はじめに:「どのセラミックが私に一番合っているの?」
カウンセリングで、いざ「セラミックで歯を白く美しくしましょう」という話になった時、多くの患者さんが次に直面するのが「じゃぁ~、どの種類のセラミックを選べば良いの?」という新たな疑問です。
e-max、ジルコニア、ハイブリッド・セラミック・・・専門的な名前が並ぶと当然のことながら迷ってしまいますよね。

ご安心ください。このページは、そんなあなたのための「専門ガイドブック」です。それぞれの素材が持つ素晴らしい個性(メリット)と正直な弱点(デメリット)を、一つひとつ分かりやすく解説していきます。このページを読み終える頃には、あなたご自身の希望にどの素材が一番近いのかがきっと見えてくるはずです。
当院で主に取り扱っている3つの代表的なセラミック
当院では、数あるセラミック材料の中から、審美性や耐久性、そして身体への優しさという観点で特に信頼性の高い以下の3つの素材を厳選して使用しています。(詳細はスタッフにお尋ね下さい)
🟩① e-max(イーマックス)― バランスの取れた優等生


ニケイ酸リチウムガラスセラミックという特殊なガラス系のセラミックです。審美性と強度のバランスが非常に良く現代のセラミック治療において最もスタンダードな選択肢の一つと言えます。
✅ こんな方におすすめ
⚫ 前歯にも奥歯にも、幅広く使いたい方
⚫ 天然の歯のような自然な透明感を重視する方
⚫ 神経が残ってる歯で、削る量を少なくしたい方
⭕ メリット
⚫ 天然歯に非常に近い美しい色調と透明感を再現できます。
⚫ 適度な硬さで周りの歯を傷つけにくいのも特徴です。
❌ デメリット
⚫ ジルコニアに比べると強度の面では一歩譲ります。
⚫ 非常に強い力がかかるブリッジなどには適用ができません。
🟩② ジルコニア ― 「白い金属」とも呼ばれる圧倒的な強度



人工ダイヤモンドとしても知られるジルコニアという非常に硬い素材から作られています。その圧倒的な強度は金属に匹敵するレベルです。
✅ こんな方におすすめ
⚫ 強い力がかかる奥歯の被せ物や、白い素材だけのブリッジを希望される方
⚫ 歯ぎしりや食いしばりの癖がある方
⚫ とにかく丈夫で割れにくい素材を最優先したい方
⚫ 神経が残ってる歯で、削る量を可能な限り少なくしたい方
⭕ メリット
⚫ 金属を一切使わない素材の中で最も高い強度を誇ります。
⚫ 汚れ(プラーク)が付着しにくいという衛生的な利点があります。
⚫ e-maxの約2~3倍の強度を誇るので、白い歯でありながら2歯欠損までのブリッジが可能です。
❌ デメリット
⚫ e-maxに比べると色調の透明感の再現が少し苦手です。
⚫ ただし、近年のジルコニアは審美性も飛躍的に向上しています。数年前までは・・・ホントの真っ白でした。
🟩③ ハイブリッドセラミック(CAD/CAM冠)― 保険も適用できる賢い選択


セラミックの微粒子とプラスチック(レジン)を混ぜ合わせたハイブリッドな材料です。保険適用で白い歯を手に入れられるのが最大の魅力です。
✅ こんな方におすすめ
⚫ まずは保険の範囲内で、銀歯を白い歯に変えたい方
⚫ 費用をできるだけ抑えたい方
⭕ メリット
⚫ 保険適用なので非常にリーズナブルです。
⚫ 適度な柔らかさがあり周りの歯を傷つけにくいという利点があります。
❌ デメリット
⚫ セラミック100%の材料に比べると、経年的に少しずつ変色したりすり減ったりする可能性があります。
⚫ 強度も劣るため適用できる部位に制限があります。(厚み確保の為に、削る深さは①・②より多くなります)
⚫ 大臼歯部に関しては、保険適用に条件があります。
【早見表】あなたに最適なセラミックは?
それぞれの特徴を一覧表にまとめました。
種類 | 美しさ(審美性) | 丈夫さ(強度) | 主な適用部位 |
---|---|---|---|
e-max | ★★★★★ | ★★★★☆ | 前歯・奥歯の詰め物/被せ物 |
ジルコニア | ★★★★☆ | ★★★★★ | 奥歯の被せ物・ブリッジ |
ハイブリッドセラミック | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | 前歯・小臼歯・条件付きで大臼歯(保険適用) |
素材を選ぶ前に。知っておいてほしい「3つの大前提」
個別の材料を比較する前に、まず、全てのセラミック治療に共通する基本的な考え方についてご説明します。
🔶① 大まかな考え方(強度・時間・費用)
強度
素材の硬さは、一般的に「ハイブリッドセラミック < e-max < ジルコニア」の順に強くなります。当たり前になりますが、奥歯など強い力がかかる場所ほど強度の高い素材が推奨されます。
時間
e-maxは、症例にも因りますが院内のセレックシステムで即日作製(約1時間半〜2時間)が可能ですが、保険診療のハイブリッドセラミックは即日修復は認められて下りません。最高の強度を誇るジルコニアは、専門の技工所へオンラインで発注するため完成までに数日間のお時間をいただきます。
費用(保険適用 or 自費診療)
現在、保険が適用されるのは「ハイブリッドセラミック(CAD/CAM冠&詰め物)」のみです。e-maxやジルコニアは自費診療となります。
🔶② 全てのセラミックに共通する最大のメリット
それは、金属を一切使用しない「メタルフリー」であるという点です。これにより、以下のような素晴らしい利点が生まれます。
⚫ 金属アレルギーの心配が一切ありません。
⚫ 天然の歯のような、自然な透明感と美しい白さを再現できます。
⚫ 金属イオンが溶け出して歯ぐきが黒ずんでしまう「ブラックマージン」の心配がありません。
🔶③ 全てのセラミックに共通する唯一の注意点(欠点?)
それは、素材の持つ「透明感の高さ」ゆえに、土台となるご自身の歯の色が少し透けて見えてしまう可能性があるという点です。

例えば、神経を抜いて黒ずんでしまった歯や金属の土台(メタルコア)が入っている歯の上に透明感の高いセラミックを被せると、中の色が少し透けて被せ物全体が暗い印象になってしまうことがあります。残念ながら昔はそれが主流でしたのでやむを得ません。
私たちは、そうした土台の色までを計算に入れ最適な素材選びや色を遮蔽するための工夫をご提案します。
当院では、ここ20年ほどは金属の土台を使用したことがありません(すべてレジンコア)のでご安心下さい。

ラミネートベニア ― 歯を削る量を最小限に抑える審美治療


「むし歯ではないけれど、前歯の色や形が気になる」・・・そんなお悩みに、歯を削る量を最小限に抑えながら応える治療法がラミネートベニアです。イメージとしては、爪に施す「ジェルネイル」や「付け爪」に非常に近いとお考えください。

✅ こんな方におすすめ
⚫ ホワイトニングでは白くならない、歯の変色が気になる方
⚫ 前歯の、わずかな隙間(すきっ歯)を自然に閉じたい方
⚫ 歯の形が少しだけ不揃いで、形を整えたい方
⚫ 歯を大きく削る被せ物(クラウン)には、抵抗がある方
ラミネートベニアのメリットと注意点
⭕ メリット
⚫ 歯を削る量が圧倒的に少ない(0.5〜0.8mm程度)。
⚫ セラミックなので、変色せず美しい白さが長持ちする。
⚫ 被せ物に比べて治療期間が短い。
❌ デメリット(注意点)
⚫ 歯ぎしりや食いしばりが強いと、まれに割れたり、剥がれたりすることがある。
⚫ 大きな歯並びの乱れや噛み合わせの問題は改善できない。
⚫ 元の歯の色が非常に濃い場合、完全に色を隠しきれないことがある。
最終的には、あなたとの対話で決定します
このガイドブックで、それぞれの素材の個性をご理解いただけましたでしょうか。
これは、あくまで一般的なお話です。最終的に、どの素材があなたのその歯にとって本当に「最善」なのか。それは、あなたのお口の中を精密に診査し、そして、あなたの価値観やご希望をお伺いした上で初めて決まってくるものです。
どうぞ、このページを「予習」の材料として、カウンセリングの場であなたの想いを私たちに聞かせてください。一緒に最良のゴールを目指しましょう。
執筆・監修歯科医
最高の素材を
あなたのために
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会