こんにちは。いわき市中央台の酒井歯科医院です。
ここ最近、「歯科 麻酔 不足」とか「歯科用麻酔薬 品薄」といった検索キーワードでの当院ホームページの過去記事にアクセスが増えています。ニュースなどで医薬品不足が取り上げられることもあり、「治療はちゃんと受けられるの?」であったり「麻酔は足りているの?」と不安に感じている方もいらっしゃるのかもしれません。
この記事では、歯科用局所麻酔薬が不足すると言われている背景と、2025年11月現在の状況、そして当院の対応と患者さんへの影響についてできるだけ分かりやすくお話ししたいと思います。
歯科用麻酔薬不足はいつから問題になっているの?
歯科用の局所麻酔薬の供給不安が全国的に話題となったのは、実は今回が初めてではありません。きっかけの一つは2021年前後の新型コロナウイルスの流行でした。
ワクチン製造が本格化した当時、麻酔薬の製造工程で使われる無菌フィルターや一部原材料が、ワクチン製造の現場に優先的に回されました。その結果、歯科用麻酔薬の生産量が落ち込み、メーカーが出荷調整(出荷制限)を行わざるを得ない状況になりました。

その後、一時的には落ち着きを見せたものの、医薬品全体の供給不安やメーカー側の生産体制の見直しなども重なり、2023〜2025年にかけて周期的に品薄が繰り返されているのが実情です。
なぜ2025年になっても麻酔薬不足が話題になるの?
2025年現在も医療用医薬品の供給不安は続いています。歯科用麻酔薬が影響を受けやすい理由はいくつか考えられます。
医薬品全体の「薬不足」問題
近年、製薬メーカーの生産停止・回収・人員不足・原料の高騰などが重なり、全国の医療機関で「薬が届きにくい」状況が続いています。鎮痛薬・抗生剤・咳止めなどさまざまな分野で不足が起きており、歯科用麻酔薬もその波を受けていると言えます。
限られたメーカーによる生産体制
歯科用の局所麻酔薬は、供給しているメーカーが多くありません。そのため、どこか1社の生産ラインにトラブルが起こると現実問題として全国の在庫に大きな影響が出てしまいます。設備の点検・更新や品質管理のための一時的な製造停止があると、その間はどうしても供給が細くなってしまうのです。
「念のため」の発注が品薄を加速させることも
「麻酔が不足するらしい」という情報が流れると、各歯科医院は患者さんへの影響を避けるために余裕を持った注文を出します。私自身も実際にそうしちゃってます。
これは、安全のための行動でもありますが、その結果として一時的な“買いだめ”状態が起こり流通在庫が一気に減ってしまうこともあります。
こうした要因が重なり、地域や時期によっては「納品まで時間がかかる」であったり「希望数が入荷しない」といった状況が生じてしまうのです。

麻酔薬が足りないと・・・治療はどうなる?
患者さんにとって一番気になるのはここだと思います。
- 「麻酔がないと、痛いまま削られちゃうの?」
- 「抜歯や根の治療が延期になることはあるの?」
結論からお伝えすると、当院では現時点で通常通りの診療が行えており、麻酔薬不足による治療延期などは発生しておりません。その理由を、もう少し具体的にご説明します。

当院で行っている「安定した麻酔薬供給」のための工夫
複数の仕入れルートを確保
当院では、1社の卸業者さんだけに依存せず、複数の業者さんから情報を得ながら麻酔薬を分散して仕入れるようにしています。あるルートが一時的に欠品しても別ルートでカバーできるようにしておくことで、在庫切れのリスクを可能な限り抑えています。
過不足のない在庫管理
使用期限の問題もありますので「たくさん持っていれば安心」というわけではなく、在庫が過度に偏ると、かえって全体の流通に悪影響を及ぼすこともあることなどを鑑みて、当院では、過去の使用量や出荷状況を踏まえながら「多すぎず、そして少なすぎず」適正な量を維持することを心がけています。
複数の麻酔薬を使い分けられる体制
薬の種類によって成分や濃度・作用時間が少しずつ異なります。当院では、複数の麻酔薬を組み合わせて使用できる体制を整えており、もし特定の銘柄の入荷が不安定になっても他の薬剤でカバーできるように工夫しています。

今後の見通しと、患者さんにお伝えしたいこと
医薬品の供給不安はすぐにゼロになるわけではありません。国やメーカー、流通業者さんが連携しながら改善を進めているものの完全に落ち着くまでにはもう少し時間がかかると考えられています。
とは言え、歯科医療は患者さんの安全と安心が何より大切です。当院としては、今後も情報収集と在庫管理をしっかり行い、必要に応じて所属する「いわき歯科医師会」や業者さんとも連携しながら診療に支障が出ないよう努めてまいります。
もしニュース報道等などを見て不安になられた場合は、受診時に遠慮なくお尋ねください。
まとめ:安心して治療をお受けください
歯科用麻酔薬の不足は、全国的な医薬品供給の問題の一部として起きているものであり、歯科医療の現場でも注意深く見守っているテーマです。
ですが、当院では現時点で通常通りの麻酔処置・歯科治療が行えており、皆さまに大きなご不便をおかけする状況にはなっておりません。
これからも、地域の皆さまが安心して通える「かかりつけ歯科医院」であり続けられるよう、スタッフ一同、日々の診療体制の整備と情報収集に努めてまいります。
ご心配なことや気になる症状がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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執筆・監修歯科医
地域の患者さんにとって
安心できる歯科医療を
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会






