皮膚科に通っても治らない…その不調、お口の中の「銀歯」が原因かもしれません
「何年も、手や足の裏の、治りにくい湿疹に悩まされている」
「原因不明の、全身の皮膚炎やかゆみが続いている」
こうした症状で皮膚科に通っても、なかなか改善が見られない場合、その根本原因が、実は何年も前にお口の中に入れた「銀歯」などの歯科金属にあるかもしれないとしたら驚かれるでしょうか。


これは「歯科金属アレルギー」と呼ばれるもので、お口の中の金属が、唾液によって少しずつ溶け出し全身に様々なアレルギー反応を引き起こす病気です。この記事では、意外と知られていないこの歯科金属アレルギーのメカニズムと解決への道筋について詳しく解説していきます。


なぜ、お口の金属が、全身に影響を及ぼすのか?
歯科治療で使われる金属は、非常に安定していますが、それでもお口の中という過酷な環境(常に唾液で湿っており、温度変化や酸の刺激がある)で、ごく微量ながら金属イオンとして溶け出しています。


この溶け出した金属イオンが、血液やリンパ液に乗って全身を巡り、体のたんぱく質と結合します。すると、私たちの体の免疫システムが、それを「異物(アレルゲン)」と誤って認識し攻撃を始めてしまうのです。その結果、お口の中だけでなく、手のひらや足の裏といった全く離れた場所の皮膚にまでアレルギー反応(湿疹など)が現れることがあります。
もしかして…? 歯科金属アレルギーの代表的な症状
歯科金属アレルギーの症状は、お口の中と、全身の両方に現れる可能性があります。
お口の中に現れる症状
① 口内炎・口角炎
金属の詰め物や被せ物が、直接触れている頬の粘膜や舌に、なかなか治らない口内炎ができる。
② 舌炎(ぜつえん)
舌がピリピリと痛んだり、赤く腫れたり、表面がザラザラしたりする。


③ 味覚障害
食べ物の味が分かりにくくなったり、お口の中に常に金属の味がしたりする。
全身に現れる症状(こちらが重要です)
① 掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
手のひらや足の裏に、膿を持った小さな水ぶくれや赤い発疹が繰り返しできる、非常に治りにくい症状(難治性)です。

② 扁平苔癬(へんぺいたいせん)
皮膚や頬の内側の粘膜などに、レース模様のような白い発疹ができることがあります。
③ 原因不明の皮膚炎・アトピーの悪化
全身の様々な場所に痒み(かゆみ)を伴う湿疹ができたり、もともとあったアトピー性皮膚炎が悪化したりします。
原因を特定し、解決へ導くためのステップ
「もしかしたら、自分も…」と感じたら、あきらめる前にぜひ一度ご相談ください。原因を特定し、解決するための確立された手順があります。
Step1:皮膚科との連携による「パッチテスト」
まず、アレルギーの原因となっている金属を特定するために、皮膚科で「パッチテスト」を受けていただく必要があります。当院では、信頼できる地域の皮膚科専門医と連携しておりますので責任を持ってご紹介させていただきます。
Step2:原因金属の特定と安全な除去
パッチテストで、アレルギーの原因が特定の歯科金属(パラジウム・ニッケル・コバルトなど)であると確定したら、次にお口の中からその金属を含む詰め物・被せ物を慎重に取り除いていきます。特に、アマルガム(水銀を含む合金)を除去する際は、削りカスや蒸気を吸い込まないよう口腔外バキュームなどを用いて安全対策を徹底します。
Step3:身体に優しい「メタルフリー素材」への交換
原因金属を除去した後は、アレルギーのリスクが極めて低い、セラミックやジルコニア、ハイブリッドセラミックといった生体親和性の高い「メタルフリー素材」を用いて新しく詰め物や被せ物を作り直します。

長年の不調、原因は「歯」かもしれません
原因不明の皮膚炎などでお悩みの方は、一度、ご自身のお口の中にある金属について私たちにご相談ください。長年あなたを悩ませてきた症状の思わぬ解決への突破口が、実はお口の中に見つかるかもしれません。


執筆・監修歯科医
お口の中から
全身の健康を考える
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会