はじめに:忙しい毎日の中で、「歯の本数」を意識したことはありますか?
仕事、子育て、そして自分自身の将来のこと…。
40代・50代という「働き世代」は、人生で最も忙しい時期かもしれません。そんな毎日の中で、ご自身の「歯の本数」を意識されたことはありますか?
「奥歯が1本くらい無くても・・・特に困っていないから」
そう思われている方もいらっしゃるかもしれません。ですが、最近になり「働き世代の残っている歯の本数が日々の栄養摂取に深刻な影響を与えている」という衝撃的な研究結果が発表されました。

この記事では、その研究内容を紐解きながら、今、あなたの口の中にある歯を守ることが、いかにあなたの未来の健康を守るための最高の「投資」であるかについてお話しします。
なぜ、歯の本数が減ると栄養が偏ってしまうのか?
研究によると、残っている歯が20本未満の人は、28本全てが揃っている人に比べて野菜やビタミン・食物繊維といった健康に不可欠な栄養素の摂取量が著しく低下することが分かりました。
その理由は非常にシンプルです。
歯が少なくなると、私たちは無意識のうちに硬いものや繊維質なものを避けるようになるからです。
例えば、シャキシャキとした食感の「ごぼう」や「レンコン」、リンゴを丸かじりするといった行為は、奥歯がなければ非常に困難になります。その結果、私たちはあまり噛まなくても食べられるパンや、麺類、柔らかく煮込んだものといった炭水化物が中心の偏った食生活に陥りがちになるのです。
栄養の偏りが招く「未来のリスク」
この働き世代における栄養摂取の偏りは、私たちの10年後・20年後の健康に深刻なリスクをもたらします。
✅ ① 生活習慣病のリスク増大
ビタミンや食物繊維といった健康維持に不可欠な栄養素の不足は、肥満・糖尿病・高血圧といった様々な生活習慣病の直接的な引き金となります。
✅ ② 全身の筋力の低下(サルコペニア)
お肉などを避けることでタンパク質の摂取量が減ると全身の筋力が低下します。これは、将来的に転倒や寝たきりのリスクを高める「サルコペニア」という非常に深刻な状態に繋がります。
✅ ③ 免疫力の低下
言うまでもなく・・・栄養バランスの乱れは体の免疫力を低下させ風邪をひきやすくなったり様々な病気にかかりやすくなったりする直接的な原因となります。
つまり、40代・50代の「歯の数」があなたの「健康寿命」を大きく左右すると言っても過言ではないのです。

今ある歯を、1本でも多く守り抜くために。
では、私たちはどうすれば良いのでしょうか。答えは非常にシンプルです。
「今、あなたの口の中にある大切な歯を、これ以上一本たりとも失わないこと」
これに尽きます。歯を失う二大原因は、ご存じの通り「虫歯」と「歯周病」です。そして、その両方からあなたの歯を守るための最も確実で最も効果的な方法・・・それが、私たちかかりつけ歯科医と二人三脚で行う「予防歯科」なのです。
あなたが今日からできること
🔶 ① 歯科医院でのプロフェッショナルケア
どれだけ丁寧に歯磨きをしても、ご自身では絶対に落としきれないネバネバした細菌の塊(バイオフィルム)が必ず歯に付着しています。私たち専門家が、定期的な検診とプロによるクリーニング(PMTC)でこの根本原因を徹底的に除去します。
🔶 ② ご自宅での毎日のセルフケア
そして、何よりも重要なのが毎日のご自宅でのケアです。特に歯ブラシだけでは届かない「歯と歯の間」の汚れをデンタルフロスや歯間ブラシを使って毎日リセットする習慣を身につけること。この両輪があって初めて、あなたの歯は本当の意味で守られるのです。
たったこれだけです。この地道だけれど非常に重要な習慣こそが、あなたの歯やあなたの未来の健康を守るための最高の特効薬なのです。
「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という「8020運動」があります。その達成の鍵は80歳になってから慌てることではありません。今、この瞬間から始まるのです。

執筆・監修歯科医
お口の健康は
未来の身体への投資
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会