はじめに:「義歯」という言葉の本当の意味
入れ歯は、正式には「義歯(ぎし)」と言います。確か、学生時代の教科書には「入れ歯」って表現は無かったように記憶しています。
実はこの「義歯」・・・これは「義足(ぎそく)」や「義手(ぎしゅ)」の「義」と同じ文字です。
少し厳しい例えで恐縮ですが、パラリンピックのアスリートのような超人的な努力をされた方は別として、私たち人間が作り出した「義足」で生まれ持ったご自身の足と全く同じように自由にスキップをすることは・・・非常に難しいのが現実だと私は思います。
手・足と全く同じように、「義歯」もまた、どんなに精密に作製したとしても、決してご自身の天然の歯と全く同じものには絶対になれないのです。(泣)

一般的な総入れ歯で回復できる噛む力は、天然の歯があった頃のわずか20〜30%程度である・・・とも言われています。歯で噛んでいるのではなく、歯ぐきの上に載ったプラスチックで噛んでいるのですから無理もありませんね。
これが、私たちが、まず患者さんに正直にお伝えしなければならない歯科医療(入れ歯治療)の「現実」です。
それでも、「義歯」があなたの人生を豊かにする理由
では、入れ歯は不便なだけのものなのでしょうか? いいえ、決してそんなことはありません。
歯が失われたままの状態に比べれば、精密に作られた入れ歯があることはあなたの人生を比較にならないほど豊かにしてくれます。
- 食べられるものの種類が格段に増えます。
- 頬や唇のハリが支えられ若々しいお顔の輪郭を保てます。
- 発音が明瞭になります。
- そして何より、人前で自信を持って笑うことができます。

私たちは、失われた100%を取り戻すことはできなくとも、残された20〜30%の機能をいかにして「最高の20〜30%」に高め、あなたの生活の質(QOL)を最大限に向上させられるか。その一点に全ての技術と情熱を注いでいます。
まず、基本のキ。「部分入れ歯」と「総入れ歯」の違い
入れ歯は、失われた歯の本数によって大きく2つの種類に分けられます。それぞれの基本的な仕組みを分かりやすい動画で見てみましょう。
✅ ① 部分入れ歯
1本でもご自身の歯が残っている場合に適用されるのが「部分入れ歯」です。残っている健康な歯に、金属のバネ(クラスプ)などをかけて入れ歯を安定させます。失われた歯が1本の場合から13本の場合まで非常に幅広い症例に対応します。


【動画で見る】部分入れ歯の基本的な作り方
✅ ② 総入れ歯
残念ながら全ての歯を失ってしまった場合に適用されるのが「総入れ歯」です。支えとなる歯がないため、歯ぐきの粘膜の上に吸盤のように吸着させて安定させます。


正直にお話ししますと、この総入れ歯の作製は非常に・・・非常に困難を極めます。(汗)
支えのない、柔らかい歯ぐきの上に、食事の時にも動かない安定した装置を作る・・・それは、歯科医師と歯科技工士のまさに腕の見せ所です。(泣)
無責任なようですが、歯科医師も歯科技工士も共に自分では使ったことが無い「作品」を作るのですから無理もないのです。
【動画で見る】総入れ歯の基本的な作り方
「最高の30%」を目指して。当院の入れ歯作りのこだわり
「どうせ入れ歯だから…」とあきらめてほしくない・・・その想いから、私たちは保険の入れ歯・自費の入れ歯を問わず、以下の点に徹底的にこだわっています。
①「痛い・噛めない」を可能な限りなくす、精密な設計と妥協なき調整
入れ歯が痛む最大の原因は、お口の形に精密に合っていないことです。考えてみたら、弾力のある歯ぐきを型取りして、硬い石膏の模型にした上で作って行くのです無理もありません。
私たちは、精密な型取りはもちろんのこと、お口の動きや筋肉の癖までを考慮した設計を行い、完成後もあなたの「お口の一番気持ちの良い場所」に完璧にフィットするまで、何度でも調整を繰り返します。

②「見た目が悪い」をなくす審美性への追求
入れ歯は、あなたの自信あふれる笑顔を取り戻すための「顔の一部」です。私たちは、歯の色や形・並び方など細部にまでこだわり、周りの人から入れ歯だと気づかれないような、自然で美しい口元をあなたと一緒に追求します。
(保険診療で用いるバネと称する針金だけは御了承いただくしかありません)


③「長持ちしない」をなくす丁寧なアフターフォロー
お口の中は、困ったことに常に変化し続けます。これは一週間では体重もそれほど変わりはしませんが、半年・1年・3年に渡り一定の体重を維持することが難しいのでもお解りいただけますでしょう。
あってはならないことかとは思いますが、入院などで体重の激減に見舞われたりする方は急激に適合が悪化するのは間違いがありません。
最高の入れ歯も、定期的なメンテナンスをしなければ徐々に、確実に合わなくなってきます。当院では「作って終わり」ではありません。定期的な検診と調整を通じて、あなたの入れ歯が常に最高の状態で機能し続けるよう生涯にわたってサポートさせていただきます。

入れ歯が全身の「健康寿命」を延ばす理由
「面倒だから」・「痛いから」と、作った入れ歯を引き出しの中に仕舞い込んでしまっていませんか? お気持ちはよく分かります。ですが、合わない入れ歯を我慢して使わなかったり、歯がない状態を放置したりすることは、実はお口の中だけでなくあなたの全身の健康と未来の生活の質(QOL)にまで深刻な影響を及ぼす可能性があるのです。
① 豊かな食生活と健やかな消化
しっかりと噛める入れ歯があることで、お肉や繊維質の多い野菜など食べられるものの種類が格段に増え、全身の栄養状態が改善します。また、食べ物を細かく噛み砕くことは、当たり前ですが胃腸での消化・吸収を助ける非常に重要な第一歩です。
私も子供の頃に母から「よく噛んで食べなさい」と言われましたけど、当時はうるさくしか感じませんでしたけど、今思えば100%正しかったように思っております。(汗)
余談ですが・・・
郷ひろみさんがNHKの番組に出演なさった際に、『とにかくよく噛む、トウモロコシの一粒も30回かけて噛む、なので食事時間が長くて実は家族に笑われるんです(笑)』と仰ってたのが私はとても印象に残っています。
私自身もその番組の視聴以降 努めてそのように心掛けては居りますが、咀嚼も容姿もなかなか郷ひろみさんの様には・・・なれませんです。(泣)

② 脳を活性化させ認知症を予防する
「噛む」という行為は、脳の血流を増やし記憶を司る「海馬」などを直接的に刺激することが多くの研究で分かっています。しっかりと噛めることは、将来の認知症のリスクを低減させるための最も簡単で最も効果的な毎日のトレーニングなのです。
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③ 全身のバランスを保ち転倒を防ぐ
私たちは、重いものを持ち上げたり踏ん張ったりする時、無意識に歯を食いしばっています。しっかりと噛めることは、全身の筋力の発揮と身体のバランスを保つ上で非常に重要な役割を果たしています。特にご高齢の方にとっては、転倒を予防し寝たきりを防ぐための大切な力となります。
④ 人との繋がりを豊かにする
入れ歯は、発音を助け会話をスムーズにします。そして何より、ご家族やご友人と同じものを一緒に美味しく食べられる・・・その喜びと自信に満ちた笑顔は、あなたの社会的な繋がりをより豊かにし心身の健康を支えてくれますでしょう。

あなたにとっての「最善」を一緒に見つけましょう
当院では、保険適用の入れ歯はもちろん、より快適で審美性に優れた様々な種類の自費の入れ歯も取り扱っております。
それぞれの入れ歯の詳しい特徴や、写真を見ながら比較検討したい方は、以下の「専門ガイド」ページをぜひご覧ください。
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執筆・監修歯科医
できない約束はしない。
できる努力は惜しまない。
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会