はじめに:お子さんの「何気ない癖」、見過ごしていませんか?
指しゃぶり、お口ポカン、頬杖・・・
お子さんのそんな何気ない「癖」が気になっていませんか? 「そのうち自然に治るだろう」とつい見過ごしてしまいがちかもしれません。

私たち歯科医師の目から見ると、それらの癖はお子さんの健やかな成長を妨げる重要な「SOSサイン」である可能性があります。毎日、何時間も無意識のうちに繰り返されるその小さな力が、お子さんの未来の「歯並び」や「顔つき」、そして「全身の健康」にまで大きな影響を及ぼしてしまうのです。
この記事では、「お口の悪い癖」をなぜ早期に改善すべきなのか・・・その3つの非常に大切な意味について詳しく解説していきます。

意味①:将来の「歯並び」を土台から守る
✅ そもそも歯並びが悪くなるのを「予防」する
悪い癖は、常に歯や顎に不自然な力を加え続けます。その力が顎の骨の健やかな成長を妨げ、永久歯がきれいに並ぶための十分なスペースを奪ってしまうのです。
成長期にこれらの癖を改善すること。それこそが将来、本格的な矯正治療が必要になるのを未然に防ぐ最高の「歯並びの予防」なのです。
✅ 矯正治療後の悲しい「後戻り」を防ぐ
根本的な原因である「癖」が治らないまま矯正治療だけを行っても・・・どうなるでしょうか。治療が終わった後、歯は、またその癖の力によって元の悪い位置へとゆっくりと戻っていってしまいます。これが矯正治療後の悲しい「後戻り」です。
私たち歯科医療従事者は、過去に矯正治療のために歯を抜いた経験のある方が大人になって再び歯並びが悪化してしまっているというケースに決して少なくない頻度で遭遇します。根本原因である「癖」の解決こそが矯正治療の本当のゴールなのです。
意味②:身体の「健やかな成長」を促す
例えば「お口ポカン」に代表される「口呼吸」。この癖が、本来あるべき「鼻呼吸」に改善されるだけで、お子さんの身体には驚くほど多くの良い変化が訪れます。
✅ 免疫力の向上
鼻という天然のフィルターを通すことで、ウイルスや細菌の体内への侵入を防ぎ風邪をひきにくくなります。

✅ 成長ホルモンの促進・睡眠の質の改善
深くて質の良い睡眠は、お子さんの健やかな心身の成長に不可欠です。
✅ 集中力の持続
脳へ質の良い酸素が十分に供給されるようになります。
お口の癖を治すことは、お口の中だけでなくお子さんの全身の健やかな成長を力強くサポートするのです。

意味③:バランスの取れた「美しい顔立ち」を育てる
お口周りの筋肉のバランスは、お子さんの、将来の「顔つき」の形成に非常に大きな影響を与えます。下記のイラストの右側の様なお顔付きの方はお知り合いにいらっしゃいませんか?

【院長の警鐘】うつ伏せ寝と頬杖の隠れたリスク
一時期、赤ちゃんの頭の形を良くするという目的で「うつ伏せ寝」がもてはやされた時期がありました。ですが、歯科の観点から申しますと、これは非常に由々しき問題でした。(泣)
うつ伏せで寝ると、呼吸を確保するために必ず首を左右どちらかにひねり、頬を一晩中 枕に押し付けることになります。この頭部自身の重みという非常に大きな力が、まだ柔らかいお子さんの顎の骨に何時間もかかり続けてしまうのです。

その結果、悲しいことに顎の骨が変形し顔が左右非対称に歪んでしまう原因となりました。「頬杖」も全く同じです。顎が変位してしまう無理な力が継続的にかかる・・・それは、お子さんの健やかな成長にとって百害あって一利なしとお考えください。
癖の「背景」に寄り添うこと
私たち酒井歯科医院は、お子さんのお口の癖を見つけた時に、ただ否定して終わりにしないように心掛けて居ます。
その癖の背景には、お子さんなりの何らかの理由や不安な気持ちが隠れているかもしれないからです。
私たちは、お子さんと、そして保護者の皆様とじっくりと対話を重ねる中で、その根本原因を探り、最適な改善方法を一緒に見つけ出していけると宜しいように考えています。気になる癖があれば、どうぞ一人で悩まず私たちスタッフにご相談ください。
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執筆・監修歯科医
その子の十年先を
見据えたアドバイスを
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会