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はじめに:「虫歯 = すぐに削る」は、もう古い?

「虫歯が見つかったら、キーンという音と共に大きく削られて銀歯になる・・・」
そんな、かつての歯科治療のイメージを今もお持ちではないでしょうか。

歯科医療は、この10年・20年で劇的に進歩しました。現在の世界の歯科界におけるスタンダードは、「MI(ミニマルインターベンション=最小限の侵襲)」という考え方です。
これは、「一度削ってしまった歯は、二度と元には戻らない」という当たり前だけれど非常に重い事実を、私たち歯科医師が真摯に受け止め「本当に治療が必要な部分だけを最小限の介入で治し、あなたの生まれ持った歯を一本でも多く、一日でも長く守る」という治療哲学です。

この記事では、当院がこのMI治療を実践するためにどのようなこだわりを持っているのか、その具体的な取り組みについてご紹介します。


なぜ「なるべく削らない」ことがそれほど重要なのか?

歯を削る治療は確かに虫歯の進行を食い止めます。ですが、同時にそれは歯の寿命を縮める「負の連鎖」の始まりにもなり得ます。

詰め物や被せ物には必ず寿命があります。一度治療した歯は、数年後・数十年後に詰め物の隙間から再び虫歯になる「二次カリエス」のリスクを常に抱えています。そして、再治療のたびに歯はさらに大きく削られ、神経を抜き、最終的には抜歯へと少しずつ確実に後戻りのできない道を歩んでしまうのです。

二次カリエス(銀歯の下に虫歯)
二次カリエス(銀歯の下に虫歯)
二次カリエス(虫歯が再発、進行)
二次カリエス(虫歯が再発、進行)

この負の連鎖を断ち切るために、最初の治療でいかに「削る量を少なくするか」・・・それが歯の寿命を決定づける最も重要な鍵となります。


MI治療を可能にする4つの「こだわり」

「なるべく削らない」は単なるスローガンではありません。それを実現するためには、精密な「診断技術」と「治療技術」、そして「予防」という3つのこだわりが不可欠です。

① 拡大鏡による「精密な診断」

虫歯の部分と健康な部分を肉眼だけで正確に見分けるには限界があります。当院では、歯科用の拡大鏡(ルーペ)を使い、視野を何倍にも拡大して治療を行います。
これにより削るべき部分を正確に見極め、健康な歯質を最大限に残すことが可能になります。

歯科用拡大鏡(ルーペ)

②「数値」で判断する客観的な虫歯診断(ダイアグノデント ペン)

歯の溝が少しだけ黒くなっている・・・。
「これは、ただの着色でしょうか? それとも中で虫歯が始まっているのでしょうか?」

これまでの診断は、歯科医師の経験と先の尖った器具(探針)で触った時の「感覚」に頼る部分が大きいものでした。しかも、探針で強く触れるとかえって初期の虫歯を壊してしまうリスクも指摘されていました。
「ダイアグノデント ペン」は、そうした診断の曖昧さをなくすための先進の虫歯診断装置です。

むし歯の深さを数値化するダイアグノデントペン

Ⅰ. 虫歯菌が出す“排気ガス”を検知する仕組み

例えるなら、虫歯菌が出す“排気ガス”(代謝産物ポルフィリン)を検知する高感度のセンサーのようなものです。
ペンの先端から、歯に安全なごく弱いレーザー光を当てると虫歯菌が隠れている場所だけが特殊な光を発します。その光の強さを0〜99までの「数値」として測定することで、見た目だけでは分からない歯の内部の虫歯の進行度を客観的に把握できる・・・のだそうです。

むし歯の深さを数値化するダイアグノデントペンの仕組み

Ⅱ. 客観的な「数値」による診断基準

測定された数値歯の状態推奨される処置
0 〜 15健全な歯質問題ありません。予防処置を続けてこの状態を維持しましょう。
16 〜 40ごく初期の虫歯(要経過観察)まだ削る必要はありません。フッ素塗布などで再石灰化を促し進行を食い止めます。
41 〜 60慎重な判断が必要なグレーゾーン他の検査結果も踏まえ、最小限の治療(MI治療)を検討します。
61 以上治療が必要な虫歯MIの考えに基づき必要最小限の範囲で治療を行います。
むし歯の深さを数値化するダイアグノデントペンの実際の数字

Ⅲ. 痛みもなく安心・安全な検査

測定に使われるのは非常に弱いレーザー光ですので、痛みや不快感は全くありません。小さなお子さんや妊娠中の方でも安心して受けていただける安全な検査です。
この客観的な「ものさし」があることで、私たちは「不必要な治療」を確実に避け、あなたの歯を本当に守るべき時にだけ最小限の介入で守ることができるのです。

③ 歯を削る量を最小限にする「歯科用レーザー」

当院が導入している「Er:YAG(エルビウムヤグ)レーザー」は、水分を多く含んだ柔らかい虫歯の部分だけをピンポイントで蒸散させて取り除くことができます。従来のドリルのように、健康な部分までを大きく削り取る必要がなくまさに「最小限の介入(MI)」を実現するための非常に優れたツールです。

④ 接着技術の進化とコンポジットレジン

かつて、詰め物の主流だった金属は、歯と接着しないため外れないように健康な部分まで含めて大きく箱型に削る必要がありました。
ですが、現代の「コンポジットレジン(歯科用プラスチック)」は歯と強力に接着します。そのため、虫歯の部分だけをピンポイントで取り除きそこにレジンを詰める・・・という非常に歯に優しい治療が可能になりました。


究極のMIは「治療しない」こと ― 予防歯科の重要性

そして、私たちが考える究極のMI(ミニマルインターベンション)とは、そもそも歯を削る治療を必要とさせないことです。
どんなに精密な治療も、生まれ持ったご自身の健康な歯には敵いません。当院が治療と同じくらい、あるいはそれ以上に「予防歯科」に力を入れているのはそのためです。

定期的な検診とクリーニング(PMTC)、そしてフッ素の塗布。これらを組み合わせることで虫歯の発生そのものを防ぎ、もしごく初期の虫歯が見つかったとしても削らずに「再石灰化」で治癒させることができるかもしれません。

あなたの歯を生涯にわたって守ること。それが私たちの最大の使命です。

執筆・監修歯科医

その一本の歯の
未来まで考える