喫煙が口腔内に及ぼす悪影響

その昔、学校の職員室のタバコの煙はモノ凄かったように記憶しています。それが昨今では公共施設等で「禁煙」や「分煙」が進んで来たのは御存知の通り。身体に対してもこれだけ良くないと言われては居りますが、それでもまだ一定数の方は「喫煙」を止められないようではあります。
厚労省のデータでは、ここ二十数余年で成人の喫煙率は男性で「53% → 32%」へ、女性で「9.4% → 8.2%」と報告もされているようです。

タバコが及ぼす悪影響あれこれ

ってことは、未だに成人男性の3人に一人は未だに喫煙者。実はこの喫煙は一般的に言われる「肺癌」だけでなく歯や口の中の歯周組織、そして咽頭部への悪影響は意外と知られては居りませんでしょう。
当たり前って言えば当たり前ですが、直に煙に接する口腔内には悪影響が及んでしまうのは明かでありましょう。最近では全身の健康へも悪影響を及ぼしかねないことが明らかにされつつあります。

もっとも最初に及ぶのは、口の中へのダメージ

タバコの煙の中には約4000種類もの化学物質が含まれていると言われます。その中の約200種類が有害物質で、発がん性物質が約70種類も含まれているとも言われるそうです。それらの物質は残念ながら口腔内軟組織から直接体内に吸収されてしまいます。恐ろしいことに喫煙は口腔癌や舌癌、喉のガンである咽頭癌を引き起こす原因にもなるようです。
歯科診療に携わっていると、確かに数年に一度はそういった我々で手に負えない癌症例に遭遇したり致します。

その中でも特に舌下部の「口腔底」と呼ばれる部分は粘膜が薄く様々な化学物質が透過しやすいと言われます。御存知の方もいらっしゃいましょうが、狭心症の発作薬としても知られているニトログリセリンは舌下で溶かすことで即座に効果を発揮することでもその意味は御理解いただけましょう。口腔底癌となれば切除部位を想像しただけで大変な困難となる事が想像出来ませんでしょうか。(泣)

口腔内は至る所が粘膜に覆われております。あらゆる場所からタバコの有害物質は吸収され、トラブルを引き起こしかねないのです。

喫煙はむし歯も誘発します。その理由・・・

喫煙はむし歯にも罹り易くさせてしまいます。喫煙者は非喫煙者と比べて約3倍も虫歯になりやすいと言われます。むし歯はナニも「甘いもの」だけで誘発される訳では無いのです。その原因としては下記の様な理由が挙げられましょうか。

1. 唾液量の減少、自浄作用・再石灰化作用の減退
喫煙は唾液量を減少させます。そうなると口の中の細菌を洗い流す自浄作用が弱くなり、必然的にむし歯の原因となる歯垢が溜まり易くなりましょう。また、唾液には有り難いことに初期虫歯を修復する再石灰化作用というのがありますが、減少に伴いその効果も期待できなくなるので総じてむし歯が生じやすくなるようです。

2. ざらつく歯面には歯垢が付着しやすい
タバコに含まれるタール(ヤニ)は歯の表面に黒くこびり付きます。当然、粒子ですから表面はザラザラとなります。その為に歯垢(プラーク)がその表面に付着しやすくなるためむし歯になりやすいのです。

3. 根面カリエスが生じやすくなる
根面カリエスとは、歯の根っこの表面にできるむし歯のことです。喫煙は歯周病の促進因子ですので歯ぐきがどんどん下がってしまい、本来なら歯ぐきに隠れていた歯の根っこが露出してきます。歯の根っこは、普通見えてる歯の表面(エナメル質に覆われている部部)と異なり抵抗性が弱いため、通常よりはるかにむし歯になりやすいのです。

4. ビタミンC欠乏が起こります
タバコを1本吸うだけで1日に必要なビタミンCがすべて破壊されるとも言われます。喫煙はお肌の大敵といわれる所以でもありましょう。御存知のようにこのビタミンCはお肌に限らず、全身の様々な組織にとって欠かせないものです。

それ以外にもある口腔内への悪影響

1. 歯周病を発症・促進させる
ニコチンや一酸化炭素の影響により口腔内にも血行不良や免疫力低下や抵抗力の減退が起こり、確実に歯周病を発症・進行させやすくします。この歯周病は初期の段階では痛みを伴わないので気が付かれにくいのですが、確実に悪化させることは我々歯科医であれば知らぬ者はおりません。喫煙は歯ぐきを硬化させ出血もしにくくし、歯周病に特有の症状の出血を隠してしまい、御本人が気付いた時には既に重症化・・・手遅れになっていることが少なくありません。また、傷の治りも悪くなり、歯周病の治療をしてもインプラント等の外科的処置をしても効果が現れにくくなったり成功率も低下を余儀なくされるようです。

歯周病はこちらのページにも纏めてありますが、歯が抜けてしまうだけではなく全身に悪影響を及ぼすことが研究により判明してきており、十分なる注意が必要でありましょう。

2. 歯が汚くなる
タバコのヤニは、御存知のように歯面に付着すると、専用の機器を使ってもなかなか完璧に取ることは難しく歯の表面がとても汚く見えてしまいます。ヤニ(タール)は有害物質を周囲に放出し続けたりもいたします。

3. 口臭がひどくなる
タバコの独特の臭いに歯周病による排膿臭が加わると、ひどい悪臭が生じます。最悪の口臭を周囲に撒き散らすことになりますが、御本人は気が付かないケースが多いようです。

4. 歯茎が黒くなる
ビタミンCが破壊され、歯ぐきにメラニン色素が沈着しやすくなりどす黒くなります。

5. 粘膜疾患や口腔癌を起こす
前述のように口腔内のあらゆる部分に有害物質が作用し、粘膜疾患や口腔癌を引き起こします。

6. 味覚異常を引き起こす
唾液減少に伴い舌の表面に舌苔(ぜったい)が付着しやすくなり、味が解りにくくなります。

喫煙環境は子供のむし歯も引き起こす?

喫煙者がいる御家庭のお子さんは、いらっしゃらない御家庭と比較して3歳までにむし歯になる可能性が倍になったという研究報告がなされたりしております。具体的には喫煙者が居るだけで1.46倍もの悪影響があり、更に目の前で遠慮なく吸われる場合には2.14倍にもなるそうです。この研究結果から読み取れるのは、受動喫煙の害でありましょうか。

受動喫煙が口腔内に悪影響を与える他の例としては、歯ぐきの着色が挙げられます。喫煙者がいる御家庭のお子さんは、御本人は子供ですから喫煙しないのにも関わらず歯ぐきにメラニン色素が沈着してきてドス黒くなってしまうのです。

日々の診療で、「歯周病を治したかったら是非 禁煙を!」とお話ししておりますが、なかなかイメージが湧きにくいようです。「ヤニを取れば良いんでしょ?」程度の方が残念ながら多いように感じます。
タバコの有害物質は知らぬ間に歯周組織を破壊し続けます。禁煙をすることで、歯や口腔内粘膜の疾患リスクを大幅に下げることができます。加えて味覚も改善され食事も美味しく感じられるようになりますでしょう。大切な御家族の健康を守ることにも繋がります。メリットは計り知れませんので頑張って禁煙に取り組んでみてはいかがでしょうか?

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