掛けなさってみて下さい。

執筆・監修歯科医
お口の健康から全身の未来へ
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会






