はじめに:「歯周病です」と診断されたあなたへ
「歯周病のようですね」― そう診断されて、「これから、一体どんな治療が始まるんだろう・・・」、「痛いのかな?」・「時間はどのくらいかかるんだろう?」と様々な不安を感じていらっしゃるかもしれません。
ご安心ください。歯周病治療は決して闇雲に進められるものではありません。科学的根拠に基づいた明確なステップがあります。そして、その治療の主役は、私たち歯科医師や歯科衛生士だけでなく患者さんご自身なのです。

この記事では、歯周病の進行度に応じて当院で行われる治療の具体的な流れを、ステップごとに分かりやすく解説していきます。治療の全体像を理解することが不安を和らげ、前向きに治療に取り組むための最初の、そして最も大切な一歩となりますでしょう。
Step1:全ての基本となる「精密検査」と「診断」
全ての治療は、まず、敵(歯周病)の正体を正確に知ることから始まります。
① 歯周ポケット検査
「チクチクしますね」という、あの検査です。プローブという細い器具を使い、歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)の深さを一本一本丁寧に測定します。ポケットが深いほど歯周病が進行していることを示します。

② レントゲン撮影
歯ぐきの下に隠れて目では見ることができない歯を支える骨(歯槽骨)が、どれくらい溶けてしまっているのかをレントゲンで確認します。当院では、必要に応じて三次元で骨の状態を把握できる歯科用CTも活用します。

③ 口腔内写真の撮影
現在の歯ぐきの色や腫れの状態などを客観的な記録として写真に残します。治療後の改善と比較することで、ご自身の頑張りの成果を目で見て実感することができます。
Step2:歯周基本治療 ― これが治療の「核」です
検査結果に基づき、歯周病の根本原因である「歯垢(プラーク)」と「歯石」を徹底的に除去していきます。ほとんどの軽度〜中等度の歯周病は、この基本治療をしっかりと行うことで改善が見られます。
① ブラッシング指導(TBI)
驚かれるかもしれませんが、歯周病治療で最も重要なのは患者さんご自身の毎日の歯磨きです。専門家である歯科衛生士が、あなたのお口の状態に合わせた最適な歯ブラシの選び方、そして、歯垢を確実に落とすための「あなただけの磨き方」をマンツーマンで丁寧に指導します。
② スケーリング(歯石除去)
歯ブラシでは除去できない硬く石灰化した「歯石」を、超音波の器具や専用の手用器具を使って歯の表面や歯ぐきの浅い部分から除去します。

③ SRP(スケーリング・ルートプレーニング)
歯周ポケットの奥深く、歯の根っこ(ルート)の部分にまでこびりついた頑固な歯石を除去する処置です。同時に、歯の根の表面をツルツルに磨き上げる(プレーニング)ことで細菌が再び付着しにくい環境を整えます。

Step3:歯周外科治療(重度の場合の選択肢)
歯周病が重度にまで進行し、基本治療だけでは歯周ポケットの奥深くまで歯石を取りきれない場合に選択される外科的な処置です。
① フラップ手術
麻酔をした上で、歯ぐきを少しだけ切開しめくり上げます。これにより、歯の根の深い部分を目で直接見ながら歯石や感染した組織を完全に取り除くことができます。治療後は、歯ぐきを元に戻し縫合します。
② 歯周組織再生療法
フラップ手術の際に、特殊な薬剤(エムドゲイン®など)や膜(GTR法)を用いることで歯周病によって失われてしまった歯を支える骨そのものを再生させることを目指す先進的な治療法です。詳しくは、下記の専門ページをご覧ください。

Step4:最も重要な治療後の「メインテナンス(SPT)」
歯周病は、一度症状が改善しても、日々のケアを怠ればすぐに再発してしまう糖尿病や高血圧のような「慢性疾患」です。
治療が完了した後も、3〜4ヶ月に一度のペースで定期的なメインテナンスに通っていただくこと。歯科衛生士による専門的なクリーニング(PMTC)で再発の芽を摘み取り健康な状態を維持し続けること。
それこそが、あなたの歯を生涯にわたって守り抜くための最も確実で最も大切なステップなのです。
執筆・監修歯科医
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理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会