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全身との関係

「いびきと舌がん」の本当の関係|歯科医師が最新エビデンスを解説

    はじめに:「いびきが舌がんの原因になる」は本当か?

    「大きないびきをかく人は、舌がんになりやすい」
    時折、インターネットなどで、このような少しショッキングな情報を見かけることがあります。ご自身やご家族のいびきに悩んでいる方にとっては非常に不安になる話ですよね。

    この記事では、まず結論から申し上げます。2024年現在、「いびきが、直接的に舌がんを引き起こす」ということを示す明確な科学的根拠(エビデンス)は確立されていません。

    ですが、だからといって「関係ないから安心だ」と考えるのは早計です。実は、多くの「いびき」と「舌がん」には、共通する、見過ごしてはならない“根本的なリスク因子”が隠れているのです。

    御主人のイビキに悩まされる奥さん

    この記事では、歯科医師の視点から、その共通のリスクとは何か・・・そして、ご自身の健康を守るために本当に注意すべき点はどこなのかを、最新の知見に基づいて正確にお伝えしていきます。


    「いびき」と「舌がん」を結びつける3つの共通リスク因子

    いびきをかくこと自体が問題なのではなく、いびきの背景にある生活習慣や体の状態が、舌がんのリスクにも繋がっている・・・と考えるのが現在の医学的な見解です。

    ① 喫煙

    これは、両者における最大かつ最強のリスク因子です。タバコの煙に含まれる数多くの発がん性物質は、喉や舌の粘膜を直接刺激し、がんの発生リスクを劇的に高めます。同時に、タバコは気道の粘膜に炎症を引き起こし、気道を狭くするため「いびき」の大きな原因ともなります。

    ② 過度な飲酒

    アルコールは、それ自体が分解される過程で発がん性物質を産生します。特に、喫煙と飲酒の習慣が重なると発がんリスクは相乗効果で飛躍的に高まることが分かっています。
    また、アルコールには筋肉を弛緩させる作用があるため、睡眠中に喉の周りの筋肉が緩み、気道が狭くなって「いびき」が悪化します。

    ③ 口呼吸

    習慣的ないびきは、睡眠中に気道が狭くなり、鼻呼吸だけでは十分な酸素を取り込めず、口を開けて呼吸している状態(口呼吸)であることがほとんどです。
    口呼吸は、お口の中を乾燥させ唾液による自浄作用を低下させるため、虫歯や歯周病のリスクを高めます。さらに、お口の粘膜が常に乾燥した空気に晒されることで、粘膜の防御機能が低下し様々な刺激に対して弱くなってしまうという側面も指摘されています。

    イビキを掻く男性

    本当に恐れるべきは「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」

    大きないびきをかく方が、舌がん以上に、まず警戒すべきなのが「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」です。

    これは、睡眠中に何度も呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。いびきは、その最も代表的なサインの一つです。この状態が続くと体は慢性的な酸欠状態に陥り、心臓や血管に大きな負担をかけ、高血圧や心筋梗塞・脳卒中といった命に関わる病気のリスクを著しく高めることが多くのエビデンスで証明されています。

    そして、この睡眠時無呼吸症候群の治療において、実は私たち歯科医師が非常に重要な役割を担っています。

    歯科医院で作る「マウスピース(スリープスプリント)」

    軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群に対しては、就寝中に装着するオーダーメイドのマウスピース(スリープスプリント)が非常に有効な治療選択肢となります。この装置は、下の顎を少し前に出した状態で固定することで、気道を広げスムーズな呼吸を確保します。医科からの紹介状があれば、健康保険も適用されます。

    スリープスプリント②
    スリープスプリント①

    舌がんの本当のリスク因子と、歯科医院での早期発見

    舌がんの予防で最も重要なのは、その確立されたリスク因子を避けることです。

    • 喫煙と過度な飲酒をやめる(最大の予防策です)
    • 合わない入れ歯や、尖った歯を放置しない(慢性的な刺激もリスクになります)

    そして、何よりも大切なのが「早期発見」です。舌がんは、初期の段階であれば比較的簡単な治療で治癒する可能性が高いがんです。私たちは、日々の診療で、患者さんのお口の粘膜を隅々までチェックしています。「なかなか治らない口内炎」や「舌のしこり」など、些細な変化に気づけるのも私たち歯科医師の重要な役割であると考えています。


    結論:リスクの根源を理解し、正しく対処しましょう

    「いびき=舌がん」と短絡的に結びつけて不安になる必要はありません。しかし、大きないびきは、喫煙や飲酒といった舌がんとも共通する不健康な生活習慣のサインであり、また、睡眠時無呼吸症候群という別の深刻な病気の警告音でもあります。

    御主人の無呼吸が気になってしまう奥さん
    口を開けイビキを掻く男性

    この記事が、ご自身の生活習慣を見直し、お口と全身の健康に目を向ける良いきっかけとなれば幸いです。いびきやお口の中の些細な変化など、気になることがあればいつでも私たちにご相談ください。

    執筆・監修歯科医

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    酒井直樹

    医療法人SDC 酒井歯科医院 理事長 / 院長

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