口が渇く「ドライマウス」の原因と対策｜歯科医師が教える改善ガイド

「最近、口がネバネバする」･･･そのサイン、見過ごしていませんか？

「朝起きると、口の中がカラカラで不快だ」
「パンなどの乾いたものが、飲み込みにくくなった」
「以前よりも、口臭が気になるようになった」

もし、そんな症状に心当たりがあれば、それは「ドライマウス（口腔乾燥症）」のサインかもしれません。ドライマウスは、加齢によるものとあきらめている方も多いですが、実は様々な原因が考えられ、放置するとお口の健康に深刻なダメージを与えてしまう見過ごせない症状です。

この記事では、なぜお口が渇くのか、その原因とドライマウスが引き起こす本当の怖さ、そして、今日からご自宅で始められる対策と、私たち歯科医院でできる専門的なアプローチについて分かりやすく解説していきます。

唾液の減少が、お口のトラブルの始まり

ドライマウスとは、簡単に言えば、お口の健康を守る最強のパートナーである「唾液」の分泌量が減ってしまう病気です。
唾液は単にお口を潤しているだけではありません。食べ物の消化を助け、細菌の増殖を抑え、歯の汚れを洗い流し、酸性に傾いたお口の中を中和するなど、数えきれないほどの重要な役割を担っています。この「天然のリンス剤」が枯渇してしまうと、お口の中の防御システムは一気に崩壊してしまうのです。

ドライマウスが引き起こす、深刻な二次災害

① 虫歯の激増

自浄作用や再石灰化作用が失われ、虫歯のリスクが劇的に高まります。特に、歯の根元にできる「根面う蝕」が多発しやすくなります。

② 歯周病の悪化

細菌が繁殖しやすくなり、歯周病が急速に悪化します。

③ 口臭の悪化

細菌が増殖し、食べカスなどが洗い流されないため強い口臭の原因となります。

④ 味覚障害

食べ物の味を感じる「味蕾（みらい）」が正常に機能しなくなり、食事が楽しめなくなります。

⑤ 摂食嚥下障害・誤嚥性肺炎

食べ物をうまく飲み込めなくなり、特にご高齢の方ではお口の中の細菌が食べ物と一緒に肺に入ってしまう「誤嚥性肺炎」のリスクが高まります。

なぜ、お口は渇いてしまうのか？ドライマウスの主な原因

ドライマウスは、様々な要因が複雑に絡み合って発症します。

① 薬の副作用

これが最も多い原因の一つです。高血圧の薬（降圧剤）・花粉症の薬（抗ヒスタミン薬）・精神安定剤・痛み止めなど、多くの薬の副作用として唾液の分泌を抑制する作用が報告されています。お薬手帳は、必ず私たちにもご提示ください。

② 口呼吸

鼻炎や歯並びの問題で口呼吸が習慣になっていると、お口の中の水分が常に蒸発し当然ながら乾燥状態になります。

③ ストレスや不規則な生活

唾液の分泌は、自律神経によってコントロールされています。過度なストレスや緊張・不規則な生活は、自律神経のバランスを乱し、唾液の分泌を減少させます。

④ 加齢による変化

年齢を重ねると、唾液を分泌する「唾液腺」の機能が低下したり、お口周りの筋力が衰えたりすることで、唾液の分泌量が少なくなる傾向があります。

⑤ 全身の病気の影響

糖尿病や、シェーグレン症候群といった自己免疫疾患などの、全身の病気の一症状としてドライマウスが現れることもあります。

歯科医院で始める、ドライマウス改善へのアプローチ

「ただの口の渇き」とあきらめる必要はありません。原因に応じた適切な対処で症状を和らげることができます。

① まずは原因の特定から

丁寧な問診（服用中のお薬の確認など）や、唾液の分泌量をしっかり観察し、なぜドライマウスが起きているのか、その根本原因を突き止めます。

② 唾液腺マッサージ・口腔リハビリテーション

ご自身でできる、唾液の分泌を促すための「唾液腺マッサージ」の方法や、お口周りの筋肉を鍛えるトレーニング（口腔リハビリ）を専門家である歯科衛生士が丁寧に指導します。

③ 保湿剤の活用

症状が強い場合は、ジェルやスプレータイプの「口腔保湿剤」を処方することもあります。お口の中の潤いを保ち、乾燥による不快な症状を和らげます。

④ 徹底的なプロフェッショナルケア

ドライマウスの方は、虫歯や歯周病のリスクが非常に高い状態です。定期的なPMTC（プロによる歯のクリーニング）でお口の中の細菌を徹底的にコントロールし、トラブルを未然に防ぐことが何よりも重要です。

お口の潤いは、健康で快適な生活のバロメーターです。些細なことだと我慢せず、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。

2025.06.05

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